TSMICは旧型装置で7ナノ半導体を製造したとみられる(上海市)
北京=多部田俊輔】
中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の新型スマートフォンの半導体製造に、オランダの半導体製造装置大手ASMLの旧型装置が使われていることが分かった。
米国が主導する対中輸出規制の包囲網を突破した格好で、規制強化の動きが加速する可能性がある。
米ブルームバーグ通信が25日に伝えた。複数の関係者によると半導体の製造に使われたのは、従来主流だった「深紫外線(DUV)」露光装置などとみられる。
米国が主導する対中輸出の規制対象となり最先端半導体の量産に必要な「極端紫外線(EUV)」露光装置ではないようだ。
ファーウェイが8月に発売したスマホの新機種「Mate60Pro」は同社が自社で設計・開発した半導体「キリン9000s」を載せ、高速通信規格「5G」に相当する通信性能があるとされる。
カナダの調査会社テックインサイツは「キリン9000s」について、中国の半導体受託生産最大手である中芯国際集成電路製造(SMIC)が生産したと分析する。回路線幅は7ナノ(ナノは10億分の1)メートルとみられる。
SMICは7ナノ品の製造にASML製のDUVの露光装置などを使ったとみられる。EUVの装置より旧式で、SMICは14〜28ナノ品の製造に使っていたとされる。
関係者によるとDUVでも露光工程を重ねることなどで7ナノ品に対応できるとされる。SMICはこの手法でファーウェイに半導体を供給しているとの見方が多い。
ただSMICが7ナノ品を増産したり、回路をさらに微細化したりするための道のりは険しい。DUVの装置で7ナノ品を製造すると歩留まりは低くなり、生産量を大幅に増やせないとされるためだ。足元で歩留まりは改善しているが、50%以下とみられる。
オランダ政府は9月から輸出規制の対象にDUV装置を加えており、SMICは生産能力の維持や能力増強は簡単ではない。保守や消耗品の補充が難しくなるためだ。米国人などの半導体技術者も中国を離れていることがSMICの開発に響くとの指摘もある。
米政府は10月17日、1年前に導入した先端半導体の対中輸出規制を改定すると明らかにした。
人工知能(AI)に使う先端半導体の輸出をより厳しく制限するとされるが、ファーウェイが高性能スマホを発売したことで米連邦議会は追加規制を求める公算が大きい。
中国も対抗する。中国政府内では3000億元(約6兆円)規模の半導体ファンドの構想も浮上しており、半導体メーカーだけでなく、製造装置や材料分野を含めた中国独自のサプライチェーン(供給網)の構築を急ぐ。
半導体企業も業績が悪化する中でも研究開発投資を増やす。