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鍵穴ラビュリントス

狭く深く(?)オタク
内容は日々の戯言
イギリス、日本、リヒテンシュタイン、大好きです
プラトニックlove好き

片付けしてたら出てきた私の薄い本

2015-10-16 19:09:37 | ヘタリアのBL小説
2つめ。
表紙は1つめの記事に載っています、ユイちゃんが描いてくれたのです、見てみてねぜひ。

sweet potato ❤ kiss
~焼き芋大会オールキャラ~



「ねえ日本~」
「はい」
「今日はいーっぱい楽しもうね!」
「そうですね」
 日本は同意しながらも、どこをどういうふうに楽しむのか分からずにひそかに頭を抱えていた。なにせ、イタリアと日本の二人は2週間後に控える焼き芋大会のためにこうして山に落ち葉集めをしに来ていたのである。その山はまだ朝が明けきってないかのように霧にかすんでいる。
(なにか出そうな雰囲気ですね)
「ドイツも可哀相だよねー、ドイツ、馬鹿じゃないからさ、風邪ひいちゃって。俺なんかはちっとも風邪ひかないもんね」
「え? あ、そうですね~。でもイタリア君も馬鹿じゃありませんよ?」
「えええっ」
叫びと同時にイタリアは岩につまずいて半分こけた。
「どうしたのです、そんなに驚いて」
「――なんか感動した……。だって、俺、みんなから馬鹿にされてると思ってた。兄ちゃんなんてすぐ俺のこと怒るし……」
(あー……。いえいえ、ここは日本男児たるもの、しっかりフォローをしてあげないと)
「ふふ、イタリア君はみなさんから愛されているのですよ」
「え、ええええええええーっ」
「今度はどうしました?」
「まさかぁ!」
「ほんとですってば」
 と、そこで霧から二人は抜け出した。
――バッ。チャキンッ。
日本は日本刀を構える。お気に入りの紫の刀袋が宙に舞ったかと思うとそれはイタリアの足元に着地した。
「イタリア君。下がっていてください」
「な、な、なにが起こってるの? ねえ日本!」
もうここでイタリアは木の棒を拾って、ハンカチを結び付け、白旗を作りだしていた。
「ここでイギリスさんでもいればよかったのですが……。私には雰囲気しか掴めません。相手の正体も知れません。でも、何かいることだけは確かです」
 遠くで雷鳴がきこえる。
「に、日本……」
「……?」
すると、日本の目の前にイギリスが現れた。
「お、俺のこと必要としてくれたのか……? 敵なのに……」
「イギリスさん! 何故ここに?!」
「うれしいとか、そんなこと思ってないんだからな! ただ今日のところはこれで勘弁してやるよ」
「なぜだい? イギリス。それにヒーローは俺の役目なんだぞ。勝手に決めるなんて許さないんだぞ!」
アメリカが現れた。
「じゃあお兄さんはイギリスとアメリカに反対ってことで」
また目の前にフランスが現れた。
「「意味わかんねえよ/わかんないんだぞ!」」
「まあまあ喧嘩はやめるよろし! 桃饅頭でも食うあるか?」
「魔法のステッキー」
「ぎゃあロシア! てめーもそういう危ないものはしまうある!」
なにやらパクついている中国と、水道管を持ったロシアが現れた。
「わ、わ、なんでもするからぶたないで~!」
イタリアは白旗を一生懸命ぶんぶんふりつづけている。


