コーンポタージュの空き缶が逆立ちしていた 低いブロック塀のてっぺん 剥げた掲示
板の前 遠い外灯の微光を受け ぼやけた投影図を二重三重に作っている それが路
地の入り口
夜になると その狭い狭い路地が寒さに震える 早足で歩く誰もが 夜の短い一直線を
抜け出せず 夜が明けるまで不思議な迷路の一点を 歩きながら立ち止まっている
「あのコーンポタージュは誰が飲んだのだろう?」
目覚めると 夢の中ではそればかり考え 答えがでず この短い路地から抜け出せな
かったように思える よく凍え死にしなかったものだと 一瞬軽い目眩がする
時には 蒸し暑い日もあるというのに
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