米カーライルの日本特化ファンドは今回で5件目となる=ロイター
米大手投資ファンドのカーライル・グループは、日本企業への投資に特化したファンドを4300億円規模で新たに立ち上げた。20年の前回ファンドの約1.7倍の規模だ。
国内で大企業による事業売却やMBO(経営陣が参加する買収)、事業承継が増えており、これらに投資する資金に充てる。
カーライルの日本でのファンドは5件目となった。日本特化型としては他社を含めて過去最大規模という。今回のファンドでは
①テック、メディア、通信
②消費財、小売り、ヘルスケア
③製造業など――の3分野を投資対象に定める。
これまでは企業価値が500億円程度の中堅クラスの案件を扱うことが多かったが、今回のファンドでは大手企業による1000億〜2000億円の大型案件も狙う。今夏にも投資を始める方針だ。
今回のファンドでの資金調達では、およそ3割が日本の投資家、7割は海外勢が占めた。海外は日本を除くアジア、中東、北米の3地域でほぼ等分となった。
東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業などを念頭に効率的な資本活用を上場企業に促しており、利益向上への期待が薄い非中核事業を切り離す要請は高まっている。
アクティビスト(物言う株主)らも経営改善の要求を強めており、対応に動く企業が増えている。
このような企業はファンドを受け皿として事業を売却し、売却によって得た資金を元手に成長領域へ重点的に経営資源を傾けることができる。企業本体を上場廃止にして事業を再構築することなども見込む。
カーライルはこれまでの投資で得た経営改善へのノウハウを活用して収益力や企業価値を高めたうえで、上場や他社への売却を通じて利益を得る計画だ。
カーライルは2000年に日本での投資を始め、累計の件数は約40件、投資額はおよそ4500億円にのぼる。海外勢としては早い段階に日本へ進出した経緯があり、これまでの知見を生かして投資案件を拡大する。
20年の前回ファンドは2580億円の規模だった。足元でおよそ7割の資金の投資が完了した。投資で見込まれる利回りを示す内部収益率(IRR)は約28%と、事業売却目的のファンドとしては高水準を維持している。
カーライルは日本進出以降で精密ボール最大手のツバキ・ナカシマやオリオンビール(沖縄県豊見城市)などへの投資実績がある。
分析機器大手のリガク(東京都昭島市)には1000億円規模を投じた。20日には1300億円での日本KFCホールディングスの買収を発表しており、大型案件にも進出している。
海外を含めると4250億ドル(約66兆円)の運用残高があり、他地域で展開するファンドを活用したり、外部の投資ファンドとの連携も模索したりして、案件の大型化に対応する。
日本は海外に比べてファンドによる投資事業が出遅れており今後の成長余地は大きい。
英調査会社プレキンによると、日本の未上場株の運用残高は23年9月時点で1067億ドルで、世界全体の8兆7692億ドルとの開きは大きい。