Doll of Deserting

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風切羽をゆっくりと。(ギン→イヅ→桃)

2005-10-09 12:05:41 | 過去作品(BLEACH)
風切羽をゆっくりと。
 今日は新しい副隊長が五番隊から配属されるらしい。そんな話を聞いて、市丸は僅かに顔をしかめた。自分が三番隊隊長になってから、幾度も副隊長を換えてきた。いや、自ら辞めていった者も多くいたが。しかもあの男の隊からか、と思った。かつて自分が二番手に甘んじていた、あの男の元から。そう思うと、やけに寒くなった。
「…どんなコやろなあ。いかつい奴やないといいけどなあ。」
 そんな風に冗談めいた言い方をしながらも、気になるのは確かだった。これから自分のすぐ下につく人間が、傲慢な自意識過剰では話にならない。というか、自分がそうであるのに副隊長までそんなことになってしまっては、上手くいかない以前に仕事にならないだろう。後のためにも、ここは出来れば勤勉な部下を持ちたいと思う。例えそれがお茶を入れる姿が似合わないような花のない男であっても。


「初めまして、吉良イヅルと申します。至らない面もございますが、何卒宜しくお願い致します。」
 初めて顔を合わせたのは、向こうから挨拶に出向いてきた時だ。市丸は隣の三席が呆然としているのにも構わず、空虚な気持ちで「…よろしゅうな。」とだけ言った。
 イヅルは、自分が望んだ通りの部下だった。勤勉で穏やかで、少しばかり要領は悪いがそれすらも可愛らしいものだと思わせるような容姿があった。絹糸のように洗練された輝きを放つ金髪に、透明感に満ちた碧眼。自分と全く対の色彩を持つその容姿に、市丸は幾度となく目を奪われた。女性のように、柔和さのある美しさだ。決して派手な色香ではないのに、少しずつ惹きこまれていくような。
「いづるー。イヅー。そんな忙しゅうせんと。一息つこうや。」
 軽くそう言い放つと、イヅルは決まって嫌そうな顔をする。いつもは黙って全てを許容する彼が自分にそんな顔を見せるのがたまらなくて、市丸は再び駄々をこねたフリをした。そんな日常が過ぎていき、どうしてかイヅルを手に入れたい衝動に駆られながらも、彼の性癖を考えてやめた。相手の気持ちを考えるなど、今回が初めてだった。イヅルには桃がいる。例え彼女が別の彼を見ていたとしても、イヅルの想いは縛られたままだ。市丸にもそれが痛いほどに理解出来た。しかしあの時、
「市丸隊長を傷付けることは僕が許さない。」
 その言葉に、随分と想いが突き動かされた。市丸はとてもではないが藍染との計画にイヅルを巻き込むつもりはなかった。しかしイヅルの類稀な自分への忠誠心(恋愛感情という易いものがなくとも)があまりに市丸を追い込むので、仕方なしにイヅルを手駒の一人にすることにした。イヅルの目的は桃に手を出させないことだったが、そんなことはどうでもよかった。




「まだ、死ぬん厭やろ。」
 市丸の中で、様々な思いが交錯する。死にたくないかどうかではなく、死なせたくないだけではないのか。そう思った。きっといつか自分はイヅルの風切羽を折ってしまう。それはとても簡単に、そしてとても生臭く痛いのだろう。もしかしたら自分はとんでもない傷を負ってしまうかもしれない。しかしいつか、彼が完全に彼女のものになってしまう前に折ってやろう。そんなことを考えた。




あとがき
 ファイルから掘り出したはいいものの、何だかダイジェストみたいな感じになっていたので加筆修正しようかと思っていたのですが、ぶっちゃけ加筆修正したら連載が一個出来上がりそうな予感がしたのでやめておきました。
 ギンイヅと見せかけてギン→イヅ→桃。しかしイヅルは桃を幸せに出来るのは自分ではないと理解しております。市丸さんはとにかくイヅルを自分のものにしたいと思いつつ空回り。イヅルの描写に今以上に果てしない夢が含まれておりますが起きになさらず。(無理)ファイルからまだUPしていないものが色々出てきたのですが、日乱と藍桃はもう全て出してあるんですよ。日乱とギンイヅと藍桃の話も全て。ただギンイヅが余り過ぎておりまして。ただ何というか、内容的に「ハマりたてって怖!!」というほどにヒドイものばかりでちょっと迷っております。だって市丸さんとイヅルがひたすらお互い好きって言い合ってるやつとかあったんですよ。うわあ恥ずかしい!!!(本気で)
 もしかすると今終わらせなければならないものが全て終了したら、真面目に出会い編のような話として連載するかもしれませんが、その時はお付き合いどうぞ宜しくお願い致します。(汗)

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