「だいたいみなさん、なんでおそろいなんですか?」
 日本が刀を刀袋にしまい、もっともな疑問を口にした。
「ふふふ見ろ! ハリー○ッターから借りてきた透明マント!」
「イギリスが焼き芋大会の落ち葉集めを枢軸だけに任せてはおけないって、駄々こねてね。ふぅ、お兄さん疲れちゃったよ、こんなとこまで登ってきて。もっと下のほうでもよかったんじゃないの?」
「HAHAHA、若い俺にはこんな苦労たいしたことないんだぞ! それよりイギリス! きみは俺の補佐をするってことになっていたじゃないか。勝手な行動は禁物なんだぞ!」
「しょうがないだろ。日本が俺のこと必要としてくれたのだから」
「何言っているのかさっぱり分からないある」
「ねー。でも僕はこういうの好きだよ? みんなで仲良くしているのみると僕もみんなの友だちになれた気がして」
「私の感じた違和感は連合のかたたちだったのですね……はあ。天狗や魔物の類が出たらどうしようかと思いました。これでイギリスさんもいるし安心ですね」
「に、日本……///」
イギリスが日本に接近して日本の手を優しく両手のひらで抱えこんだところで、コツコツという足音とともに聞き慣れた声がした。
「何が安心だ! 連合に囲まれてしまっているではないか! ゴホゴホッ!」
「あ~ドイツだぁ」
風邪をひいているはずのドイツが来ていた。


[中略]


「フランスさん! いつからいらっしゃったのですか――ってその薔薇の花はいったいどこから?!」
「うーん、いつからだろうねぇ。あ、これはいつも携帯してんの」
「てめーも薔薇、口からはずすよろし。唇に棘が刺さるあるよ。だいたい薔薇くわえて喋れるやつはめずらしいある、我のうちの動物園まで連れて行くある」
「「勝手にひとを動物園にいれないで~!」」
「ははは、こいつが檻に入れられているの見てみたいぜ」
「むきー! お兄さんいよいよ怒ったよ! 日本にそこまで見惚れさせる眉毛、全部ひんむいてやる!」
「こちらこそまた百年フルボッコにしてやるよ。かかってこい」
「あー! 日本!」
「どうしたのです、中国さん急に」
「栗の木を探すある! 甘栗食べたくなってきたある! というか売りたくなってきたある!」
「売りたく?! まさか中華街ですか? あの押し売りはひどいと思います! 私なんて断るの下手なんでいつもいつも買わされちゃいます……」
「断る? そんなことしねーほうがいいあるよ。甘栗美味あるよ」
 日本が逆らえず中国とともに栗の木を探そうとしたとき――日本は、イギリスがうっかり置きっぱなしにしていた透明マントをみつけた。


[以下略]


どうも、お読みくださってありがとうございました!


いっぱい出てきた私のヘタリアの薄い本

2015-10-16 18:35:26 | ヘタリアのBL小説
今日は片付けをしました。
すると。
いっぱい出てきた、私のヘタリアの薄い本。
(薄い本=同人誌)

いやーコピー本だから全然売れなかったけど、どれも5冊は売れたけど、ちょっと昔になってきましたので、1つずつ冒頭部分だけブログに書きます。

表紙はこれ。
クリックで拡大↓(戻るときは×を押さないで戻る矢印← を押してね)



まず1つ。


constellations(意味:星座)
~魔術部から天文部に移ったイギリスさん~


「サンタラ バータラ ウィンザーナーナラ、 ウォンパー トーラダ インテラカンテラ。サンタラ バータラ ウィンザーナーナラ、 ウォンパー トーラダ インテラカンテラ」
 ここはW学園。世界中の国が生徒として集まるという、あの噂のW学園。
「おや、アーサーさん」
「げ、本田」
 アーサー・カークランドはローブを羽織ったまま、慌てて本田菊のほうを振り向いた。アーサーの足元には、淡く金色に光る魔法陣が敷かれている。
「ん? 何か焦げくさいような……」
「スコーン焼いてたんだ。食べるか?」
「善処します。けど、オーブンも火打石も見当たりませんが……」
「魔法だよ。俺、なかなかうまくなってきたんだ――って秘密だからな! 今のは聞かなかったことにしてくれ。ああ、お前らに言ったんじゃない、本田に言ったんだ」
アーサーはそうして空中に手をやって空気をなでなでする。
「妖精さんですか?」
「ああ。ここにいるのが、ピクシー、そして親指トム、ブラウニー、ってブラウニーくすぐったいって、で、ここにいるのがユニコーンだ」
「分かりませんってば」
「あ、そうだ、あとで本田の部屋に遊びに行ってもいいか?」
「部屋に? 何しにですか?」
「それも秘密だ」
「アーサーさん……秘密、秘密って多すぎますよ! そうだ、この秘密のコスプレ部からいったん退部しましょう。私と一緒に部を作りませんか?」
「えっ。それは困る。俺には魔術部が必要不可欠なんだ。って、今のも聞かなかったことにしてくれ。コスプレ部でいい」
「魔術部、でしたか……」
菊はキラキラと輝く顔をアーサーに向けた。
「素敵です、アーサーさん」
「そ、そうか? ちょっとうれしいなんて、これっぽっちも思ってないんだからな! でも……、お前と部を作るの、悪くないな。掛け持ちってことなら承諾するぜ」
「ほんとですか! 私も新聞部をやめることはできませんし、掛け持ちで構いませんよ」
「で、何部にすんだ?」
「そうですね……、天文部なんてどうでしょう?」

