お姫様は、じぃと窓からお庭を眺めていらっしゃいました。今日は小春日和、散歩にはもってこいです。
「ジル」
「なんでしょう、お姫様」
「恋ってなんなのかしら?」
「まあ……」
ジルはくすっと笑いました。
「わたくしはちょっとだけだけど、あのガーティ子爵にイライラする」
「まあ……! ふふ、たぶんそれはお姫様がケイトのことを好きなんですね」
「ど、どうしたの、急に! そ、それほどでもないわ!」
「ふふ、お姫様可愛らしい」
お姫様――ニーナ嬢はプッと頬を膨らませました。
ローザが箒で床をはいていると、クリスが窓ガラスをトントンと叩く音がしました。今日のクリスは何か違うと思ったローザは、首を窓から出して、なあに、と尋ねました。
「いや、たいした用じゃないんだけど、俺みてらんねー」
「――何を?」
「貴族の奴とケイトだよ! お姫様の庭で……あんなことして」
「あんなこと? どんなこと?」
「抱き合ってるんだよ!」
ローザとクリスは目を合わせたまま、固まりました。と思いきや、ローザはぴしゃっと窓を閉じてしまいました。
「おい!」
ガラス越しに聞こえる声を無視して、ローザもまたほんのり頬を染めるのでした。
「夢ってなに? ケイト」
ショーンの腕をひしっと持って、ケイトは話し始めました。
「私……、私ね、綿菓子のように口の中に入れたらとけてしまうほどの漠然とした夢でしかないんだけど、おひいさまの侍女の仕事もとっても楽しいんだけど、田舎に、ミスランドウ地方に帰って、お母さんとお父さんに自慢できるような、小物屋さんを作りたいの。レース編みとか編み物とか得意だから……、だから、ミシンを買うのが夢なの」
「ケイトらしいね」
「――それでね、おひいさまのところへたまに行って、ボルドー色の小物をさしあげるの。生地はどこで買うといいのか……それは分からないんだけど……」
「…………ケイトが田舎に帰るなら、僕もミスランドウ地方に帰らないとね。葡萄を育ててお祭りにあげないと。僕が葡萄の世話をするからケイトは……。って、嬉しい夢だね」
ケイトは驚きました。えっ、と言ってショーンの顔をまじまじと見ました。
「どうしたの、ケイト」
「ショーンは家を継がないの?」
「継ぐより、ケイトのほうが大事」
「あ、あの……、それはどういう意味で……」
「ふふ。ケイト。僕と結婚してください」
ケイトは顔から火がでるほどで、指先もかたかた震えました。ケイトの正面にはショーンが居て、ひざまずいてケイトの手の甲に接吻しているではありませんか!
「ショ、ショーン」
ケイトが再び口を開こうとしたとき、
「なんとまあ。ベラリナ王女が聞いたとき、ガーティ家はどうなるだろうね? くすくす。追ってきて正解だったよ、ショーン・ガーティ」
庭の木に、覆面した男が腰掛けていました。ショーンの眼つきが一気に変わって鋭くなります。
「誰だ」
「俺はアーサー。ベラリナ王女の護衛騎士兼、密偵さ」
覆面を外して、男は木からしゅっと飛び降り、ケイトとショーンの前に立ちました。ショーンがケイトを自分の背後に隠します。20代だろうと思われる、自信満々の顔つきの騎士がそこにいました。
「ジル」
「なんでしょう、お姫様」
「恋ってなんなのかしら?」
「まあ……」
ジルはくすっと笑いました。
「わたくしはちょっとだけだけど、あのガーティ子爵にイライラする」
「まあ……! ふふ、たぶんそれはお姫様がケイトのことを好きなんですね」
「ど、どうしたの、急に! そ、それほどでもないわ!」
「ふふ、お姫様可愛らしい」
お姫様――ニーナ嬢はプッと頬を膨らませました。
ローザが箒で床をはいていると、クリスが窓ガラスをトントンと叩く音がしました。今日のクリスは何か違うと思ったローザは、首を窓から出して、なあに、と尋ねました。
「いや、たいした用じゃないんだけど、俺みてらんねー」
「――何を?」
「貴族の奴とケイトだよ! お姫様の庭で……あんなことして」
「あんなこと? どんなこと?」
「抱き合ってるんだよ!」
ローザとクリスは目を合わせたまま、固まりました。と思いきや、ローザはぴしゃっと窓を閉じてしまいました。
「おい!」
ガラス越しに聞こえる声を無視して、ローザもまたほんのり頬を染めるのでした。
「夢ってなに? ケイト」
ショーンの腕をひしっと持って、ケイトは話し始めました。
「私……、私ね、綿菓子のように口の中に入れたらとけてしまうほどの漠然とした夢でしかないんだけど、おひいさまの侍女の仕事もとっても楽しいんだけど、田舎に、ミスランドウ地方に帰って、お母さんとお父さんに自慢できるような、小物屋さんを作りたいの。レース編みとか編み物とか得意だから……、だから、ミシンを買うのが夢なの」
「ケイトらしいね」
「――それでね、おひいさまのところへたまに行って、ボルドー色の小物をさしあげるの。生地はどこで買うといいのか……それは分からないんだけど……」
「…………ケイトが田舎に帰るなら、僕もミスランドウ地方に帰らないとね。葡萄を育ててお祭りにあげないと。僕が葡萄の世話をするからケイトは……。って、嬉しい夢だね」
ケイトは驚きました。えっ、と言ってショーンの顔をまじまじと見ました。
「どうしたの、ケイト」
「ショーンは家を継がないの?」
「継ぐより、ケイトのほうが大事」
「あ、あの……、それはどういう意味で……」
「ふふ。ケイト。僕と結婚してください」
ケイトは顔から火がでるほどで、指先もかたかた震えました。ケイトの正面にはショーンが居て、ひざまずいてケイトの手の甲に接吻しているではありませんか!
「ショ、ショーン」
ケイトが再び口を開こうとしたとき、
「なんとまあ。ベラリナ王女が聞いたとき、ガーティ家はどうなるだろうね? くすくす。追ってきて正解だったよ、ショーン・ガーティ」
庭の木に、覆面した男が腰掛けていました。ショーンの眼つきが一気に変わって鋭くなります。
「誰だ」
「俺はアーサー。ベラリナ王女の護衛騎士兼、密偵さ」
覆面を外して、男は木からしゅっと飛び降り、ケイトとショーンの前に立ちました。ショーンがケイトを自分の背後に隠します。20代だろうと思われる、自信満々の顔つきの騎士がそこにいました。
ステキなプレゼントがありましたヽ(≧▽≦)ノ
きゃ~プロポーズ!そして密偵!?
ラブサスペンスですか!ドキドキです♪
ジルも20代ですけど。
てかショーンは本当に14歳か?!――って思いました……。
続きどうなるんでしょうね?←
ドキドキしてもらって嬉しいです。