来月7日に投開票を迎える東京都知事選について、JNNでは22日、都内の有権者に対しインターネット調査を行い、取材を加味して序盤の情勢を分析しました。その結果、現職の小池百合子氏が安定した戦いぶりで、他の候補を引き離していることがわかりました。

小池氏大きくリード 蓮舫氏、石丸氏が追う展開

現職の小池百合子氏は、都民ファーストの会の支持層の約9割を固めています。さらに自民党・公明党支持層の約8割を固めるなど大きくリードし、他の候補を引き離しています。

前参議院議員の蓮舫氏は、立憲支持層の約8割、共産支持層の約7割を固め、小池氏を追う展開です。広島県安芸高田市の前市長・石丸伸二氏が続いていて、元航空幕僚長の田母神俊雄氏など他の候補は伸び悩んでいます。

ただ、今回の調査では約3割の人がまだ投票先を決めていないと答えていて、今後、情勢が大きく変わる可能性があります。

小池都政「評価」約7割

2期8年に及んだ小池都政についての評価を問いました。その結果、▼「大いに評価する」約1割▼「ある程度評価する」約6割▼「あまり評価しない」約2割▼「全く評価しない」約1割となり、肯定的な回答が約7割に及びました。

プロジェクションマッピング「見直し必要」5割超

都庁などで行われているプロジェクションマッピングは、約48億円の予算が投じられています。これについて、事業の⾒直しが必要かを問いました。その結果、▼「見直しが必要」約5割▼「見直しは必要ない」約2割▼「わからない」・無回答が約3割となり、半数以上の人が見直しを求める結果となりました。

また、小池氏を支持すると答えた人でも、約4割が「見直しが必要」と回答しています。

神宮外苑再開発「⾒直し必要」約4割

明治神宮外苑では、神宮球場や秩父宮ラグビー場を建て替え、高層ビルを建設するなど、再開発の計画が進められています。これについて、計画の見直しが必要かを問いました。

その結果、▼「見直しが必要」約4割▼「見直しは必要ない」約2割▼「わからない」・無回答が約4割となりました。蓮舫氏を支持すると答えた人は約8割が「見直しが必要」と回答したほか、小池氏支持者でも約3割が見直しを求める結果となりました。

都知事選は来月7日投開票

先週告示された東京都知事選は来月7日投開票を迎えます。立候補者は56人で、過去最多となっています。

東京都知事選挙 立候補者(届け出順/年齢は2024年6月23日時点)

 野間口翔氏、沢繁実氏、大和行男氏、木宮光喜氏、小池百合子氏
 内海聡氏、石丸伸二氏、小野寺紘毅氏、新藤伸夫氏、竹本秀之氏
 桜井誠氏、ドクター・中松氏、安野貴博氏、清水国明氏、AIメイヤー氏
 桑原真理子氏、後藤輝樹氏、河合悠祐氏、福本繁幸氏、黒川敦彦氏
 桑島康文氏、田母神俊雄氏、蓮舫氏、内藤久遠氏、内野愛里氏
 石丸幸人氏、尾関亜弓氏、小松賢氏、加賀田卓志氏、福永活也氏
 犬伏宏明氏、武内隆氏、遠藤信一氏、上楽宗之氏、二宮大造氏
 中江友哉氏、舟橋夢人氏、山田信一氏、加藤英明氏、草尾敦氏
 津村大作氏、久保田学氏、前田太一氏、南俊輔氏、福原志瑠美氏
 木村嘉孝氏、三輪陽一氏、松尾芳治氏、穂刈仁氏、小林弘氏
 加藤健一郎氏、ひまそらあかね氏、向後真徳氏、牛窪信雄氏、古田真氏
 相川絹二郎氏

 

 

最新調査の結果

6月20日に告示され、7月7日に投開票される東京都知事選。

自民党や公明党、国民民主党の支援を受ける小池百合子氏と、立憲民主党や共産党の支援を受ける蓮舫氏の対決が注目され、そこにネット上で人気を誇る安芸高田市長の石丸伸二氏が食い込んでいけるかが注目されているが、永田町ではこの3氏を巡る情勢調査が出回っている。

