叱られ上手

姑様は朝から不機嫌だった。
『ああ、また会社でなんかあったんだろうな。』と思った嫁は、
当たらず触らず、自分のやるべきコトだけを淡々とこなしていた。

昼食の支度をするため、台所に立った。
本日は、夫のリクエストでオムライス。
一応、姑様にも食べるかどうか訊く。
いつもなら「自分のは自分で作るからいいよ。」と断られるが…今日は「食べる」と言う。

朝食で使った食器がそのままに、洗い桶の中に入っている。
今朝、アタシは用事があって外出したので、まだ洗ってなかったのだ。
料理の下準備をしていると…姑様、その食器をガチャガチャと音を立てて洗い始めた。

「あ、お母さん。
それあとでアタシ洗うから、いいよ～。」
…実際、今洗って貰っても困る。
昼食の食器だって洗わねばならんのだから、どうせなら、まとめて洗おうと思ってたし。
それに…ウロチョロされては調理の邪魔！

だが、姑様は「うんにゃ…」とかなんとか頷いただけで、手を止めようとはしない。…仕方ない。
結局、洗い終わるまで、調理中断。

姑様、むっつりしながらこちらをチラリと見た。
…こういう雰囲気の時は、絶対何かしら文句言うんだ。
そうに決まってるぅ。
「ライチさん。包丁、桶の水さ浸けっぱなしにしないほうがいいんでねぇの？」
…解ってますっ！
これはね、調理の途中、あなたが割って入ってきたから、
とりあえずそこに入れちゃったんですっ！
アタシは、いつもならそんなこと絶対しませんからっ！
…って言い返したかったけど…や～めた！

「はい…スミマセン…。」

ああ…まったくもう！
いつだってこうだ。
普段はしないのに、たまたまやってしまったことがつつかれる。
コレ、一番腹立つ『叱られパターン』。
子どもの頃、よくあったなこういうこと。
「今からしようと思ってた」のに、母親から「早くやれ」と、絶妙なタイミングで叱られるあのパターン。
ああやられると、素直に「ごめんなさい」なんて言えなくなる。

ま、悪いコトは悪いな。とりあえず謝っとけ…ってか。
嫁だって、姑様にご注意申し上げたいコトが山盛りてんこ盛りだが…それは言わないで我慢しているのだ。
知ってか知らずか…姑様。

あ、頭きたついでだからここで思いっきり書いとこうっと。
１．洗面所の縁に、ご自分の使ったタオル置きっぱなしにしないで。
使ったら、ちゃんとタオル掛けに掛けてください！
２．出勤前、飲んだ紅茶のカップ。半分飲み残したままテーブルに置きっぱなしは、やめて。
洗わなくていいから、シンクにさげるくらいはしてください！
３．使った鍋や食器、洗い桶につけてくださるのはいいのですが、食べ残しごと入れないで！
４．普段、勝手口を玄関代わりに出入りしてるから仕方ないけど、いい加減、どれか靴を片付けてください。
足の踏み場がなくて困ってます！
５…はああ…もう辞めた。あげるとキリが無い。

こういう愚痴はここでしか吐けない。
実家の親に愚痴ったところで、母親はボケ～っと聞きながら「ふぅ～ん」。
父は「そんな重箱の隅をつつくようなコト言うもんじゃない！すべて飲み込め！」と、道徳的なことしか言わないんだもん。

だってだってだって!!
ホントーーーに嫌なんだもん！
逆に、姑様だって、嫁のアタシに言いたいコトはあるのだろうけど。

で…姑様の今回の不機嫌の原因が判明。

『歯が痛かった』そうで…。ははは…（涙）