次世代電池を搭載したバスは従来車の10分の1の10分程度で急速充電できる
(19日、ブラジル東部アラシャ)
【アラシャ(ブラジル東部)=水口二季】
東芝と双日は19日、次世代リチウムイオン電池を搭載する電気自動車(EV)バスの試作車をブラジルで初公開した。
開発にはブラジルの鉱山会社も参画しており、従来車両の10分の1という10分程度でフル充電が可能という急速充電機能が特徴だ。
独フォルクスワーゲン(VW)傘下で、中南米でEVバスを展開するフォルクスワーゲン(VW)トラック&バスが製作した。
フル充電の所要時間10分は同社の既存バスなどに比べて10分の1程度だが、航続距離は60キロメートル程度にとどまる。繰り返し充電は1万回程度可能で、当面は一定の条件下の短距離路線での導入を目指す。
会場ではEVバスの充電が実演され、8分30秒程度で充電が完了すると会場には拍手が沸いた。
充電設備を複数用意したり、電池を頻繁に交換したりする必要がなくなり、定期路線を運行する商用バスなどでコスト削減が期待できる。
リチウムイオン電池の開発には、ブラジルの鉱山会社カンパニア・ブラジレイラ・メタルジア・イ・ミネラソン(CBMM)社も参画した。
18年に東芝とCBMM、双日の3社で共同開発契約を締結し、21年には商用化に向けて協業の範囲を広げていた。双日はCBMMの株主で、日本市場向けニオブ販売の代理店でもある。
電池の負極にはレアメタルの「ニオブチタン酸化物」と呼ぶ材料を使う。
ニオブは主に鋼材の原料に利用されてきたが、双日ブラジルの志田亨社長は「CBMMは2030年頃には全体の3割を電池向けに振り向ける計画を持つ。
世界需要を上回る豊富な生産量を持ち、東芝にも安定的な供給が見込める」と期待を述べた。
世界ではニオブを使った電池開発を目指すスタートアップも増えている。乗用車向けのEVバッテリーでは中国勢のシェアが高いが、東芝は25年春にニオブを搭載した次世代電池の商品化を目指している。
東芝や双日、CBMMなどが共同で開発した(19日、ブラジル東部アラシャ)
東芝電池事業部の高岡聡彦執行役員は「運用をふまえるとトータルでコスト削減が見込める。
まずは東南アジアや欧州を中心に、商用車で需要が期待できる」とした。将来は高い稼働率が求められる建設機械など重機でも需要があるとみている。
アジアなどでの量産を検討しており、双日の拠点網を生かして販路を開拓する。
世界では中国を筆頭に、資源の囲い込みが過熱している。ブラジルは重要鉱物の一大産出国で、安定したサプライチェーン(供給網)や経済安全保障の観点からも日本勢の事業展開に欠かせない。
5月には岸田文雄首相がブラジルを訪問し、重要鉱物の供給網構築に向けた覚書などを交わしている。
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日経記事2024.06.20より引用