どシリアスなマヌケの日常

毎日毎日、ストーリー漫画を描き、残りは妄想.,いや構想の日々の日記。

「望郷」2 奥多摩

2022-09-13 07:38:00 | 日記


叔父の田中晃 45歳。

奥多摩、「水川神社」

このおおよそ人が来ないであろう山奥の神社がなぜ建てられたのか、あかりは知っている。ここは高天原と下界の接点なのだ。建立を決めたのは平成から500年前。決めたのはあかり本人だった。

あかりは、叔父の晃から「絶対に入ってはいけない」と言われていた蔵に入って叔父を待っていた。その間、平成元年の自分のことを思い出していた。
春に京都から家族で帰ってきた。直後、翔の母親が死んだ。。。その葬儀をきっかけに叔父は翔をここの神主にしてしまい、自分は早々に隠居してしまった。私は、3歳の光と1歳の海斗を抱え、徐々に体調を崩し始めていた。まだ、無理がきいた。来年起きる出来事で私は殆ど家事すらできなくなる。。。

突然、戸が開いて晃が入ってきた。
「あれ?あかり?今、具合が悪いと言って母屋で横になったはず。。。」と言うと、あかりの顔をじっと見た。
「アマテラスか。どうしたのだ。」
あかりの目つきが普段のあかりとは全然違う。

「私は、お父さんにお尋ねしたいことがあるのです。私は遥か先の時間から来ました。きっかけは消滅です。私の夫が透けるように消えてしまいました。私の病気を治すために夫は自分の気を恐らく全て私に注いでしまったのです。その瞬間、私は後を追いかけるように自ら消滅しました。気がつくと、こんな昔の時間にいました。」
「夫はカケルか?」「違います」

「消滅とは、このようなものだったなのですか?消えて無になると思って居ました。今の私は、人間の肉体も必要なく下界で実体化しています。神力もある程度使えます。人間の体ではないので太陽の光だけで気を取り込み生きています。この時間に来たのは3ヶ月前です。」
晃は黙って聞いていた。あかりは涙をこぼしながら更に言葉を続ける。

「追いかけてきたはずなのに夫は見つかりません。見つける方法も分かりません。私は夫と元いた時間の高天原に帰りたいだけなのです。お父さんならご存知のはず。教えていただきたいのです。」

晃は、しばらくの沈黙ののち話し出した。「透けるように消えるなど聞いたこともない。お前は自ら消滅できる。だが、消滅した在る者に私が会ったのはお前が初めてだ。私が教えられることは何も無い。お前は、どのくらい先の時間から来たのだ?」

あかりは「1000年単位の未来です。これ以上は言えません。過去は恐ろしいもの。過去を変えれば未来が大きく変わる可能性があるのですから。私もお父さんに申し上げることはありません。」と言うと立ち上がった。
「お父さんもセキ様と同じ。知っていても教えてくれない。忘れて居ました。私は自分で夫と共に帰ります。ここには、もう来ません。」あかりは、外に出る時、晃を振り返って「これだけは申しましょう。この『思し構い』は後40年以上続いて行きます。お父さんが手伝ってくれたことにお礼を申し上げます」
「アマテラス、赤色は?来るのか?」
「さぁ?」

あかりは、蔵の戸を閉めると境内を歩く田中翔を見た。


険しい顔だなと思った。大嫌いな「お化け屋敷」の当主にされて余程腹が立ってるのだろう。この後、母屋で寝ている私を罵りながら蹴りを入れるつもりなんだろうな。。。今のカケルとは別人だ。

人間にとって己の真の姿が見えた時からが始まりなのだ。
「こんなもんじゃないよ。カケル。お前の償いは。地の底を這い血の涙を流すことになる。でも、その後に本物が待っている。」

あかりを殺す翔、翔を殺すアマテラス。過去は、もう決まっている。


3に続く。。。