 こうして、二人は天文部を秘密裏に作ったのだった。


 天文部のやること。その一、望遠鏡での星の観察。その二、星座山の手。その三、プラネタリウムでのギリシャ神話の公演。
 星座山の手とは、全天の星座を順番に書いていって、ちゃんと揃うかどうか確かめる遊びだ。
 まず、二人は部費で望遠鏡と室内型プラネタリウム機と星座早見盤と星座の本と星座のギリシャ神話の本を買ってきた。
「星座山の手が難関だと思いますね……」
「なにせ88個もあるもんな!」
「レチクル座なんて意味わかりませんよ。

[以下略]

――――あ~懐かしいな。あの混みあった会場。流通センターだったっけ。

次の記事に、2つめ、焼き芋大会編を書きます。

constellations プロローグ

2014-02-10 03:53:13 | ヘタリアのBL小説
明日のふた茶4に出す「Constellations」のプロローグです。
昨日公開する予定が、すっかり眠くて忘れていました。ごめんなさい。

pixivとここでしか公開しないので貴重(≧m≦)

毎度のことですが、BLが苦手な方、BLの意味が分からない方は閲覧をお控えください。
……逃げましたね?!

今回は枢軸だけ出てきます。
独伊も出てくるので、それが苦手な方も閲覧をお控えください。


ではどうぞ!







Merry Christmas

 12月24日――それは世界中の幾多の人々が胸を高鳴らせるとき。そう、国も例外ではなく――。
「菊から聞いたんだけどねー」
 そう話を切り出したのはフェリシアーノ。W学園に通う二人、フェリシアーノとルートヴィッヒは二人で街中を歩いていた。
「なんだ?」
真面目にルートヴィッヒが応答する。
「菊、最近、好きなひとができたんだって……」
ルートヴィッヒは目を丸くした。瞳を右往左往させて、ちょっと頬を赤らめながら、静かに尋ねる。
「誰なんだ、それは?」
「……それがそれがっ」
「うん?」
「あの、カークランドなんだよ!」
「……なに?!」
「びっくりだよね……びっくりだよね……。でも、菊も俺たちみたく、幸せになれるといいね」
そう言いながら、無垢な瞳をルートヴィッヒに向ける。ルートヴィッヒは優しい声音で言った。
「ああ、そうだな」
そうして唇を重ねる。
「ん」
しんしんと霙(みぞれ)が降りはじめた。


 その頃――。
「どうしましょう」
菊は独り、自分の部屋で布団にもぐって頭を抱えていた。
「アーサーさんの姿を見るだけで、惚れ惚れします。アーサーさんが誰かと話しているのを目にほれすれば、何を話しているのか、相手のことをどう思っているのか、気になって気になって仕方なくなってしまいます。アーサーさんが独り言を呟いているときだって、なんだかそわそわしてしまって……。アーサーさんと話していると楽しいです。でも、アーサーさんのどこが好きなのか、分かりません。ああ! どこが好きなのか分かったら、それを一つ一つ打ち消して、こんな想い、すぐにでもなくせられるのに。新聞部で活動しているときだって、――だって、アーサーさんが逆ナンされていないか不安になります。部活が同じだったらもっとアーサーさんのこと知れるのに……。はっ。それでは何気なく誘ってみましょうか……」
布団を引き寄せて頭まですっぽりかぶる。
 この想いが実るのはあともう少し。あともう少し、待たなければならなかった。