筆者が入手した資料によると、自民党による情勢調査は6月1~2日、8~9日、15~16日の3回にわたって実施。

最新の6月15~16日の調査によると、小池氏が43.6ポイントを獲得し首位に立ち、蓮舫氏が32.1ポイントと続き、石丸氏は8.3ポイントと大きく引き離されている。

なお、「その他の候補者」が7.8ポイント、「まだ決めていない」が8.2ポイントで、計100ポイントとなっている。

蓮舫氏〔PHOTO〕Getty
 
 
最新調査ではすでに小池氏と蓮舫氏の間にも10ポイント以上の差が広がっていることになるが、一方で6月8~9日にかけて実施された調査では小池氏40.3ポイント、蓮舫氏34.6ポイントと差は5.7ポイントまで縮まっており、立憲関係者は「まだまだ情勢は流動的で逆転可能性は十分にある」と意気込む。

蓮舫氏にとっては、現在よりもさらに幅広い層からの支持を取り付けることができるか否かが勝負の分かれ目となるが、その際にネックとなるのが「立憲共産党」批判だ。

(以下略)

 

 

東京都知事選挙の序盤戦で戦略くっきり…小池氏は「公務」重視、蓮舫氏は繁華街で演説

 過去最多の56人が立候補した東京都知事選(7月7日投開票)は23日、告示後初の「選挙サンデー」を迎え、各候補者はあいにくの雨の中、街頭で熱弁を振るった。序盤戦の動きを追うと、各陣営の戦略や狙いが見えてきた。

(左から)小池百合子候補、蓮舫候補、石丸伸二候補、田母神俊雄候補

(左から)小池百合子候補、蓮舫候補、石丸伸二候補、田母神俊雄候補

 告示日の20日は出発式を行っただけで都庁に戻った現職の小池百合子候補(71)。4月の衆院東京15区補選で、一部の政治団体から演説妨害に遭ったことを理由に挙げたが、現職らしく「公務優先」の姿勢を貫き、確実に支持を固める思惑もある。

 公務は都庁に籠もるだけでなく、現場視察に重点を置く。同行するメディアを通じて、2期8年の実績や今後取り組みたい施策をアピールする狙いが透けて見える。街頭演説は週末が中心で、23日は奥多摩町のダムを視察後、JR奥多摩駅前など2か所で演説。2019年の台風19号の被害に触れ、「都民の命と暮らしを守る」と訴えた。

 小池候補を自主支援する自民党や公明党は裏方に徹する。23日も応援でマイクを握ったのは、地元選出の自民議員でなく地元の首長だけ。自民都連幹部は「表には出ないが、各種団体に支援を呼びかけている」と明かし、公明関係者は「都議を中心に地方議員が支持層固めにフル回転している」と話す。

 一方、前参院議員の蓮舫候補(56)は、繁華街での街頭演説に力を入れる。喉を痛めないよう、1日1~2か所のペースだが、本人が話す時間を多くとっている。

 演説は告示直前に離党した立憲民主党が仕切る。「反自民」の姿勢を強調し、21日には萩生田光一・自民都連会長の地元の八王子市で、自民派閥の政治資金規正法違反事件を批判した。

 ただ、支援を受ける共産党の露出は抑え気味だ。陣営関係者は「左派色が強いと無党派層に敬遠される」と明かす。23日の錦糸町駅前(墨田区)での演説には、共産の吉良佳子参院議員を応援弁士に迎え、「自民と一緒に都知事を目指す人には絶対に勝ちたい」と訴えたが、今回の選挙戦で共産議員と並んだのは初めてだった。

 こうした陣営の事情に共産側も理解を示す。ある共産関係者は「党所属の議員がそれぞれ駅頭などで蓮舫候補への支持を呼びかけている。党公認候補以上の活動量だ」と話した。

石丸氏はSNSで活動拡散、田母神氏は保守層を取り込み

 街頭で最も精力的に動くのは、広島県安芸高田市前市長の石丸伸二候補(41)だ。毎日朝から夜まで30分刻みで演説場所を移動し、支持を訴えている。

 狙いは知名度アップで、自己紹介や政治姿勢に多くの時間を割く。学生街や下町などターゲットを明確に絞り、23日はお年寄りに人気の巣鴨地蔵通り商店街(豊島区)で、「既存の政党に属さない人間が東京の知事になれば政治が変わる」と訴えた。

