今回は『万葉集』というより、そのあとの文学のお話になります。
●古今和歌集(905年)
ウメの香りが好まれるようになる。
ウメの香りを詠んだ歌は、30首。
鑑賞が色ではなく香りにうつる。
色よりも 香こそあはれと おもほゆれ 誰(た)が袖ふれし 屋戸の梅ぞも
[作者]詠人しらず
状況と訳:作者 (男性か?) の家にあった (女性により?) 梅の花が手折られたのだろう。
「花の色より香りの方が心に沁みたのためだろうか、私の家の梅の花が手折られている。手折られた花は誰の袖に入っているのだろう」
花が「袖ふれし」とは「手折られる」の、そして、さらに一歩進めれば、「袖に入れられる」の婉曲語法だろう。(「nouse」さんから引用)
●西行『山家集』
この春は 賎(しづ)が垣根に ふれはひて 梅の香とめん 人親しまん
[作者]西行
訳:この春は、静かに垣根に触れるように梅の香りがただよっている。(それに)人がつられてやってきたようだ。
●源実朝の暗殺された日の朝詠んだ歌
出でいなば ぬしなき宿と なりぬとも 軒端(のきば)の梅よ 春を忘るな
[作者]源実朝
『北条九代記』に載っている。
訳:わたしが立ち去って主人のいない家となっても軒端の梅よ 春を忘れず咲いておくれ
暗殺された日っぽいですね(汗)
●定家『明月記』
『明月記』は定家が19歳~74歳のことを書いた日記らしいです。
1、八重白梅
2、白梅
3、八重紅梅
4、紅梅
5、薄紅梅
6、早梅(早咲きで1月下旬開花)
庭に6種類もの梅を栽培していたようです。
これで「古典とウメ」シリーズを終わります。
お付き合いくださり、誠にありがとうございました。