作文小論文講座

苦手な作文を得意に。小学生から受験生まで、文章上達のコツを項目別に解説。作文検定試験にも対応。

文章を書くということ

2005-03-10 | コラム
 文章を書くときには、自分の内側を深く探ることと、自分から離れることの両方が必要とされると思います。他人とは違う自分、そんな自分の個性的な体験や内側から湧き出る感情を素直に表すことは大事なことです。しかし、一方、自分の枠を抜け出して、外の世界との関わりを記すことも大切です。小学生低学年なら、友達との会話を書いたり、誰かの気持ちを推測して書いたりすること、高学年なら「人間にとって」などという言葉を使いながら一般化することがこれにあたります。中学生以上では、自分の問題から離れて人間全体、社会全体の問題として意見を示すことがこれにあたるわけです。

 そもそも人間は、自分の内側の世界と外側の世界とのバランスを取りながら生きていると言えるでしょう。必ずしも境界線のはっきりしない二つの世界を行ったり来たりしながら成長していくのが人間なのかもしれません。文章を書くという作業は、そんな二つの世界のバランスを取るにはとてもいい方法だと思います。私たちは、さまざまな体験からいろいろなことを学んでいます。それらの学びの成果を自分の中に積み重ねていくだけでなく、外の世界に照らし合わせることで、その学びはより深いものとなって刻まれます。

 人間は、誰もが自己中心的であると言えるでしょう。自分のことをいちばん大切に思うのは当然のことです。自分の存在を主張し、幸せに生きていこうという意志を持てるのは自分しかいません。しかし、誰もが自分のことしか考えなかったら、社会の秩序は成り立ちませんし、もちろん、自分も幸せになれません。人は他人との関わりの中で生きています。また、自分という存在も大きな宇宙からみたらほんの小さなものに過ぎません。そこで、他の人々に目を向けること、大きな社会の流れを把握することが必要になってきます。すると、この世の中に普遍的な何かがあることに気づかされます。そんな気づきを文字にするとき、たぶん、自己というものの幅が広がっているのだと思います。

 自分の内側で起こった具体的な出来事を抽象的な考えにまとめていく、自分の感情を主体的に発信するだけでなく、客観的にとらえる、そんな作業を繰り返していると、それまで見えなかったものが見えてきます。そして、自分という「とりで」の周囲に引いた境界線が少しずつ広がっていくことに気づくでしょう。文章を書くという作業を通して、人間的にも成長できたらこんなにすばらしいことはありません。私たちは、歩幅の差はあっても書くたびに必ず前進しているのです。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。