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我々と別の宇宙は本当にある 物理学の最新理論  宇宙論研究者の野村泰紀教授に聞く

2024-07-07 10:13:33 | 科学技術・宇宙・量子・物理化学・生命・医学・生物学・脳科学・意識

日経サイエンス

私たちが見ているこの宇宙以外にも無数の宇宙が存在し、今も次々と生まれている。宇宙は単一のユニバースではなく、多数の宇宙が存在する「マルチバース」だ──。

一見SFのようだが、多くの理論物理学者たちが真剣に考え、研究している理論だ。最近マルチバースについての新たな見方を提唱した米カリフォルニア大学バークレー校の野村泰紀教授に、この理論について聞いた。

 


野村泰紀米カリフォルニア大学バークレー校教授。同大バークレー
理論物理学センター長,
東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員を兼任する。
専門は宇宙論,素粒子論。

 

 

──マルチバースの理論はどのようにして出てきたのですか。

「最大のきっかけは宇宙の真空エネルギーの問題だ。真空エネルギーというのは宇宙が最も安定したときのエネルギーで、宇宙の性質を決める重要な値だが、宇宙観測によって計測した値が理論からの予測値より120桁以上も小さかった。

あまりに小さいので、物理学者たちは恐らく本当はゼロなのだろうと思って、それを実現する仕組みを懸命に探したが、見つからなかった」

 

「1987年にノーベル賞受賞者のワインバーグが、まったく異なる解決策を提唱した。まず、真空エネルギーがもし今より数桁大きければ宇宙には星も銀河も生まれず、空っぽだったことを計算で示した。

さらに、真空エネルギーが異なる宇宙が膨大にあるとの説を唱えた。膨大な数の宇宙があれば、中には真空エネルギーが理論値より120桁小さい宇宙もあるだろう。

そして宇宙を観測し真空エネルギーを突き止める人間が存在し得るのは、そんな宇宙だけなのだ。これを『人間原理』と呼び、この宇宙の真空エネルギーが極めて小さい理由を説明できる」

 

 

──人間原理以外にマルチバースを示唆するものはありますか。

「いくつかある。重力理論と量子力学の統合を目指す超弦理論の方程式を解くと、10の500乗個ともいわれる大量の解が出てくる。

これは実現しうる宇宙の種類が山ほどあって一つに決められないことを意味しており、当初は超弦理論の欠点だと思われていたが、最近、マルチバースとうまく整合するとの見方が出てきた」

 

「また、異なる宇宙がどのように生まれるかは、インフレーションの理論によって示されている。インフレーションとはこの宇宙の誕生直後に起きた加速膨張のことだけをいうのではなく、この宇宙を含む空間全体で起きており、今も続いている。

加速膨張する宇宙が別の宇宙に相転移すると、沸騰する湯の中に気泡が生じるように、もとの宇宙の中に新たな宇宙の泡ができる。これは量子力学による確率的なプロセスなので、宇宙どうしが量子的な『重ね合わせ』になる」

 

 

──宇宙がたくさんあるというのは想像しにくいですが。

「近年の研究の発展で、マルチバースがどんなものか具体的に明らかになりつつある。人間はこれまで、科学を通じて自分が思っていたより小さい存在であることを学んできた。

唯一の大地だと思っていたものが太陽系にいくつもある惑星の一つの表面だと知り、その太陽系も銀河にたくさんある惑星系の一つだと知り、その銀河も宇宙にたくさんある銀河の一つだと知った。マルチバースはとっぴな考えだと思う人もいるが、むしろ宇宙だけは現在我々が観測しているものしかないと思うほうが革命的な考えだ」

 

 

(詳細は25日発売の日経サイエンス2017年9月号に掲載)

日経サイエンス2017年9月号

著者 :
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,440円 (税込み)

 
 
 
 
日経記事2017年7月29日より引用
 
 

 



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