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湧き水豊かな噴水の街、フランス:エクサン・プロヴァンス

2011-07-30 00:28:41 | 街たち
サント・ヴィクトワール山をひかえ、貫けるような青い空と黄色の石灰岩で造られた街、エクサン・プロヴァンスの「世界ふれあい街歩き」
豊富な湧き水を利用する為に、ローマ人がお得意の土木技術を発揮して、街のいたるところ100箇所以上に噴水を造った。
生活に利用し、湧き水の水量調整を兼ねて。

街は、ヨーロッパのバブルの影響をあまり受けなかったように、25年位前のパリの街の面影を垣間見せてくれる。
道は狭く入り組んで、自動車の肩身が狭そうだ。
石畳も健在に、その不便さがかえって街の意識の高さ豊かさを示している。
近くで切り出されたという黄色の石灰岩を建材とした建物は、統一感をもたらし、この調和を乱そうとするものから街を守っているのかもしれない。

ある広場に、その場所をアトリエとして34年間も絵を描いている年配の男性がいた。
エクサン・プロヴァンスのこよなく愛し、描き続けているという。
「今では自分が風景の一部となっている。」と、語っていた。
ようやく暮らしているのかもしれないが、絵を描いて生きてこれたなどは、幸運なのか、それとも文化芸術に寛容な土地柄なのか。
きっと、どちらも兼ねているから、34年もこうして生きてこられたのだろう。
いくら、セザンヌを輩出した土地とはいってもだ。
その疑問は、”アリババの洞窟”の81歳の元気なおじいさんと、演劇同好会のキャラの濃いおばさんたちで、いくらか解消された。
”アリババ”の主は、趣味と実益を兼ねて中古の自転車を修理販売するために、倉庫に山と自転車を保管していた。
サント・ヴィクトワール山にまで、自転車で遠出もする猛者だ。
演劇同好会の熟女は、生きることを謳歌してお互いに喜びを分かち合っている。
真正面から、人生に向き合っている姿は、たくましく胸のすくものがあった。
そう、ギター職人の存在を忘れていた。
彼は、子育てのために、大きすぎて人との関係が希薄なパリから15年前に移り住んできた。
自由で明るく、人の関係が築けるこの街は、人間らしくいられるところ。
一つとして同じではないギターを作りながら、一つとして同じではない人生を歩んでいるのだった。

この街で、生きている人たちは、人生を、自分を、他人を肯定しているのだ。
なにか得体の知れないものに小突き回されて、訳も分からずにあくせく生きてはいない。
自分の歩調を持っている。
そしてそれを大切にしている。
サント・ヴィクトワール山をテラスから望むアパートに住んでいる女性は、ネコのようにテラコッタの瓦屋根の上を散歩するという。
驚いてしまう行動だが、この街の雰囲気は、それをすんなり受け入れてしまえる鷹揚さがあろう。
かたくななほど生真面目なセザンヌが、生まれて生きた街。
偏屈ともいえるセザンヌが、絵を描いて生きていけたのも、この街の懐の深さゆえなのかもしれない。


セザンヌ:サント=ヴィクトワール山

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