Doll of Deserting

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蓮の宮。(日+藍+ギン)

2005-06-25 14:12:31 | 過去作品(BLEACH)
蓮の宮。
 真実はどこにも見えてはこない。そう実感したのはつい最近のことだ。一昨日市丸に、突然声をかけられた。俺と松本はまだ想いが通じ合ったばかりで、副官はいかなる時も基本的には隊長に連れ添うという暗黙の了解があるにしても二人で歩くことにどこか気恥ずかしい感情を抱いていた。その時は市丸も俺もたまたまお互いに一人きりで行動していた。そんな時いきなり普段話さない者から、しかも一般的にはおかしなことに部類されるであろう質問をされるとは思ってもみなかった。
「なあ、乱菊はキミとおって幸せなん?」
 三番隊隊長である市丸ギンは、俺が率いる十番隊副隊長の松本乱菊と同期で、幼馴染でもあった。幼い頃は共に暮らしていたこともあると聞き、少しばかり嫉妬してしまったのを覚えている。しかしながら、市丸も松本も結局はそれぞれ違う相手を選んだ。そうすることが互いにとって最も適切であると踏んだためだ。しかしそれでも、両者共にどこかで繋がっているのには変わりない。俺にとっての雛森のようなものだ。初恋の相手というものは。嫌、とりわけ男にとって初恋の女というものは、いつまで経っても特別な存在なのだ。
「そういう吉良は、お前と居て幸せなのかよ。」
 僅かに皮肉めいた表情でそう返してやったが、市丸は張り付いた笑顔のままで「当たり前ですやん。」と言ってくれた。どこまでも気に障る男だと思いつつ、俺は黙り込んでしまう。確かに松本は好きでもない男に思わせぶりな態度を取るような女ではない。一週間前に好きだと告白をしてくれた時も、歳と外見から言えば経験も多々あるだろうに、(歳は余計かもしれないが。)微かに頬を染めながら小さな声で言った。その言葉を口にすることを心底恥ずかしがるように、言った。あれはまさしく本心であるのだろうと思う。しかしどうしても、自分の中で彼女に幸福を与えることが出来ているかという問の答えは出ていない気がした。
「愛しとる、いうだけじゃ幸せになれへんよ。イヅルはなァ、ボクのために死ねるんやて。そないなことせんでもええいうかさせへんけどな。ボクかてあの子命がけで守れるんよ。せやからなァ、十番隊長はん。隊長副隊長はどこも一つやないとあかんのですわ。息が合わんと、信頼出来てへんと隊全部おかしなんねん。片方だけじゃ歩けへんの。」
 片方だけじゃ歩けない。それはそうだ。隊長と副隊長は、恋仲であろうとなかろうと信頼しきれていない限りは話にならない。上位二名の仲が芳しくない隊は、既に終わっているようなものである。
「…それがどうした。そんなこたあ解ってんだよ。俺も一部隊を預かる身だ。副官との信頼くらい築けてるに決まってんだろ。」
「そら良かった。せやかてこれだけ覚えといてや。」
「…何だ。」
「乱菊も昔はボクの大事な子やった。キミにとっての雛森ちゃんとおんなじや。やから、乱菊泣かしたら…そん時は、ただじゃおかんで。」
 鋭い視線を真っ直ぐに受ける。俺もそれに応えるように鋭利な眼光を向けた。そして静かな声色で、
「ああ。」と返した。
「…雛森ちゃんも、すっかり藍染はんのもんになってしもたなァ。」
 藍染のものになる、ということがどういうことかはよく知っていた。雛森は藍染に心酔し過ぎたのではないかとも思う。藍染はどう見ても部下を見る目でしか雛森を見ていなかったのにも関わらず手を出しやがったので、よく思ってはいなかった。もし藍染が据え膳を食っただけのつもりならば、早急に氷輪丸の餌食にしてやろうと思っていた。
「結局のところ藍染は、雛森をどう思ってんだ?」
「大事にしてるんと違いますか。壊してはおらんみたいやけどなあ。」
 笑みを漏らしながら言うので、俺は少しばかり心配になった。藍染は信用出来る男だが、外見に似合わずとにかく手が早い。今まで傷付けられた女はいないようだが(市丸とは違い藍染は後のはからいがしっかりしている所為だと思われる。)清廉潔白とも言い難かった。藍染は経験豊富な方ではないし、手が早いという事実を知っている者も数少ない。しかし雛森と藍染では生きてきた年月が違い過ぎる。本当に理解し合えるのだろうかと思ったのだ。きっと縁が切れる時に捨てるのは藍染の方だろうという確信があったし、もしそうなった場合も、二人は職場で顔を合わせ続けなければならない。その時おそらく、雛森は壊れる。だからこそ不安は募った。
「…まあいい。あいつは今幸せだろうしな。」
 そうなったらそうなったで何か考えてやればいい。一人思案していると、市丸から余計なことを突っ込まれた。
「あんまり雛森ちゃん構ったげてると、乱菊が気にしますえ。」
「いいんだよ。お前こそあんまり乱菊気にしてっと、吉良が妬くぞ。」
「ええんです。ボクらは心が繋がっとるから。」
「ふざけたことを。」
 嘲笑してやったが、市丸は動じなかった。俺は長いこと市丸は乱菊のことが好きなのだと思っていた。乱菊の方もやけに市丸のことを気にする素振りを見せていたので、俺は大層やきもきしていた記憶がある。しかしまさか市丸が男色などとは思いもしなかった。今まで普通に女を抱いていた男が、なぜそこまで堕ちてしまったのかと偏見じみた感想を持っていたが、市丸の数歩後から常に付き従う副官の今にも消えてしまいそうに儚い美貌を見て、不思議と納得してしまったのは如何なものなのか。
「おや、君達が一緒だなんて珍しいじゃないか。」
 背後に目をやると、温和な声色通りに藍染が佇んでいた。またややこしい奴が、と俺は僅かに眉をひそめたが、市丸は何ともなしに笑っていた。
「藍染隊長、ええところに来はったわあ。日番谷隊長が幼馴染大事にせえやて。」
「てめえ市丸!」
「はは、そういえば日番谷君は雛森君と昔馴染みだったね。」
 心配しなくても大事にするよ、僕は彼女が好きだから。藍染は悪びれない笑顔で言う。俺はその言葉を心底信じた。ここはまるで牢獄のようだが、むしろ牢獄より尚悪いな、と藍染の表情を見ながら思った。宮殿のように見目は美しく心地いいのに、下は蓮の花しかない。そしてその下には水だ。それと共にたゆたいながら俺達は、必死に自分の幼い花を守っているのだ。


蓮の宮。
 大好きなんです。彼氏連中が大好きなんです(黙れ)。皆自分の恋人が一番だと思っていればいい。さりげなく自慢しあえばいい。享楽さんとか更木さんと共に五人くらいで酒飲みながら惚気ていればいいよ。(いい加減にしろよ)ギンにとって乱菊さんは家族みたいに大事な人です。日番谷君は桃を妹のように大事にしています。(桃は自分が姉だと言い張ります。)時々お父さんのように藍染さんにつっかかります。(笑)ギンはからかっているだけです。本当は最後大事にするよ、の後に時が来るまでは、というような皮肉みたいなものを入れようとしたのですが、この小説は素直に惚気あいにしたかったのでやめました。(笑)

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