心の自由

被曝を最小限にして命を繋ごう!

<誰にでもある"被ばくを避ける権利">荒木田准教授に聞く 2013/10/30 野呂美加さんより

2014年05月20日 | 野呂美加

 

  野呂 美加さんFB 5/20 0:30

 

脱被ばくだああああ。本当に!

誰にでもある

誰にでもある"被ばくを避ける権利"~荒木田准教授に聞く

脱原発・新エネルギー2013年10月30日

http://www.data-max.co.jp/2013/10/30/post_16455_is_01.html

福島大学に勤務している荒木田岳准教授。自身も被災者で、2人の子どもは、新潟に避難させ、離れて暮らしてい...る。特に子どもたちにとって、線量の高い地域に住むことで、健康被害は出ないとしても、被ばくによって多大な精神的なストレスを受けることがある。
 政府は、福島への帰還を促進しているが、荒木田准教授は、「これからでも避難したいと思っている人は多く、被ばくを避ける権利は誰にでもある」と訴えている。被災地から声を上げる荒木田准教授に話を聞いた。

 ――脱被ばくを訴えている理由をお聞かせ下さい。

arakida.jpg 荒木田岳准教授(以下、荒木田) 脱原発よりも、まず、脱被ばくだと思っています。つまり、脱被ばくを突き詰めていけば、脱原発に至ることができるはずなのです。私は、まず福島に住んでいる人たち、とくに子どもたちの被ばくを減らす必要があると思っています。そのためには、福島に住んでいる人が声を上げなければならない。地元では「風評被害」を訴える向きが多いのですが、これでは実際の被害は存在せず、救済は必要ないという主張になってしまいます。本当に風評ならいいのですが、現地ではさまざまな体調の異変などもすでに報告されています。

 ――事故発生半年後ぐらいの時期には、除染作業に対する反発もあったとお聞きしていますが・・・。

 荒木田 2011年の5月から、京都精華大学、同志社大学、大阪大学の先生らとともに、線量計を持って、除染作業をしていました。自分は、被ばくするのを怖いと思っているので、怖々と除染作業をしていました。当時は、「除染しなければならないほど福島が汚染されているという風評被害につながるから、除染作業なんかするな」と言われている時期でした。
 11年の6月ごろ、大学の公用車を借りて除染作業に参加していましたが、その車がたまたまテレビに映って、大学の関係者から「市民の不安をあおることになるから、除染作業に参加するのはやめろ」と、言われたりしました。あのころ、行政や国が、今ぐらい積極的に除染に取り組んでいたら、少しは事態も違ったのではないでしょうか。まず調査し、その情報を共有し、現実を直視した上で対応するということが基本だったはずですが、線量が下がるまで待っていたようにしか思えないんです。だから、危機的だった時期のデータが少なく、リスク評価も自ずと甘くなるわけです。

 ――原発事故による汚染水問題の深刻化と、福島の復興の遅れについて、原因の共通点として挙げられるのが、「初動段階のミス」と、「リスクの過小評価」ですね。

 荒木田 事故が起こって早い段階で、福島は切り捨てられるという実感を持った。(民主党政権時代の)政府も福島に対して解決への気概も具体的方法も持っていなかったようだし、初動の段階で、学者や政治家は、「チェルノブイリと違って福島は大丈夫だ」などと言っていた。あの段階での事故対応にミスがあったと思う。とくに避けられた住民被ばくを、避けさせなかった、という点が悔しいのです。
 今後、福島の被ばく問題をどのように解決していくか議論するにあたって、リスク、被害が過小評価されてはいけないと思います。過去の経験に学べば、従来の福島事故対応のリスク評価は桁が違うくらいに甘いのではないでしょうか。そのことは、後でわかっても遡っては対応できないんです

――原子力市民委員会の出した政策大綱の中間報告のなかには、被ばくの問題を「被ばくを避ける権利」という人権問題と捉えた部分を盛り込んでいますね。

 荒木田岳准教授(以下、荒木田) 福島の問題と向き合うことなくして、脱原発はできない。つまり、脱被ばくの延長線上に脱原発があると、私は思います。原子力市民委員会の中間報告のなかには、"被ばくを避ける権利"として、福島の事態を人権問題と捉えて、打ち出しています。

