かたむく暗箱

空想の暗室

鎮守の森への一本道を

2005-12-04 17:10:22 | 写真と虚言
鎮守の森への一本道を わたしたちは歩いた 道に覆いかぶさる森の緑は退色して風に寂しく揺れていた 森の外れにはみすぼらしい長屋があって そこには知り合いの女性が住んでいるはずなのだが なぜか薄汚れた靴ばかりが思い出されて 顔がはっきり浮かんでこない 
「どうして この道を歩いているのでしょう」と Aさんに尋ねる 
「Tの結婚じゃないのか」Aさんは答えるが わたしには上手く飲み込めず 退色している森の ゆらゆら揺れる葉を意味なく眺めているしかなかった Tは既に結婚しているはずではないか 怪訝な顔が 森に転がる 
「おまえは女に縁がないからな 1週間ほど結婚するんだよ 別の女性と」 嫉妬が わたしの顔を拾い上げる 

わたしは Tの父親の部屋にいる ホームごたつに脚を突っ込んだその人は 新聞読みながら 
「女は紹介できんよ」と言ったきり わたしを拒む 

森を抜け出そうと 歌を唄う 
でたらめな歌を 呼吸する 

1
コメント