RC-NET(レイプクライシス・ネットワーク) BLOG.

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私がワンストップセンター乱立に反対の理由。1

2016-05-20 07:15:57 | スタッフ日記

RC-NETの岡田です。今日はタイトルにあるように、私がワンストプセンターというこの数年日本中に広まっている仕組み作りに反対している理由を書こうと思います。

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「口は出さないでいからお金を出してほしい」

乱暴な物言いに聞こえますが、これは1990年代及び2000年代の最初の頃まで、本当によく性暴力被害者支援に関わる人たちの中から聞こえてきた言葉でした。

まぁ、たぶん、NPO的なことをやっている人はみんな思ったことがあることなんじゃないかと思います。

何故、こういう言葉が出るのかと言えば以下のようなことです。

 

私たちは常に被害当事者と向き合いながら、その人達が少しでも自分自身の望む方向性に進む事が出来るように力一杯応援します。その中で、もちろんお金が必要になる。しかし、そのお金を得る為には非常に煩雑な書類を出したり、出しても通らなかったりしながら、

専らNPOお得意の「手弁当」で活動を続けてきたわけです。

レイプサバイバーの尊厳を守るために。

被害にあったその人を、絶対に孤立させないという思いのなかで。

サバイバーたちが不条理な社会的偏見や差別、無知に曝されないために。

一人で、死んでしまわないために。

 

警察の対応の酷さは多くのサバイバーにとって非常に困難を伴うものでした。被害届受理に関わる対応の悪さ、レイプ神話に基づく偏見等による暴言、様々な“公的な無理解”から、市民団体は当事者を守らなければいけませんでした。

“社会的”な“公的”な場からサバイバーが二次被害を受けないように、なんとかサバイバーに“寄り添う”ことが求められてきました。

 

私は「パーソナルデータをパブリックに渡すな」と教えられていました。

この人がレイプサバイバーである、ということを絶対に公的機関に渡してはいけない。個人情報はNPOが持つべきだ、と。そして、その人の個人情報について、特に被害に関わる情報については、メモ一つも残してはいけないと。

それは、アメリカのレイプクライシスセンターでも言われました。

「レイプサバイブに関わる情報は全て本人の意思の元で管理されるべきであり、データではない」と。私たちが社会啓発の中でしていいのは、アンケートであって、被害情報をばらまく事ではない。

 

根本的な問題として、相談データというものの存在が本来的には望ましく無いものだということを考えてきました。

金を出すから根拠を見せろ、というのがこの分野にとっては非常に難しいものであって、何故ならその根拠となる「データ」は、お金と引き換えに渡せる程に安易なものではないからです。

だからこそ、「口は出さないでお金を出してほしい」なわけです。

 

しかし、一時期から日本中で公的なお金が回り、相談を各所で受ける体制が整ってきます。

「相談バブル」などとも言われましたが、これまであまり相談支援事業に関わってこなかった人たちも多く関わりだし、「相談」が「データ」となり始めました。

その「データ」の多くには、本人による公開の許諾は取れていません。

どのような被害にあったのか、それは誰からの被害で、どの場所で、どういう関係性だったのか。

「個人が特定出来ないように」と言っていますが、その大本となるデータは、誰が見て、どのように保管され、どのように消却されるのかも明確にされていません。

相談をする、ということが直結して被害情報をパブリック(公的機関等)に渡す、ということではいけないのではないだろうか。

 

ワンストップセンターを全都道府県に作るという流れがあります。

まず、ワンストップセンターには大枠で2派ありまして、元々活動していたNPOが拠点となり、公的私的資金を投入され支援にあたるものと、パブリック(犯罪被害者支援センター、警察、病院)が拠点となり“ほぼ”公的存在として支援にあたるものです。

両者に問題点は多くありますが、特に後者が問題です。

(前者の多くが“女性限定”を明示するなどの点については、法改正の流れや情報周知・理解等によって改善していけるものだと思います)

完全に、“パブリック”です。ここでよく言われている言葉としては「県、警察、弁護士、婦人科医との連携のもと」という言葉。これまでのNPOの実践を完全に無視した公的な支援体制の構築です。

特に、私たちがいる青森のような地方都市に於いては、ジェンダーバランスとしても完全にバランスを欠いた状態で、男性職員と少数の女性事務員、そして女性ボランティアがメインとなって相談を聞く、実は性暴力被害についての学びをこれまで明確にしてきたわけでもなく、この事業のための研修・講座を少し受けました、というような状態の方も多くいらっしゃいます。

そもそも、公的な相談機関はこれまで存在していなかったのでしょうか?

いや、ありました。相談機関はあった、だけれども、“機能していなかった”のです。

二次被害生産所か?というくらいに二次被害をばらまき、被害届も受理しない。相談もろくに聞かない。連携も出来ない。医療的急性期として捉えられるような状態しか相手にせず、たらい回しにばかりする。公的な相談窓口がありましたし、今も存在しています。

そこを、なんとかしませんか。

婦人科医との連携、と言っても、なぜワンストップ等を介してのみ連携が出来るというのでしょうか。

まず、国内の医療機関にまず駆け込んだとして、レイプキットが常備されている病院が、今になっても何故こんなに少ないのでしょうか。

必要なのは、情報をパブリックに渡すことではありません。

ワンストップセンター、という聞こえのいいハコ物が各地に出来ることでもありません。

 

サバイバーが声を上げた時に、どれだけの場所で「自分たちが受け入れる」という土台を作れるかということです。

 

・既存の相談機関に於いて性暴力被害に関する相談体制を構築する

・医師会を通じて、性暴力被害に関わる証拠保全についての通達を出す

・レイプキット使用等、証拠保全に関わる資金を全国一律で助成する

・民間の“多様な”性暴力被害に関する支援事業に助成する

・各都道府県での被害者支援事業を一括で取りまとめせず、国内全域にまたがり各都道府県での支援に関わるマップ作成を行い、サバイバーに対してどのような支援があるのか選択肢を示す

 

法律を作るより簡単なこと。

国からお金が出るなら、「相談窓口つーくろ!」なんていう安易なことではなく、ぜひ、「これで日本で性暴力被害にあっても孤立しないでいられる」と思えるようなものを作りませんか。

 

 

これが、私が乱立して行くワンストップセンターというものに反対している理由です。