どシリアスなマヌケの日常

毎日毎日、ストーリー漫画を描き、残りは妄想.,いや構想の日々の日記。

「望郷」3 私ができること

2022-09-14 08:36:00 | 日記


父に会っても何も教えてはくれない。。。本当に知らないのかもしれない。とにかく分かったのは「私が自分でアオイを探し出すしかない」と言うことだけだと、あかりは思った。
もう一つやることがある。瑠美と葵が付き合っていた過去は「無かった事」にしなければ。。。

暗闇の中で、気を循環させながらアオイはルミのことがきっかけで私がキキに壊されてしまったことを自分のせいだと泣き乍ら悔いて居た。消滅した瞬間に全てを私は思い出した。
ルミが現れ精神錯乱を起こし、湯殿に落ちて気が瓦解したこと。キキとの暮らし。その後のこと。

昔、シンに「時鏡のかけら」で瑠美と葵が寝ている場面を見せられ、その時も私は錯乱して手がつけられなくなり拘束された。その時、アオイは人間だった時の女友達、佐々木瑠美の話をしてくれた。
きっかけは、大学の同期会の後、バーで瑠美から告白されたこと。付き合いは1年。最後は瑠美をひどく傷つけた。理由は、「愛せなかった。セフレ扱いした。」と言う事だった。
「僕がひどい事をしたのに50代になって友達に戻れた。奇跡だよ。」とも言っていた。

私は、自分が思っているより「葵の1年」に酷くこだわっていた。でも、それを口にすることはできなかった。その頃の私は、翔と結婚して子供を2人産み奥多摩にいたのだから。

シンとキキは同一人物だった。私の心の大きなこだわりを知っている。
キキは未だ捕まっておらず、高天原に帰れたとしても、また同じ事をされるに違いない。私のこの気の病の最も弱いところを利用される。
だから、瑠美と葵の過去は「無かったこと」にする。

あかりは、ずっと早川葵のそばにいて彼の行動を監視しようと決めた。
彼の近くにいるにはどうしたらいいのだろう。私は識字障害もある。クリニックで働くのは無理だ。


早川葵は、あかりという名の女と出会ったバーに行った。どうしても彼女にもう一度会いたかった。
すると、マスターが「先生、あかりちゃんとあの後どこ行ったの?」とニヤニヤして聞いてきた。このバー「L Gグレイ」は葵のマンションから近く、度々訪れていた。この前の夜まで数ヶ月は忙しくて来ていなかった。
「本当にあかりという名前なの?あの子」と葵が訊くと「うん。源氏名かもしれないけど。私には、そう言ったよ。3ヶ月前から毎日来て居たのに、先生と怪しい雰囲気で店を出た日から来ない。」と答えた。更に彼女についていろいろ教えてれた。
「3ヶ月前から、毎日9時半ごろ来てカンバンまで店の隅のテーブルに1人で座っていた。年は19歳。近くのクラブでホステスのバイトをしていると言っていた。飲むのはノンアルカクテル。いつもエロい服を着てるくせに男が話しかけても無視をしていたよ。それがさ〜。先生のそばに行って話しかけたから、私もびっくり!で?どこ行ったの?」
「マスターの想像している通り!」とだけ言って店を出た。それから、何度も店に行ったが、あかりは居なかった。

不思議なことに日が経つにつれ、葵には、あの夜のあかりの顔が思い出せなくなった。
葵が覚えて居たのは、2人のあかりの身体の感触が同じだったということと、ムスクの香りがしたということだけだった。

4に続く。。。