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バニスター

2024-07-13 22:00:45 | 日記
1990年
その凄さは、何よりも巧みな配球である。MAX140㌔のストレートを軸に、カーブ、スライダー、シュート、シンカー、チェンジアップ。しかも、その一つ一つをうまく組み合わせ(同じチェンジアップでもスライダー気味にしたり、シュート気味にしたり)て、七色の変化球を投げ分ける。カーブなど遅いボールを、しっかりとタメて投げるため、速球がいっそう、打者には速く見えるらしい。3月11日のオープン戦デビューとなったロッテ戦でも見事な投球の組み立てだった。巨人の香坂スコアラーは「スピードガンで140㌔しか出ていないが、緩急の投げ分けがうまいため、打者には相当、速いボールに見えるはずだ。これは、手ごわい」と言い、中日・江崎スコアラーも「外の球の使い方がうまい。相当勝ち星を稼ぐんじゃないか」と言っていた。後は、バニスターの凄さは、走者を背負ったピッチング。ロッテ戦で走者を二塁に背負って一飛、遊ゴロ、遊ゴロ。16日の近鉄戦でも二死三塁で三ゴロ。25日の近鉄戦でも二、三塁でトレーバー、金村を連続三振に打ちとるなど、いずれも無失点。安田コーチいわく「どんな球でどこに打たせれば点を取られないか考え、思い通りに打者を料理する」


重い、速い、外野に飛ばない。これがメジャーの迫力だ。「キャンプから比べると、かなり速球がよくなってきた。コントロールも問題ない。マウンドに慣れれば、まだスピードアップするよ」バニスターは自画自賛したが、それだけうなずける内容。来日初登板でイヤというほど、メジャー32勝の実績を披露してくれた。六回、成長株の初芝をシンカーで二飛、代打、ヘンゲルは格の違いで、速球オンリーの3球三振。古川はドン詰まりの二飛。MAXこそ138㌔だが、スピードガンの故障?と思うほど、ボールはうなりを上げていた。真骨頂はつづく七回、福沢に右中間二塁打、三盗されて、無死三塁のピンチ。「あいいう場面はあった方がタメになるね。アウトを増やして1点止まり、のつもりで投げたよ」バニーはこう振り返ったが、とんでもない。南渕はインハイで一邪飛。島田、佐藤健は低めを攻めて連続遊ゴロ。1点どころかランナー釘づけ、マウンド上で仁王立ちだ。2回、30球、無失点。キャンプ中の紅白戦(2試合)から通算して、これで5イニングス、ホームを許していない。野村監督は「バニーちゃんは、ひと安心だよ」注文はないそうだ。それはそうかも、なにしろマジメ。この3日間、ブルペンで350球も投げ込んでいる。それも、自分なりに発見した調整法。「日本では開幕までどう調整すればいいか」と考えた結果、ベテランの尾花に着目。「一番しっかりしていそうだから、彼と同じことをやる」と決めて、来日以来ずっと、2人3脚で練習。投げるときも走るときも一緒。次回登板も、2人揃って16日の近鉄戦(日生)という入念さ。だから、4・7開幕レースは、2人で並走、という次第。この日のピッチングをみせられては、やはりバニーが本命だ。「あとは、どれだけボールに変化を与えるか。きょうは4種類のボール(ストレート、カーブ、スライダー、シンカー)を投げたけど、もっと投げ込めば、もっと鋭くなるよ」こんなものではない、とすれば、一体どんなに凄いのか。ザ・サウスポーは本モノだった。


メジャーの片りんが、チラチラと見えてきた。バニスターの2勝目は、限りなく完投に近い7回2/3だった。「きょうは最初から、速球が走っていなかったので、キャッチャーの秦は、サインを出すのに大変だったろうね」それでもなんとか抑えるあたりが、メジャー133勝の来日NO.1サウスポー。スピードガンは140㌔は出ないが、代わりに100㌔台の大きなカーブと、120㌔台のチェンジアップと130㌔の速球。このバニーの力投、実はかなり貢献度が大。投手陣のあまりのふがいなさに、野村監督は試合前「きょうからオールスター方式で細かくつなぐ」と総動員リレーを打ち出したばかり。バニーに対しても「5回」をメドに、継投を覚悟していた。それが、フタをあければアレヨ、アレヨ。いや実際には、やはり、というべきか、5回だった。5回を投げ終えてベンチに戻ってきたバニーは「もうダメだ」と弱音を吐いていた。それが「せめてあと1回」「いやもう1回」と自分で言い聞かせながらの7回2/3。もちろん、来日最長イニング、最多投球数(119球)の更新。バニー→内藤の2人リレーは、今季ヤクルトの最少継投。野村監督の計算を、いきなりいい方に狂わせてみせたのだ。昨年6月に左肩の手術をしたばかりで、肩の重みをかかえてのピッチング。だが、完全復活のメドだった1年まで、まだ1ヶ月以上残しながら、あわや完投。「暖かくなるまで、もう少し待ってくれ」バニーのセリフは頼もしかった。

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