ティッセン・クルップは艦艇子会社の売却を検討している=ロイター
【フランクフルト=林英樹】
ドイツ鉄鋼・機械大手のティッセン・クルップは19日、潜水艦や軍艦を製造する艦艇子会社の売却に向け、米投資ファンド、カーライル・グループと交渉を始めたと発表した。
ウクライナ全面侵攻による軍需拡大を受けた動きで、ドイツ政府も同子会社への一部出資を検討している。
対象の子会社はティッセン・クルップ・マリン・システムズ(TKMS)。19日にカーライルがTKMSのデューデリジェンス(資産査定)を行うことで合意した。
ティッセンは同日、カーライルへの売却案について「艦艇事業の独立性のために検討している選択肢のひとつ」とコメントした。さらにドイツ政府による出資交渉を同時に進めていることも明らかにした。
独経済紙ハンデルスブラットによると、カーライルが過半、独政府が20%以上をTKMSに出資する案が検討されているという。
自動車産業向け需要の落ち込みからティッセンは本業の鉄鋼部門が赤字に陥っており、売却など構造改革の必要性に迫られている。一方、世界的な軍需拡大によってTKMSの業績は好調だ。
潜水艦の受注拡大を受け、2023年10〜12月期の受注高は前年同期比4倍の5億2900万ユーロ(約860億円)と大きく伸びた。
2億5000万ユーロを投じ、主力の独キール工場に新たな造船設備を導入。23年9月からドイツ海軍とノルウェー海軍向けに新型潜水艦「212CD」計6隻の製造を始めた。
情勢不安が続くなか、ドイツ政府にとって艦艇能力の増強は課題となっている。
独政府が株主となることで、イタリアやフランスなど欧州の造船会社との統合を進め、建造能力を高めやすくなる狙いもある。
日経記事2024.03.19より引用