かたむく暗箱

空想の暗室

透明の板がブロック塀に

2005-12-23 22:37:07 | 写真と虚言
透明の板がブロック塀に打ち付けてあるのだが それは掲示板ではないらしく 何か張り付けられた痕もなく 稚拙な男の性器が一つ 釘か何かで引っ掻いて 悪戯描きされていた 隅っこにある 小さく悲しげな猥褻 
カメラのシャッターを切り フラッシュがぼくの眼に薄暗く撥ね返る 爆発しない 寂しい光景 
近所の住人であるらしい女の影が 辻に身動きせずこちらを窺っている 街灯の逆光を受けながら 灯りは ぼくの顔まで届いているだろうか 冷たい風に皮膚がこわばり 艶のない顔には怖ろしさなどなく きっと寂しげで 死に神にとり憑かれた哀れさを漂わしているだろう
鋭い風に圧され ぼくの影が動く 女の影は徐々に小さくなり ぼくが辻に立ったとき 街灯はぼくの影を 弱々しく照すばかりで あとは 何もかもすっかり消されていた

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