ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

ジェネシスのアナログ盤 The Lamb Lies Down On Broadway 「幻惑のブロードウェイ」

2016年07月01日 | プログレ

 すっかりジェネシス好きになってしまった私にとって、次のアルバムは心待ちだった。76年、とうとうその時が来たことを知ったのは当時NHKラジオで渋谷陽一氏がDJだった「若いこだま」?(記憶が定かではない)という番組で彼らの新譜が紹介された時だった。そのアルバムがThe Lamb Lies Down On Broadway「幻惑のブロードウェイ」であり、オンエアされた曲がThe Lamia「ラミア」だった。2枚組の大作からなぜこの曲が選ばれたのかはわからないが、結局この曲は私にとってアルバム中1、2を争う大好きな曲となるのだからその時ラジオに引き込まれたのは当然であった。そして即座にこのアルバムを手に入れたく思ったのである。その結果、音楽雑誌に広告が出ていた東京のレコード店の通販を申し込んで何とか購入したのであった。

 届いたレコードに最初に針を落とした印象は、「何だ、このノイズは?」だったことを今でも覚えている。無音部分にブーンという音が小さく入るのである。音楽が始まると目立たなくなるが、どうも全体的に鳴っているようだった。このことについては文藝別冊「ジェネシス〜幻惑のシンフォニック・ロック」中の記事で井上 肇氏が指摘している(p.172)。「残念なのは全編に渡って50HZのノイズ(低レベルではあるが)が混入していることだ…」。自分の買ったレコードだけがそうなのかとも思っていたが、やはりそれは違ったようである。しかし、そんなことも忘れさせるくらい、新作の音楽は中身が濃く、また感動的な内容であった。ジャケット内部にぎっしりと書かれた英文(当時は全く意味不明)、それまでのファンタジックな、あるいは中世的な印象とは全く違う写真構成のジャケット、イギリスではなくアメリカを連想させるブロードウェイというタイトル。従来のイメージを打ち破るニュー・アルバムだったが、次々と流れてくる楽曲はやはりジェネシスそのもので、ハードな曲から美しい曲まで全く違和感がなかった(いや、正確に言うとC面のThe Waiting Roomだけは異質だったけれど)。カセットテープにダビングして何度も聴いたものだった。

 その手元のLPはUK盤(CGS101)でマトリクスは4面全て2U。久しぶりに針を落としてみるがあの時熱中した記憶が蘇る。08年DVDの5.1ミックス盤の本作は当時のライブを再現したと思われる3面スクリーンのスライドを同時に見ることができ、この作品に新たな印象と解釈を与えてくれた。アナログ盤も良いが主人公ラエルの物語を切れ目なく体験することができるそちらのヴァージョンも気に入っている。

 なおジェネシスがBBC(かキング・ビスケット・アワー?)の番組用に本アルバムからの数曲を録音したライブ音源(Wembley Arena, London, UK, April 15 1975)がかつてNHK-FMで放送されたことがあるが、大変クォリティの高い演奏であった。ゲイブリエルの歌の表現力がさらに豊かになっていて、例えば COUNTING OUT TIME の一節 “Erogenous zones I love you” での喉の奥から叫ぶero~の歌い回しなどは最高である。また、演奏も一糸乱れない完璧さで物語を支える。SILENT SORROW IN EMPTY BOATS というアンビエント風の静かな曲もこのライブを聴いてその良さを再認識したほどだ。今のところ YouTube のこちらでオーディエンス録音だが全編を聴くことができる。

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