fukushima.jpg 被ばくが危ないと思っている有識者は多いのですが、その人たちのなかにも、仮に「被ばくすると危ない」と声を上げて、"何も起こらなかったらどうしよう"という不安があって、慎重になっている向きがあります。でも、肝炎でもエイズでも、キャリア(保因者)になった時点で、今後いつ発症するかという不安とともに暮らさなくてはならなくなるわけです。その意味で、今回の原発事故でも、被ばくさせられた時点ですでに被害は発生しているんです。健康被害が出ていないから被害はない、というのは、当事者でないから言えるのではないでしょうか。2011年の秋口から、政府の方針は除染するから避難するなという方向でしたが、除染費用がかさむわりに効果が上がらないため、ついに昨日、IAEAは日本政府に「1ミリシーベルト目標にこだわらなくてよい」と意見し、除染もあきらめ、被ばく容認の方向に進もうとしています。「利益と負担のバランスを考え、地域住民の合意を得て決めるべき」なのだそうですが、そもそも、住民の生命や健康をコストと秤にかけるという発想が人権感覚を欠いていますし、「家計の負担」と「被ばくの負担」を対立させることが、被害者切り捨てにつながることを見越しているだけに悪質だといえます。

 こうした流れを変えていくために、原子力市民委員会では「人権問題」として、あるいは「人間の復興」という言葉で問題を捉え直そうとしています。

 ――アンケート調査などによると、子どもを持っている親たちの、約半分が今からでも避難をしたいという意見を持っているといいますが・・・。

 荒木田 福島市の調査では、今からでも避難したいと思っている親(中学生以下の子を持つ)が、過半数いました。別の調査でも同様の結果が出ています。こちらの調査では、避難しないと答えた人も、今の仕事をやめられなかったり、避難すると住宅支援が受けられなかったり、お金がないから避難できないという理由でした。子どもたちが、被ばくしてしまうのを心配しながら暮らしている人は多いのです。

 国や行政は、復興をアピールしたがっているが、現地の状況は少し違います。子どもたちの被ばくの心配をし、不安を抱えながら暮らしている人も多いわけです。仮に原発事故が収束したとしても、福島の問題は終わらない。このことはもっと知られてよいことだと思います。

――安倍内閣の政策は、国民、被災者の声を反映したものになっていない傾向にあります。期待された「子ども被災者支援法」も、基本方針では、幅広い被災者を支援できるものになっていません。

 荒木田岳准教授(以下、荒木田) 被災者支援法の基本方針が出されましたが、被災者の声を十分に反映したものではありません。避難を希望する人たちを救済する基本方針にはなっていないだけでなく、そもそも立法の趣旨を逸脱した基本方針です。これは支援法の条文と基本方針を読み比べれば自ずと明らかです。
 福島県が打ち出す政策も、「福島に残ってがんばる人」に対しての政策にしかなっていませんし、「被ばくは除染するから大丈夫。帰還を促進し、復興していきます」という結論ありきで物事が進んでいます。
 福島にいる人も相手の顔色をうかがいつつ、腹を探り合って、自分の意見をはっきりと言えない空気になっています。大学の中でも、街の中でもそうです。被ばくは避けた方がいいのに、当たり前のことを言えない雰囲気がある。声を上げなければいけない被害者が自ら「風評被害」を叫んだり、発言を自粛したりという風潮が、異論を許さない全体主義的なムードを作っています。そこで、「地域住民の合意」というのですから、自分たちの首を自分たちで絞めろというのでしょう。

 ――福島の脱被ばくを一歩、進めるには、他地域に住む人たちは、どうしたらいいのでしょうか。

arakida.jpg 荒木田 全国の福島あるいは関東・東北以外の地域の人たちは、よその話だから...と思っている人が多い。だから、市民の声として、全国的に機運が上がってこない。このままでは、福島の被ばく問題は切り捨てられるし、現に、政府は切り捨てようとしている。
 でも、福島で人々が被ばくを強要されながら暮らしているということが、自分たちにどういう問題として跳ね返ってくるかということを考えてほしい。そうすれば、おそらく「福島の人たちは気の毒だね」という話ではすまないことがわかってくるはずなのです。だから、「脱被ばく」が単に福島の問題ではなく、自分たち自身の問題なのだとわかったときに、この問題は大きく前進すると思うんです。人ごとではなく、これからの日本全体に関わる問題と捉えて、ほかの地域からも、余計な被ばくを避けることが大事だとの声を上げてほしい。私も、地元から声を上げていきたいと思っています。

(了)
【聞き手・文:岩下 昌弘】

<プロフィール>
arakida_pr.jpg荒木田岳(あらきだ たける)

1969年、石川県生まれ。一橋大学社会学部助手を経て、2000年より福島大学行政政策学類准教授。専門は、地方制度史、地方行政。11年の福島第一原発事故後、除染作業などに携わり、原子力市民委員会の委員を務める。

 


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