 ボランティア約5000人がSNSを駆使して、活動ぶりを拡散しているといい、今後の演説では具体的な政策の比重も高める方針だ。

 元航空幕僚長の田母神俊雄候補(75)は、保守層の取り込みに余念がない。告示日には、靖国神社(千代田区)を参拝してから選挙戦をスタートさせ、古巣の防衛省前でも演説した。その後も、保守系団体の関係者らが街頭演説に駆けつけて応援のマイクを握っている。

 一方、原宿や池袋など若者が集まる繁華街では、若者向けの政策を強調し、政治への関心が低い層の掘り起こしにも力を入れる。23日は、住みたい街として人気の吉祥寺駅前(武蔵野市)で、「若い人たちの実質所得が増えるようにしたい」と演説。その後は商店街を練り歩き、記念撮影に応じていた。

 

 

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百合子が“ユリコ”に(八丈島で「ゆーゆー牧場」を視察する小池百合子都知事)/(C)日刊ゲンダイ
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 会いに来たぞ! 百合子──。3選を目指す東京都知事選(7月7日投開票)で、小池知事がようやく初めて街頭に立ったのは八丈島。初当選した8年前も告示翌日にかの地で演説したとはいえ、大勢の聴衆を避ける「ステルス作戦」は海をも越えた。船で揺られること10時間半、日刊ゲンダイ記者は現地に向かい「会いに行けない知事」を追った。

■フリー記者の問いかけに「つばさの党の人?」

 22日午後1時、15人ほどの報道陣が待つ中、SPらを従えた小池知事が空港に到着。約1分の歓迎セレモニーで花輪をかけてくれた子供たちと記念撮影を済ませると、フリー記者の「ヤジが嫌で八丈島ですか」との問いかけに「つばさの党の人?」と捨てゼリフを吐き、そそくさと車に乗り込んだ。

 向かった先は八丈島乳業運営の牧場だ。くしくも同じ名前の乳牛「ユリコ」に島特産のアシタバを与え、「あーすごいすごい、百合子がユリコに」と満面の笑み。質疑応答の機会は設けず、しびれを切らしたフリー記者が「カイロ大卒業が」と質問しようとすると同行した小池知事の元秘書で「都民ファーストの会」の尾島紘平都議が一目散に飛んできて「ここは私有地。静かにしていただかないと出ていっていただきます」とスゴんだ。

 演説会場「底土港」の駐車場内で200人ほどが金属探知や荷物検査を受け、周囲にも100人近く集まった。聴衆から遠く離れた小池知事は海を背に“映える”ロケーションで特産の絹織物「黄八丈」のスカーフをまとい「この島は東京にとって大事。選挙の時は八丈島に来るのがお作法だと思っています」とアピール。

■「選挙の時だけ来て八丈島の何が分かるの?」

 たびたび拍手が起こる和やかムードが終了の瞬間に一変。複数のフリー記者から学歴詐称疑惑を問う声が飛ぶと、再び尾島氏が駆け付け「選挙妨害です! 選挙妨害やめてください!」と張り詰めた声で言い放つ。小池知事は何のソノで、にこやかに聴衆に近寄りグータッチ。

 民放記者の「どうして八丈島を最初の演説に選んだのですか」という質問さえスルーした。この日は最後まで囲み取材などはナシ。都庁クラブの記者も「理由の説明もなく、なぜ強く出るのか」と不満を漏らした。


 告知は小池知事本人のSNSだけで、「え! 小池さん来るの?」と知らない人も多かった。島民の小池評は上々だが、「選挙の時だけ来て八丈島の何が分かるの? 高齢化がひどく、目立った働き口もない。金が入るのは土建業ばかり。小池さんが何をしてくれたのって感じ」と冷めた声も。

 小池知事は午後5時25分発の飛行機で帰路につき、滞在は正味4時間半。島が舞台の露骨なパフォーマンスに気を良くしたのか、自身のSNSに活動報告を連投した。見事な逃げまくり作戦はとても現職知事とは思えない。

(取材・文=橋本悠太/日刊ゲンダイ)