雨が降っていてもいなくても 後編

2014-01-29 11:56:24 | ヘタリアのBL小説
ヘタリアのBL夢小説、第2弾後編!
私の本命、朝菊(英日)で昨日からお届けしております(*´▽`*)
実はヘタリアのBL小説としては処女作。

BLが苦手な方、BLの意味が分からない方、お逃げください!
まあぜんぜんエロくないですけど。
逃げましたね?!

では、どうぞ。。。





つづき


 今日もまた雨。
 窓の外は雨。雨が降ってる。物語の終わりに、こんな雨の日、似合いすぎてる。
(だけど。私たちの物語はこれで終わりません)
「菊……!」
「おはようございます。アーサーさん」
「おはよう。そっか、俺、あのまま…」
「はい」
菊は笑った。その笑顔を見て赤面したアーサーが、
「う、うれしいとか、そんなこと思ってないんだからな! ばかぁ!」
と叫ぶ。
「私はうれしいです」
「……/// 帰る。これで本当にお別れだ」
「いいえ。私がそうはさせません。アーサーさんのこと、大好きですから」
「え」
「戦争が終わったら、また私と恋人として付き合ってくださいますね?」
「――ああ」
満面の笑みのアーサーが、少し恥ずかしげに毛布をもつ菊の黒髪をなでる。
「再会を必ず」
「……はい」


 薔薇の花束をもってきて、この日、彼はやってきた。
「菊。いるか?」
「――アーサーさんっ」
 今日の天気は晴れ。1945年8月16日、再びまた二人は逢った。
「いい香りですねー」
「菊んちは暑いな……、俺の為に、俺んちからとってきた薔薇だ。イングリッド・バーグマン」
「ありがとうございます。うわあ、綺麗ですね…!宝石みたいです。なんだかもったいない気がしますね…」
「どうしてだ?」
「なんとなく。ふふっ」
戦争が終わって破顔一笑する菊に、アーサーは頬を染める。
「また会えてうれしいとか、思ってないんだからな!」
だが、その顔はうれしさに満ち満ちている。
「私はうれしいですよ? 再会を必ず、って言ったの、アーサーさんじゃありませんか」
「うっ……」
「今日は天気がいいですから、外でお茶をたてましょうか」
「おっ、いいな」
アーサーの顔が、ぱっと明るくなる。
「ぽちくんも連れてきましょう」
「菊……お前、心、変わってないな?」
「もちのろんですよ。そういうアーサーさんこそどうなんです?」
「う、訊くな!」
「ふふ、可愛いんですから」
「///」
「くぅーん」
「あら、ぽちくんはお外に出るの嫌ですか」
「そう言っているのか?」
「はい。じゃ、私たち二人だけでデートしましょうね」
「デ、デートいうな!」
「あはは」


「謝らなきゃいけないことがある。2月に行われたヤルタ会談。俺の上司というかチャーチルが、イギリスとアメリカとソ連で協定を結んだ。そのためにソ連は日ソ中立条約を破棄した。それで、アメリカの馬鹿に原爆まで落とされたあげく…、千島列島を巡る問題が生じてしまっただろう。すまなかった」
アーサーは深々と頭を下げた。
「そうですね……」
菊は茶筅の動きをいったん止めて、緋毛氈の椅子よりも下の空間をぼぅっと眺めた。微妙に泡立っていた抹茶の泡が小さく弾けていく。
「でも、アーサーさんのせいじゃありません。私たち日本も戦争を引き延ばしていたのが悪かったのです。ソ連とは……これから難しい局面に入っていくでしょうね……」
菊は顔をあげた。その顔は愛しさでいっぱいの顔だった。
「私はアーサーさん、貴方が大好きです。これは昔も今も変わりません。今日くらいは戦争のことを忘れて、のんびり過ごしましょう?」
「菊……」
菊はまた茶筅を動かし始めた。


