沢木耕太郎『流星ひとつ』







 最近、ずっと藤圭子を聴いています。こぶしを効かせた低音、痺れます。以前はヒット曲中心でしたが、改めてアルバム全体をじっくり聴くと最高の仕上がりです。1970年3月から1971年1月まで42週連続でオリコンのアルバムチャートで1位を獲得、この記録は今も破られていないそうです。

 どうして藤圭子のアルバムを持っているのか記憶が曖昧だったのですが、2013年に藤圭子が死んでその直後に沢木耕太郎が1979年に実施したインタビューをまとめた本書が発売されて、その際に購入したようです(たぶん)。本は非常に面白くて印象に残っていましたが藤圭子の歌の方は当時はそこまでのめり込むことはなかったです。

 『流星ひとつ』を再読。どうして28歳という若さで引退するのかを中心にこれまでの人生、歌、芸能界などについて酒を飲みながら語り合った一部始終。このノンフィクションがどうしてこんなに面白いのか、読了後何日か考えていましたがはっきりとしません。藤圭子のさっぱりとした性格の魅力、歌詞の良さ、彼女を見出した作詞家の石坂まさをの俗っぽさ、子供の頃からのドサ回り生活の昭和の味わい、初めの夫の前川清の味、沢木耕太郎のスタンスの巧妙さ、引退への経緯の興味深さ、宿命の不思議などなど。ここまでシンプルに会話だけで一人の歌手、女性の生き様を表した。素晴らしいです。

 それと普段は割り切って考えもしないのですが、藤圭子の歌はレコードで聴くときっともっといいだろうなぁと妄想を膨らませています。



 
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