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りんのお散歩

一児の母になりました。
のんびり、ときに激しく語ります

盤上の敵   北村薫

2005-08-02 00:43:29 | 本♪
本を読んで、ここまで「やられた!!」と思ったことはない。
いやはや、声も出ないほど面白い。
最初は、驚愕。ちょっと考えてからは、感動。寝る前に思い出して、ため息。
こう来るとはねーー、まさに北村マジック。
裏切られたことがこんなに心地よいなんて、、、。もう、最後の最後まで、油断できません!!

でも、実は、始めは読むのに抵抗もありました。だって、但し書きがあるんだよ!!冒頭に。

「今、物語によって慰めを得たり、
安らかな心を得たいという方には
このお話は不向きです」

って!!

これ読んだらさすがに身構えるよね・・・。

でも、私は、ちゃんと安らぎも得られたよ。妻を壊れ物のように、大事に大事にする、そんな夫の表現は他のどんな小説より感じたし、何より、この話を「重くて辛くて悲しくて・・・」と表現した北村薫そのひとをの暖かさがなんか、感じられた。
やさしい人なんだろうな。

文章構成も好き。
もう、本当に文を書くのが好きで好きでたまらないんだろうなあって思う。
そして、その文章の中に立ったりんは、1度たりとも中だるみしなかったんだよ!!!(りんにとってこれは珍しいことなんです)

いやーーーしかし。。
物の見事にやられてしまったよ。
ただのパーツだったものが、ある瞬間、命を与えられてひとつの生き物になるって感じ。
めちゃくちゃお勧めです!!!

夜の果てまで   盛田隆二

2005-08-01 23:59:47 | 本♪
読んで思い出したよ。私って、こういう本苦手なんだった(;^_^A
浮気とか、不倫の類。
モラルだとか、そういうことでいっているんじゃなくて、単純に「不倫や浮気を扱った本」が苦手。
なんかさあ、、、綺麗過ぎて寒くなってしまうよ。。。
文章とか、異様に綺麗で、小道具なんかも小洒落てて、あーー寒い寒い!!ってな感じになる。そういう意味では、先日読んだ辻仁成の「目下の恋人」なんか、まさに!!って感じ。短編なんだけど、どれをとっても無感動。人間臭さがなくて、面白くない。
「昔はバリバリのキャリアウーマン、
今は家庭に入り毎日刺激がない、真矢みき。
冴えない学生で、そのくせ同級生の女子には
興味がないとか言っちゃってる鳥羽潤。」
みたいのが私の中の不倫小説イメージ。
そしてみきの旦那は高級取りで、
重要アイテムはカクテルとバスローブ。みたいな。

そんなかんじのりんですが、「夜の果てまで」は、良かったです。
不倫小説なんだけど、この本の中の人々はちゃんと人間なんです。だから、私もちゃんと入り込めました。
俊介は、元カノと別れてちゃんと落ち込める奴だし、祐里子は、辛くてもそれを感じさせないような女性。
でことぼこが当てはまるように、自然にくっついたって感じ。
そして(これが重要)、2人だけの世界で完結していない。
ありがちな不倫物は、終始2人の自己満だけど、この本は、回りの人間もしっかり描かれてるんだあ。お互いの両親や、正太の存在なんて、拍手喝采!!!

「一瞬が永遠になるのが恋
永遠が一瞬になるのが愛」
これは、「目下の恋人」の中の一文ですが
こんな言葉使わなくたって、美しい文は書けるんだぃって言ってやりたい!!



魍魎の匣   京極夏彦

2005-07-29 01:08:47 | 本♪
いつも本に囲まれ、来客があってもニコリともせず
自分の気に入る話題にしか興味を持たない
偏屈で理屈屋で気難しい無表情な石地蔵。
これが京極堂である。

その京極堂が今回・・・
ちょっとちょっとハイテンションじゃないのーーー!!
何これってくらい、勢いに乗ってノリノリ、調子づいてます!!

