
終値で史上最高値を更新した日経平均株価(22日、東京都新宿区)
日経平均株価が1989年末の高値を超えた。バブルから転がり落ち、長期の低迷に沈んだ「失われた30年」から抜け出す。
日本の脱デフレや企業の変化に世界のマネーが注目している。日本は今度こそ本物の「夜明け」となるだろうか。
「今回は違う」。米キャピタル・グループのマイク・ギトリン社長兼最高経営責任者(CEO)が2月に東京を訪れていた。
キャピタルは長期投資に徹する米国屈指の運用会社だ。世界の企業と比較して、10年、20年前よりもはるかに日本企業に注目できるという。
同氏が日本株に最初に関わったのは93年。30年間の動きを肌で知る。
企業は思い切った事業変革に踏み出し、自社株買いや配当を積極的に増やし始めた。女性の経営トップも登場している。「我々は日本の変化を目の当たりにしている」
世界を驚かせた米投資家ウォーレン・バフェット氏による商社株投資。株価の低さだけが理由ではなかった。昨春の来日時に評価したのは「多くのキャッシュを生み出す経営」。世界に劣らぬ力を見いだした。
日本の変化を後押しする大きな2つの風がある。1つは「脱デフレ」、もう1つは地政学的にみた世界の「脱中国」の流れだ。
デフレが終わり、賃上げを前提にした経営になれば、製品やサービスの価値を高め続けねばならない。
設備投資や研究開発は必須だ。「脱デフレそのものが企業を変えるインセンティブになる」(米アライアンス・バーンスタイン)
インフレになれば現金の価値は目減りする。新しい少額投資非課税制度(NISA)が起点になり、現金に偏る家計のマネーが投資へと動く期待につながる。
そして脱中国。敏感なマネーの動きを映すのが半導体株だ。2022年秋に米国が先端半導体の中国向け輸出を規制して以降、日本の半導体関連株の上昇は世界で突出する。
日本の半導体関連株を集めた上場投資信託(ETF)は22年6月末から2.6倍に上昇、米エヌビディアの5倍強は別格だが、8割高の米フィラデルフィア半導体株指数をしのぐ。
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「極端紫外線(EUV)露光に欠かせない素材は」「半導体パッケージングで強い企業は」。米系ファンドの東京拠点には「発掘」を試みる問い合わせが今も続いている。
人工知能(AI)でリードするのは米国だが、半導体の周辺の重要技術は日本にある。
停滞国のイメージから世界で最も「変化する国」へ――。海外投資家の視線に反転が起き始め、日経平均を34年ぶり最高値に押し上げた原動力となっている。
多くの海外投資家は日本株の保有が少なく、潜在的な買い余地は大きい。世界で日本株の時価総額シェアは5%だが、平均して4%ほどしか運用資産に組み入れていない。
海外勢の運用規模を考慮すると「(シェア並みの)中立に戻すだけで40兆円前後の規模の買いが必要になる」(JPモルガン証券の小川眞治株式営業部共同部長)。

「歴史は繰り返す。いま起きつつある奇跡はもっと長く続くだろう」。
世界最大の資産運用会社、米ブラックロックのラリー・フィンクCEOは昨秋の訪日時に、80年代までの日本の高成長になぞらえてみせた。
日本はもっと変化してほしいと励ますエールでもある。デフレで萎縮したくびきを解き、新たな道を切り開くかを市場は見ている。
(編集委員 藤田和明)
日経記事2024.02.23より引用