U2「ノー・ライン・オン・ザ・ホライゾン」


 U2の新作、2000年の「オール・ザット・ユー・キャント・リーブ・ビハインド」、2004年の「ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム」に続く2000年代の第3作目です。

 プロデューサーにリック・ルービンを迎えたプロダクションを途中で中断して、盟友ともいえるダニエル・ラノワ、ブライアン・イーノ、スティーブ・リリーホワイトのプロデュースで仕切り直して完成させた作品との記事を読んで興味が湧きました。私はリック・ルービンのタイトな音作りも大好きなので当初計画作も聴いてみたい気がしますが制作途中で何かうまくいかなかったのでしょう。

 ただ、この3人との音楽作りではある程度の予定調和も予想されたことから、購入するかどうか迷ったのですが(迷ってもいつかは買うのですが・・・)、音楽ショップで「超過激な音楽」との言葉で奨めてあり、それならと聴いてみることにしました。

 非常に完成度が高いです。80年代の音楽に近い、ボノが吼えるように高らかに歌い上げるメロディ、それに広い空間を感じさせる音作りと90年代を通じて試したグルービーな重量感ある音作りとがうまくミックスされています。
 U2らしくて、心地よくて、刺激のあるアルバムにまとまっています。人によっては最近の音楽の延長で詰まらないという意見もあるかもしれませんが、私は大好きです。80年代のU2は「ヨシュア・ツリー」で極まりましたが、同じプロデュースチームで2000年代の総決算といえるアルバムが生まれました。


 その他では、昨年のグラミー賞を取ったロバート・プラント&アリソン・クラウスの「レイジング・サンド」が最高です。こういう音楽をどういうジャンルといえば良いのかよく分からないのですが、R&B、フォーク・ロック、カントリーなどの名曲を大御所2人がカバーしたデュエットアルバムなのです。名手Tボーン・バーネットのプロデュースも冴えて、痺れるくらいにカッコいい音楽に仕上がっています。肩の力の抜けた大人の音楽、何度聴いても飽きません。
 もう一枚は、全く期待せずに自虐的な気持ちで購入したブルース・スプリングスティーンの「ワーキング・オン・ア・ドリーム」が意外や意外によかったです。前作の「マジック」は世評高いようですが、私には冒頭からボストンかと思えるような分厚い音作りに違和感を感じっぱなしでちょっとダメでした。その1年ちょっと後に同じブレンダン・オブライエンのプロデュースでは買うほうが悪いと言われても仕方ありません。それがとてもいいです。前作の終盤にポップな音楽に回帰していく自分に興奮して、興奮がもたらす創意を逃さないように曲作りを続けたとのB・スプリングスティーンのコメントが紹介されています。確かに聴いていて懐かしいなあという思いがしました。音作りも前作に比べてE・ストリートバンドの演奏がストレートに捉えられています。好みの問題だと思いますが、私には「ボーン・イン・ザ・USA」以来のいいアルバムだと感じました。


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