広島電鉄は、三菱電機の駅情報アプリ「ekinote(エキノート)」への参画を決めた。駅周辺や沿線の魅力を全国に発信する。
独自のアプリ開発は資金面などで難しく、全国発信へのハードルも高い。10万ダウンロードを達成した同アプリを利用するのが得策と判断した。アプリ利用者のデータも把握し、今後のイベントやキャンペーンの参考にする。
エキノートは2022年3月にリリースした三菱電機の駅情報アプリ。スマートフォンから無料で利用できる。
日本全国約9100の全鉄道駅と周辺の街の魅力を記事にして発信している。旅行や出張の際、駅を起点に必要な情報を集められるように、交通やグルメ、観光情報などをひとまとめにしている。複数のアプリを使わずに済む便利さが特徴だ。
食や観光に関するメディアと提携して記事を充実させているほか、利用者による口コミの投稿もある。最寄りや普段使う駅の登録も可能で、リリースから2年ほどで10万ダウンロードを達成した。
広島電鉄はアプリのリリース時から実証実験として提携を始めた。同社は当初、時刻表や観光情報をひとまとめにした「広電アプリ」のような独自アプリの作成を目指していた。
ただ、新乗車券システム「MOBIRY DAYS(モビリーデイズ)」の開発などもあり資金面でハードルが高く、アプリ開発の経験も不足していた。
独自アプリは普段利用する乗客の利用が中心と見込まれ、観光や出張のため全国から集まる利用客への発信は難しい。
同様の理由から地方の私鉄で独自アプリを持つ企業は少なく、大手私鉄のアプリも乗り換え案内などに機能を限定しているのが現状だ。広電は全国発信するためにエキノートに目を付けた。
全78駅のエキノート上の紹介文や記事、画像などを自ら監修し、広電自ら各駅の記事を投稿している。駅周辺のイベントや特別にデザインした車両「花電車」の情報を発信。
アプリ利用者による投稿で、広電のイベントへの感想も把握できた。エキノートの今後の利用者拡大も見込み、同アプリを利用した発信と利用者の動向調査を継続することにした。
三菱電機はエキノートを各地の企業や団体による情報発信プラットフォームに育てたい考えだ。広電のような提携先は鉄道会社や観光協会など全国に約40社ある。企業などによる情報発信は無料とし、利用実態などの統計データの販売などを検討している。
同社はアプリ単体で利益を出すよりも家電以外での消費者との接点作りを狙っている。今後3年内に100万ダウンロードを目指しており、IT(情報技術)や人工知能(AI)で都市機能や住民サービスを高度化する「スマートシティ」社会での事業基盤と位置付けている。
(阿部晃太朗)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます