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オランダのルッテ首相はNATOの次期事務総長に内定した=ロイター
【ブリュッセル=辻隆史】
北大西洋条約機構(NATO)は20日、ストルテンベルグ事務総長の後任に、オランダのルッテ首相を充てる人事を内定した。
トランプ前米大統領がNATOを批判するなど、加盟国の協調はほころびを見せる。豊富な外交経験を生かし、米欧とアジアの有志国の結束を維持する調整力が期待される。
10月に就任する。事務総長に立候補していたルーマニアのヨハニス大統領が20日、ルッテ氏の就任を認める方針に転じた。
ルッテ氏の人事案に反対してきたハンガリーのオルバン首相も18日に容認しており、全加盟国の同意を得た。
事務総長は加盟国の文民代表からなる最高意思決定機関・北大西洋理事会の議長を務める。
NATOは全ての加盟国の同意を得て重要な意思決定をする「コンセンサス方式」をとる。一国でも反対にまわれば決定できない。
2022年のロシアのウクライナ侵略を受けてフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟を申請した際は、トルコやハンガリーが賛成に回らず交渉が難航した。
こうした局面で各国首脳を説得し、利害調整の要となるのが事務総長だ。
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東西冷戦期を含む1961〜2009年の事務総長は外相や国防相など主に閣僚経験者が務めた。09〜14年に事務総長だったデンマーク元首相のラスムセン氏、14年に就任したノルウェー元首相のストルテンベルグ氏に続き、3代連続で加盟国の首相経験者が就任する。
加盟国の首脳と調整する場面が増えたため、事務総長にも相応の地位と外交経験を求めるようになったようだ。
現在57歳のルッテ氏は10年からオランダ首相を務めており、同国史上最長の首相在任期間を誇る。
23年7月、内政の混乱を受け内閣総辞職を表明し、11月の下院選で所属政党が敗北した。新内閣の発足とともに首相を辞め、ブリュッセルに本部を置くNATOに移る。
ルッテ氏はロシアへの厳しい姿勢で知られ、ウクライナへの積極的な軍事支援を主導してきた。オランダは半導体製造装置大手ASMLホールディングを抱える。
米国が求める対中半導体規制にも協力し、バイデン大統領とも信頼関係を築いた。
新事務総長としてロシアや中国の脅威との対峙を迫られるが、リスクは加盟国内にもある。最たるものは、11月の米大統領選でトランプ氏が返り咲くことだ。
トランプ氏はNATOへの否定的な発言を繰り返し、有事の際に欧州の加盟国の防衛義務を守らない可能性に言及する。
ルッテ氏はトランプ氏が大統領だった期間もオランダ首相を務めており、両者は面識がある。
米ニュースサイトのポリティコによると、ルッテ氏が18年にワシントンを訪問した際、明るく気さくに懸案の交渉を進めようとする様子をみたトランプ氏は「私はこの男が好きだ」と記者団の前で語ったという。
「トランプに対する不平や泣き言はやめよう」。24年2月、ドイツのミュンヘン安全保障会議で演説したルッテ氏は、欧州の参加者にこう訴えた。
「トランプが戻ってくるかもしれないから防衛に多く投じるのではない。我々の利益のためだ」と欧州各国に主体的な防衛力の強化を求めた。
NATO加盟国では権威主義的な政治手法をとるハンガリーのオルバン氏と交渉する局面も増えそうだ。オルバン氏はルッテ氏の人事案に反発してきた。
過去にルッテ氏が性的少数者に関する教育を禁じたハンガリーに対し「欧州連合(EU)に居場所はない」などと批判したためだ。
オルバン氏は18日、X(旧ツイッター)でルッテ氏の就任を支持する代わりに、NATOのウクライナへの軍事支援の取り組みには参加しないことで同氏と合意したと明かした。
ストルテンベルグ氏は6月にオルバン氏と会談後、ハンガリーにウクライナ支援への参加義務はない一方で、ハンガリーはNATOの決定には反対しないという内容で折り合ったと説明した。
NATOが検討するウクライナ支援策にハンガリーが拒否権を使う事態は当面避けられる見通しだが、オルバン氏が態度を一変させる懸念は残る。
ストルテンベルグ氏が推進した、日本や韓国などアジアとの連携路線を引き継ぐかも注目される。NATOは22年にまとめた「戦略概念」で、中国について初めて「体制上の挑戦」と名指しし、対処する必要性を強調した。
NATOと日本は23年に新たな協力計画で合意したが、サイバーや宇宙といった分野での連携策の具体化は始まったばかりだ。
日本政府関係者は「ルッテ氏と接触する機会を増やし、アジア重視の姿勢を改めて確認したい」と話す。
ひとこと解説
ストルテンベルグ事務総長は、日韓豪ニュージーランドから成るAP4(アジア太平洋パートナー)と呼ばれるアジアの米国の同盟国、特に日本との協力拡大を進めた人物でしたが、後任のルッテ氏はこの方向性をより強化していくと予想されます。
ルッテ氏が首相を務めたオランダは、かつては東南アジアに植民地を持ち、伝統的な海軍国として米英海軍との関係が近く、現在は米英と足並みを揃えてインド太平洋への関与を強めており、日本の海上自衛隊との協力関係も深めています。
6月9日にはオランダ海軍のフリゲート艦「トロンプ」が九州西方の海域で海上自衛隊の護衛艦と共同訓練を行っています。(以下の記事参照)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA140YS0U4A610C2000000/
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