ウクライナ軍による攻撃で倒壊した家屋(ロシア西部クルスク州スジャ、6日)=AP
ウクライナ軍が国境を接するロシア西部クルスク州への本格的な越境攻撃に着手した。
ロシアのゲラシモフ参謀総長は7日、ウクライナ軍の兵士約1000人が攻撃に参加し、ロシア軍が前進を阻んでいると報告した。
今回の越境攻撃は2022年2月のロシアによるウクライナ侵略開始以降、最大規模とみられる。
プーチン大統領は7日に軍幹部や関係閣僚を招集し「ウクライナが大規模な挑発に乗り出し、市民を無差別に攻撃している」と批判した。マントゥロフ第1副首相らに対し、地元住民の支援を急ぐよう指示した。
ロシアメディアによると、ロシア側の市民5人が死亡し、31人が負傷した。クルスク州には7日から非常事態が宣言され、同州の知事代行は住民数千人がすでに退避したと公表した。
米シンクタンク、戦争研究所によると、ウクライナ軍は6日朝から開始した越境攻撃により、最大で10キロメートル前進した。
クルスク州内の45平方キロメートルの領土を掌握し、ダリノなど11の集落を制圧した可能性があると分析した。
一方、ロシア国防省は8日、同軍とロシア連邦保安局(FSB)がウクライナ軍の前進を止めたと公表した。ウクライナ側は戦車8両を失うなどの被害を出していると主張した。
ウクライナ軍は高速道路に沿って北西、南東方面に前進し、ロシア軍と激しい戦闘になっているもよう。激戦地の一つと見られるスジャにはロシアがウクライナ経由で欧州に天然ガスを輸出するパイプラインの中継拠点があり、ロシアメディアによるとウクライナ側はこの施設を制圧した。
ロシア政府系ガスプロムはスジャ経由の天然ガス輸送に支障は出ていないと明らかにしたが、欧州向けガス供給に影響が出る可能性がある。欧州市場では7日、指標のガス価格が一時5%超上昇した。
ロシアはウクライナ北東部にある国内第2の都市ハリコフの制圧に向け攻撃を強め、東部ドネツク州でも前進を続けてきた。米議会が4月下旬、ウクライナへの支援関連法を可決して軍事援助を再開したことを受け、ロシア軍の進軍ペースは鈍っている。
このタイミングでの越境攻撃には、ロシア軍の攻勢が続くドネツク州から兵力を分散させる狙いがあるとの見方が多い。
ウクライナの軍事アナリスト、ミハイロ・ジロホフ氏はウクライナメディアに対し、今回の攻撃の影響で、ロシア軍がドネツク州の一部部隊を再配置していると指摘した。
ウクライナ国防省のブダノフ情報総局長は7日、東部におけるロシアの本格的な攻撃は約2カ月で終わるとし、「ウクライナ軍はもっとも効果のあがる前線の地点から反攻を続けていく」と述べた。
【関連記事】
![ウクライナ侵略](https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Farticle-image-ix.nikkei.com%2Fhttps%253A%252F%252Fimgix-proxy.n8s.jp%252Ftopic%252Fog%252F22012404-122.jpg%3Fixlib%3Djs-2.3.2%26auto%3Dformat%252Ccompress%26fit%3Dmax%26ch%3DWidth%252CDPR%26s%3Df34ea29d62950e8a44bbe5c9f6d6468c?ixlib=js-3.8.0&w=380&h=237&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&crop=faces%252Cedges&s=24ca09eaa7b82b54d4e1cfd0bf612739)
2022年2月、ロシアがウクライナに侵略しました。戦況や世界各国の動きなど、関連する最新ニュースと解説をまとめました。