電車など公共の場で読んでいたので、爆笑を必死に耐えていたりん。
傍目にはにやりとわらう不気味な女にみえたでしょう。
しかし心の中では、涙ちょちょ切れ大爆笑!!!
こっちまでテンション上がってきちゃう。

そのシーンとは・・・
お決まりの、京極堂さん出番です!!なシーン。
うひゃひゃひゃ。このシーンのためだけにも、一読の価値アリです。


さて、シリーズも2作目になり、今回もとても楽しく読ませて貰ったりんですが、
りん、榎木津好きです。
「えーー今回の影の主役は木場ちゃんじゃん!!」
と思われる方も多数いるかもしれませんが、私にとっては今回の木場は「ドンマイ!!」と声をかけたい人NO1でしか・・・(;^_^A アセアセ・・・
・・・で、榎木津ですが、私はどうやら榎さんのような『無条件に3段抜かし』って人が好きらしい。特集な能力も手伝って、榎さん、絶好調です!!今回にいたっては、4段抜かし位してたんじゃないかな。2回も人命救助しちゃうしね☆


しかしこの本・・・
分厚すぎじゃーーー!!
題名に偽りなしというか何と言うか・・・この本自体箱なのでしょうか、という程・・・
とにかく分厚い1060P。そして主人公である京極堂登場まで258P。さ・・・さくっと行こうよ・・・汗
まあ、話簡略化されてたら京極堂の語りなんて、私には1mmも理解できないんだろうけど。。。


所で今日は、りんの住んでいるところのお祭りでした。
こういう時用いられる、独特のリズムや言葉、ありますよね。
私には、それらの意味がさっぱり分からなくて、「アーーーーーうーーーあーーー」みたいにしか聞こえないんだけど、(ひどい例え)こういう呪文?祝詞みたいなものも、京極堂なら一発で理解できちゃうんだろうな。
うちのお祭り、弱小な割に歴史とか伝統とか、それなりにちゃんとあるみたいだからいつか、京極堂がふらりと立ち寄ったり・・・
するわけ無いけど、してほしいなーなんてまさに妄想していました。


この作品を、読み終えた今、実は少しだけ京極堂節に疲れモードなので
3作目はまだ手をつけないで置こうかなって思ってるけど、でもかなりお勧めのこの本、又絶対に京極ワールドに舞い戻ってきます!!

・・・っていうのもなんだか近い将来になりそうだなあ・・・。

姑獲鳥の夏   京極夏彦

2005-07-23 22:32:33 | 本♪
中学時代、友達がはまりにはまっていた京極堂シリーズ。
妖怪物だと聞いて敬遠してましたが、最近本屋さんで見かけたら、無性に見たくなってしまい、買ってしまったよーーー。
結構ぶあつい本だったから、気合入れて読むぞ!!・・とおもっていたんだけど、これがもうするする読める読める!!
この本、面白いです!!

記憶とは、幽霊とは、現実と夢の境目とは。そんな、だれもが不思議に思いながらもその答えを導き出せない事柄がテーマです。
そして、その問いかけに対して、整然と答えを述べていく京極堂。
「この世には、不思議なことなど何もないのだよ、関口くん。」
かなり素敵です!!!

京極堂の語る内容は、「ほんとにそうなのお?」って思うような、でも納得しちゃうような説得力がある。かれらにとってはその世界観が当たり前って言う感じ。
だから、本を読んでいるというより、映画を観ているような気分になる。
あとキャラクターもすごく魅力があります。
京極堂は言うまでもないですが、私は探偵の榎木津も結構好き。
人には見えない物を見ておきながら、
「え??見えないの?見えないとは言わせないぞ」という彼。なんかマイペースなんだよね。
京極堂の妹、中禅寺敦子も快活な感じで好きだなあーー。

なんだか、妖怪物というよりは脳、意識、精神など、それらからくる不思議物語だったのだけれど、クライマックスである憑き物を落とすシーンは桔梗清明の提灯、黒の着流しに黒の羽織、黒足袋に黒下駄という、いかにも、な格好で登場してくれた京極堂に拍手!!
しかも印を結んで祝詞のような呪文まで唱えて陰陽師の魅力バッチリ☆

なんだかとってもおいしーーーい本なのです。

疾走(上下)   重松清

2005-07-19 23:14:37 | 本♪
1人である、ということは、こんなに強く切なく悲しいものだったんだ。
シュウジは1人だった。正確には、1人になった。

孤独と、孤立と、孤高。「孤高」だったのはエリだ。エリは強い「1人」だった。揺れるポニーテールは、いつも掴めないところにあった。
 
シュウジは、孤独だった。全ての光を失って、なお人を求めた。
「だれか一緒に生きてください」の、メッセージが、今はただ悲しい。


1人のエリと1人のシュウジが一緒にいたから、1人のエリと1人のシュウジは離れていても、1人のエリと1人のシュウジとして、ずっと、一緒にいられるんだと思う。
エリとシュウジは、一緒に帰ることにした。帰る場所はひとつしかなかったから、一緒に、手を繋いで帰った。エリは、もう孤高ではなく、シュウジはもう、孤独ではない。だけど、エリとシュウジは「2人」にはならなかった。一緒に、手を繋いで、1人と1人で、帰った。シュウジが求めた、「2つの1人」に、シュウジは、なれた。


