かたむく暗箱

空想の暗室

孤独な老人 

2005-11-30 21:47:40 | 写真と虚言
孤独な老人 家庭崩壊中の夫婦と子 4人が表情を押し殺し 気味悪く微笑み食卓を囲む それほど小さくもない食卓のある部屋は 狭く 眩しいほど明るい 
それぞれの茶碗に手早くご飯が盛られ お箸が配られる 食卓には他に食べ物が一切無く静かな食事が始まる 

荒れ狂う金属バット 空を切る音は鋭く 延々と続くかと想えた音にも疲れが見え、夫はふらふらと座り込む 妻が立ち上がり 金属バットを振り回す 疲れた妻がへなへなと座り込むと 子が立ち上がり力一杯金属バットを振り回す 案外と持続力無く子は倒れ込み 最後に老人がふらつく身体を立てる 細かに震える金属バットは柔らかな光に射し込まれ 水平に振り回される 夫婦と子が血塗れになって眠っている部屋はやはり眩しいほど明るい 

破り裂かれ垂れ下がった襖紙は裏返っていて それは異様に白く 小さなパンダのシールが1つ貼ってある 裂かれた襖の内側は暗く 筒状の道(トンネル)は奥深い向こうから何かが覗いているように想える 
新聞配達が通り過ぎる 牛乳配達のトラックが通り過ぎる 朝日が手早く窓ガラスを通り過ぎていく 老人の部屋に異様な物音 夫婦が金属バットをそれぞれに持ち 襖を開けるとカーテンは朝日を遮り 薄暗闇が寒さに震えている やみくもにベッドの膨らみを金属バットでもって 数え切れぬほど叩きつける 悲鳴が小さく小さくなって とうとう消えてしまった頃 夫婦の額の汗は カーテンの遮りをすり抜けた光をきらきらと反射させる 「うっ」と足下から声が1つ それでも気付かぬ夫婦の脚を支えに老人が立ち上がる 右の耳には三角形のガラス片 流れる血 鼻からは言葉にならぬ声 途切れ途切れのその声に部屋は息苦しい 揺れるカーテン 揺れる 揺れる 零れる光 カーテンが開かれ 瞬時に光が押し寄せ 部屋が眩暈する 散乱するガラス破片 舞う乱反射 ベッドに眠っている子の鼻から血が流れている 美しい赤 
夫婦それぞれが写真を1枚持ち 亡くなった子を老人の顔に化粧し服を着せ替え 老人を子の容姿に作り替える 葬送 静かな朝 通り過ぎる新聞配達 通り過ぎる牛乳配達のトラック 一直線の道に夫婦と老人 老人として葬られる子 
霊柩車を見送る 子の姿にやつし ぐるぐると頭に包帯した老人の顔は 微笑みに固められている

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空に届きそうなガレ場

2005-11-28 21:27:12 | 写真と虚言
空に届きそうなガレ場 脚もココロもすくむ青色 
30度に傾いた石 それに直立しているぼくの触覚 
右脚を上げる 体重を支える膝の軋み ひ弱い筋肉の牽引 
「ウッ」と小さな声を発する重心と 崩れたバランスが色と色の隙間を覗き込む 
逆光に撥ねる白 その白の遠い向こうから 回旋塔が子供を振り落とし 
鈍い音が 転がり落ちる

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チョコレートを一つどうぞ 

2005-11-27 21:34:18 | 写真と虚言
チョコレートを一つどうぞ 
道草から戻れなくなったら 建ち並ぶ墓石の陰で 
こっそりと 一片の その半分を 
舌の上に溢れさせる 陶酔 
いつ 迷ったのだろう 
どこで 迷ったのだろう 
傘さした猫どもがひしめく 夕暮れ

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台地には遺跡があり 

2005-11-26 23:52:07 | 写真と虚言
台地には遺跡があり 窪みが幾つも見られた 
その1つに近付き覗き込むと 石を抱いたミイラが置かれていて 
干涸らびた命をまとっていた 
隣の穴にも 石を抱いたミイラが在って その隣も光景は同じだった 
夕日が沈む頃 空中にも窪みが出来たらしく 
その穴凹に身体を絡め取られたわたしは 
透き通った重しを抱きかかえ 夜を待った

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新しい命を もう一度

2005-11-25 22:33:46 | 写真と虚言
新しい命を もう一度生きるという 病 
ぼくは衰えに酔っぱらい ココロとカラダの迷路に 
無限大に拡げた恐怖の夢を 落書きする

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11月24日のほう

2005-11-24 23:36:33 | あんしつ
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風になぎ倒された身体が

2005-11-23 16:34:42 | 写真と虚言
風になぎ倒された身体が 空き缶のように転がる 道 
そのころ ぼくの眠りは生きておりました 

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遠い呼び声

2005-11-22 23:42:41 | 写真と虚言
遠い呼び声 ほんとうにそれは 言葉か 
風であるあなたは 街を駆け抜け 
疾走の息苦しさに 意識を手放す 
音と 音を 重ね
さらに音を 重ねても
あなたの声ではない 悲しみ

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子が妻になり 妻がわたしになり 

2005-11-21 20:29:47 | 写真と虚言
子が妻になり 妻がわたしになり わたしが子になり 
そのように ココロを引っ越しさせることは できるだろうか 
わたしが君で 君がわたし 
魂がそう感じた一瞬に 新しい生命の誕生があるのだとしたら 
わたしは魂の1つの遺伝子に過ぎないのか 
魂がわたしを棄て去るというのに 
わたしは 「わたし」をつくるのに悩み 
2重に3重に 「わたし」を着ようとする

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11月20日のほう

2005-11-20 20:49:00 | あんしつ
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