生活保護を受ける人の過半が65歳以上の高齢者となっている。日本社会の高齢化が進み、低年金の独居老人が増えたことが背景にある。
年金支給額を底上げする改革の先送りが続けば、全額を公費でまかなう生活保護にセーフティーネットを頼る状況が深刻になる。
生活保護は収入が地域ごとの最低基準を下回る人に、日常生活費や家賃、医療費などを支給する制度だ。
受給するには自動車などの資産を原則、処分しなければならないなどの制約を受ける。
日本経済の停滞が長引いたことで受給者数は増加傾向にあり、2000年度の103万人から23年度には速報値で199万人に膨らんだ。
厚生労働省によると、00年度に37%だった受給者に占める65歳以上の割合は23年度には53%と半数を超えた。
人口全体に占める生活保護受給者の割合(保護率)を世代別にみると、65歳以上は22年度に2.9%と00年度から1.2ポイント上がった。
20〜64歳の現役世代は08年のリーマン・ショック後に一時上がったものの、その後はほぼ横ばいで推移している。
生活保護を受ける高齢者が増えた要因の一つは年金額が少ないことだ。
23年度に65歳以上の生活保護受給者で年金を受け取っていたのは速報値で72%。このうち年金が月額4万円未満の人が約5割を占めた。
23年の高齢無職世帯の平均支出は夫婦で月28.2万円、単身では月15.8万円。総務省によると、23年の高齢無職世帯(65歳以上、夫婦のみ)の家計収支は月平均でおよそ3.8万円の赤字だった。
特に独り暮らしの場合は家計が厳しくなりやすい。家賃や光熱費など世帯単位でかかるコストの1人あたりの負担が大きくなるためだ。
生活保護を受けた高齢者のうち、単身者が占める割合は22年度に80%に上った。65歳以上人口の全体に占める単身者が2割ほどにとどまることを考えると生活保護受給者の独居率の高さが目立つ。
低年金が原因で生活保護に陥る人は今後も増えていく恐れがある。24年度の基礎年金(国民年金)は満額でも月6.8万円で、少子高齢化の影響により支給水準は当面、目減りしていくためだ。
保険料が財源の一部となる年金に比べ、全額を公費に頼る生活保護は財政への負担が大きい。国と地方の生活保護費は近年3.5兆円前後で推移している。
政府が今国会への提出をめざす年金制度改革法案の柱の一つは、低年金問題への対策だ。厚生年金の財源を活用して基礎年金を底上げする施策や、厚生年金に加入するパートタイマーの対象を広げる改革などを盛り込んだ。いずれも中長期的な低年金対策になり得る。
一方で、自民党内には法案提出に慎重論がある。会社員らが加入する厚生年金の財源を、自営業者なども入る基礎年金に回すのは世論の理解を得にくいなどの理由からだ。
与党は衆院で過半数の議席を持っておらず、法案の可決には野党の協力も必要になる。
河野太郎氏は1月の自民党年金委員会で「この法案は通らない。それで参院選に負けてしまっては何の意味があるのか」と述べた。
森山裕幹事長らは国会に出すべきだとの立場で、最終的に石破茂首相が提出に向けた調整を指示したものの、与党内の手続きが遅れる要因となった。
野党の賛成を取り付けて成立させる見通しは立っていない。法案に盛り込んだ改革が実現したとしても、低年金の問題は改善こそすれ解消にはなお遠い。
生活保護制度に詳しい立命館大の桜井啓太准教授は「低年金者に対する所得の最低保障や住宅手当の創設など高齢期の生活保障を抜本的に考え直す必要がある」と指摘する。
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この問題がまさに、参院選を前に自民党が国会提出を躊躇する年金改革法案の背景です。
今後、低年金を理由とした生活保護受給者はさらに拡大すると見込まれます。
就職氷河期世代があと10年で年金受給年齢に差し掛かるからです。
この世代は求職期間が長引き、就職しても非正規労働の方々も多く、保険料納付期間の点から低年金に陥る方々が続出すると思われます。
基礎年金の拡充は、高齢者の貧困問題の深刻化や、格差のさらなる拡大を防ぐうえで逃げてはいけない課題です。
野党が現役世代向け負担減で攻勢をかける中、財源を語るのはセンシティブです。でもこの問題を「現役世代 vs. 高齢者」の対立問題として煽らないようにしたいものです。
2023年度の生活保護受給者数(約199万人・速報値)のうち53%の高齢者は約105万人です。
1996年では、約1900万人の高齢者のうち、1.5%の約29万人しか生活保護を受給しておらず、同年以降との比較では、貧困高齢者は毎年平均2.8万人の勢いで増え、27年間で約76万人も増加したことを意味しますね。
高齢者の貧困化が進んでいる背景には、低年金・無年金が関係していることは明らかですが、以下のコラムのとおり、50歳代の約5割が年金未納であり、今後も増加する可能性が高い(例:高リスクのケースでは100人の高齢者のうち6人が生活保護)と思いますhttps://cigs.canon/article/20180824_5213.html
日経記事2025.3.23より引用
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・お馬鹿政治家の、積極財政と政府の産業への介入で世界の後進国に成り下がった日本
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/926949b39f540862de674e7641f902d2
・ネオコンと新自由主義、そしてシカゴ学派 RJ人気記事
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/fc4a07c265d5a4f83907851bb963d497