 窓の外は雨じゃない。

  誰もが物語 その一ページには
  胸はずませて はいってゆく
  ぼくの部屋のドアに 書かれていたはずさ
  『ささやかな幸福の』 物語だと

 二人の物語は始まったばかりである――。





―おわりに―

【雨の物語(イルカ)】
  化粧する君の その背中がとても
  小さく見えて しかたないから
  僕はまだ君を 愛しているんだろう
  そんなこと ふと思いながら

  窓の外は雨 雨が降ってる
  物語の 終わりに
  こんな雨の日 似合いすぎてる

  誰もが物語 その一ページには
  胸はずませて はいってゆく
  ぼくの部屋のドアに 書かれていたはずさ
  とても悲しい 物語だと

  窓の外は雨 あの日と同じ
  肩を濡らした 君が
  ドアの向こうに 立っていたのは

  窓の外は雨 雨が降ってる
  いく筋もの 雨が
  君の心の くもりガラスに



【お知らせ】

2月11日の英日オンリーふた茶4にサークル参加します!
スペースI06です。
内容はディープキスありますが、その先にはいきません。
アーサーと菊が秘密裏に天文部を作って……?
というお話です。
よろしければ覗きに来てください(≧▽≦)
2月11日の前にそのお話のプロローグ載せますね!

雨が降っていてもいなくても 前編

2014-01-28 09:00:06 | ヘタリアのBL小説
ヘタリアのBL小説、第2弾!
今回は本命、朝菊(英日)(≧m≦)ぷぷぷ
実はヘタリアのBL小説としては処女作。

BLが苦手な方、BLの意味が分からない方、お逃げください!
まあぜんぜんエロくないですけど。
逃げましたね?!

では……






☆雨が降っていてもいなくても☆


※1970年代のヒット曲「雨の物語」(イルカ)をもとにして作りました。イルカは「なごり雪」が有名ですよね。
 「雨の物語」……悲恋なのに叶う恋の物語にしちゃいました、てへ。
 YouTubeにものっているのでよかったら聴いてみてください。






「窓の外は雨~♪ 雨がふぅってる~♪」
「フェリシアーノ君。陽気ですね」
「菊もほら、歌おう。星がでてる~♪」
「……なんだかいま、めちゃらくちゃらな歌のように聞こえたのですが……」
「当たり前だよ。だっていま、俺が替え歌作ったんだもん」
 ここは日本。
 本田菊のうちだ。
 イタリア人のフェリシアーノ・ヴァルガスと菊は、午後から菊の家で茶道を楽しんでいた。フェリシアーノがどうしても抹茶が飲みたいとやってきてしまったのだ。
「はあ…フェリシアーノ君、できましたよ」
「お茶菓子おいしかった!わあい!」
「まず飲み方を教えますね」
 窓の外は雨。
 露時雨がしとしとと降っている。
 ――そんなときに彼はやってきた。
「菊……いるか?」
「わ、アーサーさん!」
「わ、ってなんだ、わ、って。はあ……雨の日って憂鬱だな」
雨をコートからはたきながら、そこでため息を吐いているのは白皙の美男子、アーサー・カークランド。
「そうですか?」
「なになに~」
ひょっこりフェリシアーノが顔をのぞかせる、と思いきや一気に飛びのく。
「うわ!カークランドだ!なんでもするから叩かないで~」
そして、どこからともなく取り出した白旗をぶんぶん振り回す。
「あ゛? 今日は戦いに来たわけじゃない。つーか飲み終わったらお前帰れ」
「なんで俺が抹茶飲んでるって知ってるの?」
「口、鏡で見てみろよ」
アーサーはイギリス人だ。どすがきいた声音が怖かったのか、フェリシアーノは携帯電話を取り出した。
「ひええ~ルートぉー、助けてよーカークランドがいるんだよー」
『フェリシアーノ!いま休戦中だろ。ちょっとのことで電話するな!』
携帯電話のむこうから、ドイツに住むルートヴィッヒの怒鳴り声と鳩時計のぽっぽっという鳴き声が、菊とアーサーのところまで聞こえた。



