取材に応じる商船三井の橋本社長(21日、東京都港区)
商船三井の橋本剛社長は21日、日本経済新聞の取材に応じ今後のM&A(合併・買収)の方針について「1件で2000億〜3000億円の投資は可能だ」と語った。
海運業界は市況によって業績が左右されやすい。新型コロナウイルス禍以降の好業績で得た資金を生かして海運以外も視野に入れた大型M&Aも活用し、事業構造の転換を進める。
商船三井の2024年3月期連結決算で純利益は前の期比67%減の2616億円で、新型コロナ禍の23年3月期(7960億円)と22年3月期(7088億円)に次ぐ過去3番目の高水準だった。
新型コロナ禍の特需は一服したものの、足元でも海運市況は好調を維持している。
財務体質は盤石になった。24年3月期の自己資本比率は57.1%で新型コロナ禍が本格化する前の20年3月期(24.5%)から32.6ポイント上昇。
24年3月期までの3年間累計の営業キャッシュフローは約1兆2000億円に達する。橋本社長は最大3000億円規模のM&Aを実施しても「長期的な財務体質は問題がない」と語った。
主力の海運事業は市況の変動を受けやすくポートフォリオの変革を進めている。
同社は36年3月期までに総資産のうち、不動産や物流、洋上風力発電といった市況に変動しにくい非海運事業の比率を現在の30%から40%まで増やす計画だ。橋本社長は「在来型の海運業で考えると成長余地は限られてしまう」と述べた。
橋本社長はM&Aの候補として「離れ小島の様な案件はやらない。現在の事業の延長線上にあるものを念頭に考える」と強調した。
さらに「海外の不動産など、一つ一つ自分でつくり上げるより既存の会社を買うのが向く事業もある」と述べた。
すでに同社は24年も風力発電設備保守で国内最大手の北拓(北海道旭川市)や、化学品などを運ぶシンガポールのケミカル船運航会社を買収している。