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鍵穴ラビュリントス

狭く深く(?)オタク
内容は日々の戯言
イギリス、日本、リヒテンシュタイン、大好きです
プラトニックlove好き

ヴィスの7

2013-10-18 06:17:08 | オリジナル小説
 ウンディーネ大公園は二人が思っていたより大きくて広々としていました。小道を行き交う人々は穏やかな表情でいて、そしてセラとアイ自身はまったく気付かなかったのですが、二人とすれ違うたびに老若男女関係なくみなが振り返り、セラとアイに見惚れていました。
「セラ姉さま、みて。フリージアが綺麗よ」
「そうね。いい匂い」
 歩いているうちに、アイの靴が大きすぎて踵(かかと)に靴擦れができてしまいました。
「痛いわ。姉さま」
「しょうがないわよ。我慢しなさい」
「血が出てきたわ。痛くて歩けない」
「もう。しょうがないわね。わたくしの靴と交換しましょう。わたくしの靴のほうが小さいはずだから」
そこで、ベンチに座って、靴を交換しました。
「ありがとう姉さま」
「伯母様に言って靴を貸してもらうか買ってもらうかしましょうね、あとで」
「ええ」
 二人は噴水のところにやってきました。
「伯母様にもらったこの金貨、これを噴水に投げるのよ。ふふっ」
アイは右手に金貨をもち、太陽に翳(かざ)しました。
――と、そのときです。若い男が、アイの左手にもっていた財布をひったくっていきました。セラのハンドバッグも一緒にすられました。
「きゃ」
大変です、なんたってセラの金貨はそのハンドバッグに入っていたのですから!
「アイ!追いかけるわよ!はやく!」
「はいセラ姉さま!」
セラは駆けだしました。しかし、返事はしたものの、アイは血が出て痛くて走れそうにありません。
「姉さま……。わたくし…」
「待ってなさい。取り返してくるわ、わたくしの足にかけて」
「はい。待っています姉さま」
 セラは足が速いのですが、さすがに男の人には追いつけません。それに履きなれない靴なものですから、ついていくのがやっとです。もうウンディーネ大公園を出て、街に入りました。見失わないで飛び込んだ狭い裏路地にいたのは、男の胸ぐらを掴んでいるフード付きマントをかぶった前髪の長い少年でした。




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