「わーん」
「アーサーさんもお茶、どうですか?」
泣くフェリシアーノをよそに、菊はアーサーを家に迎え入れた。
「え、いいのか?」
「もちろんですとも」
「お、俺、じゃあ帰るね! カークランド怖いよー」
「本人の前でよくそんなことが言えるな…あきれてもう何も言えねえ」
「はい。本日はまことにありがとうございました。またいらっしゃってくださいね」
 菊はうきうきした気持ちで再びお茶をたてる。
(私ったらどうしたんでしょう。アーサーさんが来るといつもそわそわしちゃって……)
「なんか菊の様子見てるとほのぼのしてくるな」
(ギクッ)
菊は赤面したまま、アーサーのほうをちらり見遣る。この金髪の美男子は、眉毛だけ妙に太くてそこがとても可愛くて。
「このお茶菓子おいしいな。柚子餡か。だけど甘みがなんかいつもと違うような気がするんだよな……」
「さすが、アーサーさんです。蜂蜜を上新粉に混ぜて作ったお菓子なんです」
「おー」
「アーサーさんに喜んでいただければ私、幸せです」
「うんっ、うまいぜ」
「ではお茶をどうぞ」
「ありがとな、菊。いつも、敵の俺を気遣ってくれて……」
「……?」
「今日来たのはこれを言うためだ。俺は――、俺は、お前のことが好きだ。その……、男子間の友情よりも…って俺だけか」
「え……」
菊は目を見開いた。アーサーとは日英同盟が失効した今でも親しく交流していた。そして菊は、アーサーのことを同性とはいえその美しさに惹かれ惹かれて恋愛対象として見てしまっていた。そのアーサーが、いま、何を言ったのか、菊にはとっさには理解できなかった。
「けっこうなおてまえで」
そう言うとアーサーは茶碗を置いた。
「夕べ、考えたんだ。別れよう……って付き合っているわけでもないし、変か。俺たちは敵同士にもうすぐ戻る。だから俺はもうお前の家に来ないし、お前も俺と喋らない」
「そ、そんな……」
急な物言いに菊は絶句するほかなかった。そんなの嫌です、心ではそう思っているのに、それが言えなかった。
 玄関で靴を履いてアーサーが外に出る。
「あ、あの、アーサーさん。せっかくだし庭を廻りませんか?」
やっと吐いた言葉は空気のように薄れていた。しかし、アーサーは聞き返すこともなくその言葉を拾ってくれていた。
「――せっかくだし見納めに見ておくか」
(そんな悲しいこと言わないでください……)
「あ、でも雨か。でも、雨の中、見て廻るのも風流でいいな。案内してくれ」
「は、はい!」



 もみじが真っ赤な色をさらに赤く染めていた。
 小菊の群れが重そうに濡れている。
 鹿おどしがカーンと鳴り響くその音が、雨にうずもれていつもより遠く聞こえる。
 傘に落ちる雨音がさびしさをつのらせていく。
 ななかまどの実をつけたその枝をときおり折れば、彼との道筋が分かるから。
「なんで枝折ってんだ?」
「はは…どうしてでしょうね」
「菊……? お前……、泣いているのか?」
(ギクッ)
菊は慌ててアーサーから顔をそむけた。
「雨粒、ですよ……」
「――傘かぶっているのに?」
「ええ」
 開き直った菊は涙をうっすら浮かべた瞳のまま、アーサーのことを見上げた。不安定に揺れる珠が一つくずれ、頬をつたってゆく。
「貴方と一緒に私がいたことを忘れたくなくて…」
言の葉は自然に出てきた。アーサーが涙の痕を指先でそっとぬぐってくれる。
「泣くな、菊……」
「私も貴方のことが好きです。もう会えないなんて言わないでください……」
ひらりはらり一葉ずつもみじが雨に散る。
 と、いつのまにか繊細な指先で菊はあごをアーサーに持ち上げられていた。アーサーのことをひたと見つめる。すると涙がどっと溢れてきた。
「菊」
「はい」
「俺のものになってくれるのか……?」
「はい。喜んで」
優しいその接吻は、甘酸っぱい柚子の味と濃い抹茶の味がした。