シュウジの過酷な運命に、目を覆いたくなることが何度かあったけど、それでも読み続けられたのは、シュウジが自分の目線で語った物語ではなかったから。シュウジを「おまえ」と呼ぶ語り部は、シュウジを救うためではなく、幸せに包み込みたいわけでもなく、物語を導きもせず、誘いもしなかった。だからこそ、語り部が始めて感情を込めてシュウジに、隠さなくても良い・強がらなくて良いといったとき、私は視界が急に開けるような感覚に襲われた。タダ見つめながら語る、それは一見冷たいことだけど、1人じゃないって安堵感が、シュウジの物語を見つめる私の中にも生まれていた。

とにかくラストは泣いた。
悲しいでも切ないでもなくて、どうしてか、涙が止まらなくなって、今ならなんとなく、シュウジやエリの気持ちが分かるような気がした。

電車男

2005-07-13 19:18:41 | 本♪
電車男・・・映画化する前から、本屋さんでお勧め欄にあったのでその存在は知っていました。
パラパラと開いてみたら、もうほんとにネットの書き込みがそのまま乗っている感じで、
「・・・」と思いました。
で、長いこと関心は無かったけど、
あるとき友人に「かなり良いよ!!!」といわれ、
よし見てみるか、ということで読みましたよ電車男。
以下感想↓

素晴らしく良かった。
勧めてくれた友人のように、感動したり泣いたりは出来なかったけど、
すごく良かったよ!!!
電車男は優しいし、エルメスをとても大事にしている。
エルメスは丁寧な話しかたをしていて、すごく女の人だった。
電車男の天然なところとか、
エルメスの女性らしいところに萌え(電車風(笑))
もっとみんな、こんな2人みたいな恋をして欲しいなって思った。
なんていうか、素直なんだよね。
まわりのみんなが、応援したくなる気持ちが良く分かった。
ネットの住人のみんなが、電車男を見守る姿も、
ネットでこんな事ありえるんだなって感動した。
毎晩のように徹夜して電車男を待ってたり、
自分の率直な意見をアドバイスしたり・・・。

エルメスのたくさんの名言が誕生しましたが、
なんといっても一番の名言は、
仲間の一言
「もちつけ、匂いは錯覚だ」
でしょう笑





龍は眠る

2005-07-07 21:58:09 | 本♪
超能力を持って生きるということは
果たして幸せなことなのだろうか。

この言葉に始まり、この言葉で終わる、
そんな話だった。

私はというと、今まで
超能力を持っている人を
便利だろうなとか、羨ましいなとか
そんな風にしか感じていなかった。
この本は、そんな甘えた考え方をしている私にとって
びっくりするほどショックを与えた。

七恵。
しぐさとか空気全体がすごく可愛い人なんだろうな。
直也を好きで、心配で、でもやっぱり怖くて。
そして、正直な人。
直也に、大切に大切にされた唯一の人物。
でも実は、七恵はとても強い心の持ち主だったから、
実は、直也のほうが彼女に守られていたのかもしれない。
・・・しかし私も、七恵のように直也に守られてみたいぞ!!

噂の直也君(笑)
高坂さん(主人公)が、最後の方、直也の辛さを理解していくところ、
なんかすごく嬉しかった。
ずっと高坂さんを拒みながら、
ここぞというときに手を貸してしまう、それって、
人として、色々のものが見えてしまう人として
当然のことなのかもしれないけど
直也にはそんな優しさがあったから
彼はこんなにも苦しんだんだと思う。
もし、今直也が生きていて
私が彼と同じ超能力者だったら
彼に言ってあげたい事がたくさんある。
でも、彼はこの世にもういないし
私は超能力者じゃないから
きっと何も言えず、声が届く日もこないんだなと思うと
すごくすごくやりきれなくなった。

慎二。
直也に比べれば力は小さいけど
能力者が抱える苦しみは彼にも存在している。
怪我をしたとき、直也と双子みたいに痛みをともにした慎二。
彼の中には今も、直也が住んでいるんだと思う。
慎二はこれからも、
ずっと守られながら、大切にされながら生きていくんだろう。
私ももっと慎二を見守ってられたらいいのに、と思う。

もう、私自身、本の中に入ってしまいたいくらいにいとおしい作品だった。
よく考えたら逆だけど、サトラレを思い出した。
見えてしまうのも、見られてしまうのも
想像以上に苦しくて、辛くて、痛いんだろうなと思った。
この本に出合えて、こんな気持ちを持てて
本当に本当に嬉しい。

この余韻を味わいたくて、本を読むんだと思った。