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ロシア、在シリアの基地存続に暗雲 アフリカ戦略に打撃

2024-12-11 19:17:35 | NATO・EU・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


ロシアのプーチン大統領㊨はシリアのアサド政権を支えてきた(7月、モスクワ)=AP


シリアのアサド政権崩壊で、ロシアがシリア国内に持つ海軍、空軍基地の存続が危ぶまれている。

アサド政権支持の見返りとして租借していたが、新たな暫定政権の中心である旧反体制派は9日までに周辺地域を制圧したもようだ。シリアを拠点としていた中東・アフリカ戦略の見直しを迫られかねない。

 

タス通信は9日、旧反体制派がロシアのフメイミム空軍基地がある北西部のラタキア県をほぼ掌握したと報じた。

ロシアのペスコフ大統領報道官は、ロシア軍基地について新たな政権と協議する方針を示した。「今後の見通しを語るのは時期尚早」と述べるにとどめ、軍が警戒態勢をとっていると指摘した。

 



米衛星情報会社マクサー・テクノロジーズが撮影した衛星写真によると、ロシア軍は10日時点でラタキアにほど近いタルトス海軍基地からフリゲート艦や潜水艦を沖合に退避させているもようだ。

混乱が波及するのを避ける目的とみられる。

 

フメイミム空軍基地の衛星写真でも9日時点で、ロシア軍の航空機やヘリコプターが確認される。

ロシアは2015年にアサド政権の支援を目的にシリアに軍事介入した。反体制派や過激派組織「イスラム国」(IS)を空爆し、劣勢だったアサド政権にとって救世主となった。

 

ロシアはアサド政権の後ろ盾となる見返りとして、シリア国内で海軍、空軍の2基地を49年間租借することで合意した。

タルトス海軍基地は地中海につながる地政学的な要衝で、北大西洋条約機構(NATO)をけん制する役目を担ってきた。

 


マクサー・テクノロジーズの衛星写真では9日時点でフメイミム空軍基地にロシア軍の航空機
などが確認される=ロイター

 

シリアの基地の重要性はロシアが影響力を広げようとするアフリカ大陸にも及ぶ。シリア内戦ではロシアの民間軍事会社「ワグネル」が関与し、実戦の経験を積んだ。

ワグネルはシリアの基地を物資補給や雇い兵訓練の拠点として活用し、リビアやマリなどアフリカに進出する橋頭堡(ほ)としてきた。

 

ロシアのプーチン政権は14年にウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合し、欧米との対立が深刻化していた。

シリアへの介入をきっかけに対テロでの連携で欧米との対話再開につなげるうえ、国際社会で主要なプレーヤーとして返り咲く意図もあった。

 

22年からのウクライナ侵略でプーチン氏の戦略に狂いが生じた。侵略の長期化で兵士不足が深刻化し、シリアに派遣する軍要員も大幅に減少していたとされる。

アラビア語放送のスカイニュース・アラビアは6日、ロシア政府がアサド大統領による追加支援の要請を断ったと報じていた。

 

アサド政権の崩壊を受け、ロシアがシリア国内の基地を維持できるかが焦点となる。

ロシア国防省と近い通信アプリ「テレグラム」のチャンネル「ライバー」は、「反乱軍は前進を止めないだろう」と投稿した。旧反体制勢力がロシアに打撃を与えるため、基地を攻撃する可能性が高いとの見通しを示した。

 

ウクライナ国防省の情報総局は9日、テレグラムにロシア軍がラタキア空軍基地から兵器や軍装備品を撤収したと投稿。ロシア軍は基地を失う結果になるだろうと分析した。

仮にロシアがシリアでの基地を喪失すれば、軍事介入を主導したプーチン氏の威信に傷がつく。ロシアの中東、アフリカでの軍事的な存在感は大きく低下し、外交戦略にも打撃が大きい。

 

アサド政権を倒した旧反体制勢力は国際テロ組織アルカイダ系に起源を持つ。シリアでイスラム過激派が力を盛り返せば、ロシア国内の治安に波及する懸念もある。

ロシアでは今年3月にモスクワ郊外でISによる銃乱射事件が発生するなど、イスラム過激派によるテロが相次いでいる。

 

プーチン政権も15年にシリア介入を決断する背景として、ISなどテロ組織との戦いを掲げていた。

イスラム過激派にはロシアからも多数の戦闘員が流入したとみられ、国内の不安定要因となりかねない。

 

 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

 

小泉悠のアバター
小泉悠
東京大学先端科学技術研究センター 准教授
 
ひとこと解説

現状、ロシアがシリア国内に持っている恒常的な軍事基地はタルトゥスの海軍基地(正式には物資補給拠点)とフメイミムの空軍基地の二つです。

しかし、空軍部隊は地上への近接航空支援のために複数の前方展開拠点を設けており、これを守るために地上部隊や防空部隊も一緒に前方展開しています。

というわけでシリア国内にはかなり多数のロシアの軍事拠点があり、これらをどこまで削って何を残すかがこれからの交渉対象となってくるのではないでしょうか。

もちろん完全撤退を突きつけられる可能性もないではないですが、ロシアとしてはなんとかタルトゥスとフメイミムだけは残そうとするのだと思います。

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青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
 
ひとこと解説

アサド政権の崩壊後、ロシアは軍事基地の確保のため反体制派と交渉の用意があるという。

他方のバイデン政権は反テロ組織に指定されていながらも、シャーム解放機構(HTS)と話し合ってもよいという。

ただトランプ氏はシリアに係らない姿勢を示している。そして中国は相変わらず静観の姿勢をとっており、大使館を閉鎖しないで新政権との関係に望みをかけている。

アラブ諸国とイスラエルの関係でも対立している。アサド政権が崩壊したにも関わらずイスラエルがシリアでの攻撃を拡大していることに、アラブ諸国は苛立ちを隠せない。

シリアの情勢はまさに流動的で、混とんとしている。情勢が落ち着くまでにはまだ時間がかかりそうだ。

 (更新)
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広瀬陽子
慶応義塾大学総合政策学部 教授
 
ひとこと解説

ロシアの前身・ソ連は多くの海外基地を保有していたが、ソ連解体後は、ロシアにとってシリアが旧ソ連諸国外では唯一の海外基地だった(ベネズエラやスーダンでの設置については話には出るものの実現していない)。

シリアの基地はその地政学的特性により、アフリカ政策の拠点となるだけでなく、中東や欧州にも目を光らせることができる重要拠点だったため、シリアの基地が維持できなければ、ロシアの世界戦略が大幅に崩れることになる。だが、維持は困難だろう。

ロシアはシリアからの傭兵もウクライナ戦争で使っていたとされるが、それもできなくなり、テロ対策もより深刻になることから、ウクライナ戦争でもより窮地に追い込まれるだろう。

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中東情勢

イスラエル軍は2024年10月1日、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラに対し、イスラエルと国境を接するレバノン南部で「限定的」な地上攻撃を始めたと発表しました。

その後、イスラエル軍は、イランがイスラエルに向けて同日にミサイルを発射したと発表しました。最新ニュースと解説記事をまとめました。

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日経記事2024.12.11より引用

 

 


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