つづく

――といってもクライマックスはここ。



載せちゃいます☆

2013-12-29 07:41:09 | ヘタリアのBL小説
pixivに載せているBL小説を載せちゃうことにしました!
ぜんぜーんエロくないBL小説です。BLが苦手な方、BLの意味が分からない方、お逃げください!
ではでは、ヘタリアのBL小説、第一弾はこちら!




初めての朝のジャガイモ事件

※お花夫婦(独伊)の夢小説です。
マイピクの方とのリレー小説ですので、これまでのあらすじを紹介しておくと、
イタリア(フェリシアーノ)とドイツ(ルートヴィッヒ)は結婚したが、その生活はラブラブ生活というよりどたばた生活である
って感じです。



「ヴェ。あれ? ここ……あ!」
 朝、目覚めたフェリシアーノは大声をあげた。
「起きたか」
「ヴェ!」
隣ではぱっちり眼を開けたルートヴィッヒが、フェリシアーノのことを愛おしそうに見ていた。それにひかれてフェリシアーノも自然と笑顔になる。
「ね、ねっ。俺、ルートに起こされなかったよ?」
「ああ。びっくりだな」
ルートヴィッヒはくすりと笑う。実際のところ、ルートヴィッヒはフェリシアーノの天使のような寝顔に惹かれて、それが正式に〈俺の〉になった嬉しさをかみしめていて、起こすことをすっかり忘れていたのだった。
 さて、二人は起きて、朝ごはんの仕度に取りかかった。まず、フェリシアーノは菊からもらった割烹着を着て、パスタを茹ではじめた。
「ふふん♪ パスタ、パスタ~」
「俺は……、その……ジャガイモはあるか?」
ルートヴィッヒが腕まくりしてそう言う。
「ジャガイモなら、あっちの籠の中にあったよ!」
「そうか」
ルートヴィッヒはジャガイモを2つ、手にもって、これを茹でていいかとフェリシアーノに尋ねた。
「いいよー♪ 俺、バジリコ、ベランダから摘んでくるから勝手にやっていて!」


「ルートぉ~ルート~、あのね、ファルファッレがいた!」
「春だからな。何色の蝶々だ?――というか」
「白色~っ」
「――フェリシアーノぉぉお! パスタもういいんじゃないか?!」
「わ、わ、大変! ルート、早く火を止めて!」


「ふー、あとは、バジリコ切ったからオリーブオイルとパスタをあえて……かんせーい♪」
 食卓には、バジリコパスタと茹でたまるごとのジャガイモが乗った。
「いっただっきます」
パスタをフォークに巻き付けたフェリシアーノは、向かい側に座っているルートヴィッヒを凝視した。
(な、なにあれ?!)
そこでは熱心にルートヴィッヒがジャガイモをフォークの背で潰している姿があった。
(なんかの儀式? ドイツ人はまったくなにをしでかすか分からない)
自分のことは棚に上げて、フェリシアーノは胸を高鳴らせてルートヴィッヒを見つめた。
「む……な、なんだ?」
「な、なんでもない、なんでもないっ!」
フェリシアーノは慌ててフォークに巻き付いたパスタを口に入れた。
(危ない、危ない。儀式中に邪魔をしちゃいけないって、たしかローマ爺ちゃんが昔読んでくれた絵本に書いてあった。さもないと呼び出された霊が俺にとりつくかもしれないって……!)
 フェリシアーノは黙々と食事を続けた。ルートヴィッヒが何か言ってもうなずくか首を横に振るかどちらかで、上の空だ。ちなみに、ルートヴィッヒが言っていたことは
「パスタ、この硬さでいいのか? 俺はいいと思うぞ」
「バジリコがうまみをひきだしているな」
「お前、なんでジャガイモを食わない?」
――だった。

