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ジャパン・ハンドラーズ UCバークレー校-5 通産官僚たちの群像

2023-09-16 20:24:06 | ジャパン・ハンドラーズ

ジョンソンが『通産省と日本の奇跡』で取材対象にした通産官僚の一人が城山三郎(しろやまさぶろう)の経済小説『官僚たちの夏』(新潮社)に出ている通産官僚のモデルとなった「怪人・サッチャン」こと佐橋滋(さはししげる)通産j官です。

佐橋は、特振法(特定産業振興臨時措置法)を発案した人物とされていますが、これは60年代のアメリカおよび外国からの日本の資本市場の自由化問題が日系にありました。

日本が外国に門戸を開くにあたり、佐橋は外資に対して日本の国内メーカーが過当競争を行って「共倒れ」にならないように、通産省の指導のもと「官民協調」で日本産業の国際競争力を高めようと考えました。


しかし佐橋が発案した特振法案には既存産業への新規参入抑制という政策も伴ったため、後発メーカーの怒りを買いました。

例えば、二輪車のホンダなどは、自動車産業への参入を阻止されるのではないかという危機感から、この法案に激しく抵抗しました。結局、この特振法は審議もされないまま廃案になりました。 



日本企業の合併を、行政指導によって行わせるなど、通産省の強引な産業再編政策は反発を浴びましたが、八幡・富士製鉄を合併させ、新日鐵を誕生させることで鉄鋼産業を活性化させるなどの効果も生みました。

特振法はなくなりましたが、通産省の産業政策は、1970年代も「行政指導」という形で残ることになります。 この行政指導という言葉を世界に初めて紹介したのが、チャルマーズ・ジョンソン(日本政策研究所所長)です。

そして、佐橋の次の世代、70年代の代表的な通産官僚が天谷直弘(あまやなおひろ)です。 70年代の通産省の産業政策には、まず石油ショックへの対応がありました。

新産業である「知識集約型産業」(今でいうIT産業)へ日本の重点産業を転換させる点にも主眼がおかれました。

この頃はちょうど、ダニエル・ベルの『脱工業化社会の到来』(1975年)が日本でも紹介された時期に当たります。



天谷や、両角良彦(もろずみよしひこ)をはじめとする通産官僚たちは「国際派」(資源派)と呼ばれました。

これらの系列の人たちは、80年代後半にも半導体協定んどで対日交渉に関わっており、彼ら「国際派」の中には「国売り物語」などと批判されている人もいます。

ジョンソンの研究は1975年までを対象にしているので、それ以降のことは触れられていません。 英文のサブタイトルにあるように、ジョンソンが研究対象にしているのは、あくまで1925年から1975年までの半世紀です。

 

このジョンソンの著作に対して、批判も投げかけられています。 日本の「資本主義」における官僚機構の重要性について言及した内容は、事実を誇張して捉えているのではないかというものです。

そもそも通産省が手を掛けた産業はむしろ育っていないというものまで、その内容はさまざまです。 これら批判の代表格が、東大経済学部の三輪芳郎(みわよしろう)教授とJ・マーク・ラムザイヤー、ハーバード・ロースクール教授(日本法)であります。

彼らは2002年に出版された『産業政策の誤解』(東洋経済新報社)において「産業政策など存在しなかった」とまで言い切ります。

彼らの主張は「合理的選択論」に立脚するものであり、ジョンソンとは全く問題意識が違うので、一概にどちらが正しいとは判断しがたいものがあります。

 

ジョンソンの通産省研究は、レスター・サローなどのいわゆる「ネオ・リベラル派」や、ローラ・アンドレア・タイソンCEA(大統領経済諮問委員会)委員長(クリントン政権の前期)のような知識人たちが「効率的な産業政策」について研究するきっかけとなっています。

実際,1980年代後半から90年代前半までは、アメリカの対日研究は、この産業政策研究がメインでした。

ジョンソンなどの「日本経済研究本」は、アメリカによる通産省攻撃の「のろし」となりました。

 

 

 

(参考資料)

ジャパン・ハンドラーズ カリフォルニア大学バークレー校 ー1
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/8ba198b8747581d85ab8a411d4675545

ジャパン・ハンドラーズ カリフォルニア大学バークレー校ー2 通産省研究https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/f87dc7ec794ff3ab63663fbc6c4797ea

ジャパン・ハンドラーズ UCバークレー校-3 通産省は日本のシンクタンクhttps://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/f0b2c113c2497f75b5c8c13cc14d83b7

ジャパン・ハンドラーズ UCバークレー校-4 傾斜生産方式とはhttps://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/599a3d9a1f7bbca4005c0a875f8d719b

 

 

 

 



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