*
さまよう 遠足の帰り
友だちの家を出ると
雨が降っていた 夕暮れ
わたしは わたしの家を見失い
出会ったことがあるはずの
風景の囲みの中を 歩きつづけた
*
宙に浮く きおくが
きおくのなかの
かんかくが
じゅうしんなく
まよいごのように
*
右が左なのか 左が右なのか わたしは
わたしの みぎが
わからない
わたしは
あなたの ひだりが
わからない
*
私は 私ではないらしく あなたの わたしが
わたし なのか
*
満月の 哀しみ くるおしさが
ちていから みちみちて
こきざみな ふるえが
やまない
*
わたしは ころした おのを ふりあげ
ふりおろし
なんど
おやを ころした
こを ころした
*
触れようとしても ものがたりが
うまれてこない
*
求められない とざしているように みえて
さわいでいるように みえて
もとめられないから
このように あるのです
*
病んでしまった あのひとも
このひとも
すいこんでしまう
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ひずみは ここにあるのか 進化させつつある
風景の 老体