「フェリシアーノおおお!」

 ルートヴィッヒが怒鳴ったところで、いいかげんフェリシアーノのほうもビクッと肩を揺らした。
「……な、なに……?」
すると、ルートヴィッヒは顔をそむけた。
(え! もしかして、儀式、失敗した?!……それを俺のせいにしようとしてる、と考えると…………、でもありえないよな、だってルートいつも俺に優しいもん。ほら、あのときだって――)
フェリシアーノは自分に告白する直前のルートの様子を思い出した。


『ルート、みて! じゃーん。俺が作った欲しいものリスト』
『だ、誰に頼むんだ……?』
『え。……もちろんサンタさんだよ?』
『どれ。見せてみろ。――パスタ(フェデリーニ、スパゲッティ、スパゲッティーニ、ラザニア、フィットチーネ、リングイネ、ブカティーニ、リッチャレッレ、ファルファッレ)、白い布きれ、木の棒(ちくちくしないもの)、絵の具各種』
『へへ』
『フェリシアーノ。これなら俺がそろえてやる。わざわざサンタクロースに頼むことでもないだろう。俺が用意してやる』
『えええ! ほんとに?』
『ああ、安心しろ』
『ルートに頭の毛撫でられるとなんだか安心する……。嬉しいなあ。パスタ、種類ごとに違う鞄につめこむんだ、それが俺の夢』
『も、もっと、壮大な夢はないのか?』
『ヴェ、たとえば?』
『――ん、そうだな、俺は、お前と一つ屋根の下で暮らして、朝も昼も夜も、お前とずっと一緒に居たい』
『…………?〈←告白されていることに気づいていない〉』
『こ、こほん。とにかくだ、えーと』
 ルートは俺の両手を手にくるんだ。12月の寒さの中、それはひときわあたたかだった。クリスマスツリーのライトの照らす中、ルートは俺に告白した。
『お前が、好きなんだ。結婚を前提に付き合ってくれないか?』
『お、俺……!?』
『ああ』
ルートの顔は真剣そのものだったから、俺は少しばかり、たじろいたけれども、よくよく胸に手を当てて考えてみたら、俺こそがルートのこと、好きなんだ、って解った、それも大大大好きなんだと。
『俺……、サンタさんに頼むもの決まったよ!』
ルートは驚いたのか目を見開いて首をかしげた。
『ルート! 俺、サンタさんにルート頼む! ね! いい案でしょ?』
――――そうして、俺たちは12月25日に付き合うことになったのだ。





「どうしてお前はジャガイモを食べてくれない……」
 その声はいつものルートヴィッヒとは打って変わって湿っぽかった。
「え? え?」
フェリシアーノは慌てた。確かに、ルートヴィッヒの“儀式”のせいでジャガイモには心的距離を置いていた。
「だって、だって、ルートが何かフォークで占いやっているからでしょ! カークランドになっちゃうじゃないのさ。ああ~、やだーやだー、考えるだけで寒気が」
「占い……? 何を言っているんだお前は」
(やっとルートが目を合わせてくれた)
フェリシアーノはほっとした。

「ジャガイモは潰して食べるものだろう。フォークの背で」

「………………え?」
フェリシアーノは口をポカンとあけた。




「儀式だとばっかり思ってた……」
「儀式や占いなど、だいたいこの俺がするわけないだろう!」
「そ、それもそうだね! あはは……」
 フェリシアーノも倣ってフォークの背でジャガイモを潰して食べてみた。
「いたって普通なつぶれたジャガイモ……」
 空は快晴。
 今日は、デパートにでも行くか、とルートヴィッヒは思った。