シリウス日記

そうだ、本当のことを言おう。

その32-1・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-08-06 19:47:34 | 日記

1、有尾地区の浸水について

この地区の浸水被害については飯山市報(pdf)にも記載があります。

このpdfの2ページ目に今回の浸水被害があった場所が地図上に示されています。
拡大して確認してください。
そこに「有尾区 内水の氾濫よる浸水」と示された場所があります。

グーグルマップでは「JA虹のホール みゆき」と書かれたあたりでしょうか。
さて、「そんなところに川があったのか?」と言うのが最初の疑問でした。

そうして「国土地理院の地図」にも「グーグルマップ」にも対応する川などそこには無いのです。
実際はそこにあるのは「農業用の用水路」でした。(注1)

さてではこの用水路が氾濫した?
いやいや、この用水路の起点はそんなに大したところには無く、そのあたりに降った雨を集めて農業用にしている、と言うしろものでした。

それではなぜこの用水路に沿った場所が氾濫したのか?
この用水路に多量の水が流れ込んだからであります。

その流れ込んだ水の出所は、といえば「皿川の左岸越水」と「有尾樋管あけっぱなしによる千曲川からの逆流水」でした。
そうしてこの場所に氾濫の被害を与えた主原因は「皿川の左岸越水」ではなく「有尾樋管あけっぱなしによる千曲川からの逆流水」でした。

このことについては詳細は後述致しますが、従ってこの場所の氾濫は「内水の氾濫による浸水」ではなく「外水の氾濫による浸水」と記録されるのが正確であります。

さて、それではなぜ飯山市は「内水による氾濫」と公表してきたのでしょうか?
それは「有尾樋管が開きっぱなしだったという事を知られたくなかったからである」と推察いたします。

しかしながら、後日、情報公開請求によって「有尾樋管が開きっぱなしであった事」が公開されてしましました。
最初に報告をした頃は飯山市は「こんな事にはならない」「有尾樋管が開きっぱなしだった事は隠しておける」と思ったのでしょうね。

しかし、残念な事には、そのような飯山市の予想は裏切られ、情報は公開されてしまったのでした。

2、有尾地区氾濫の舞台となった場所の説明

飯山市の報告のpdfではピンポイントで場所が示されているだけでした。
しかしならが、実際は相当に広い範囲が浸水の被害を受けていました。
その正確な範囲については下記の河川事務所の報告が良いでしょう。

  令和元年10月台風第19号による千曲川・犀川出水状況

その26ページに飯山で浸水被害に遭った場所が地図上に赤色で示されています。
拡大して確認をお願いします。

その地図の左側から堤防道路に直角にぶつかっている線は国道292号線です。
その国道を挟んで上下に赤色で示された部分が「有尾地区で浸水被害を受けた場所」になります。

地図で相当する場所を示すとこうなります。 

地図では「有尾」とかかれた文字が皿川左岸部分に確認できます。

それから292号線とJR飯山線が確認でき、浸水被害は中央から下では飯山線の右側に上部では飯山線をまたいで左側にひろがっていたのが河川事務所の報告から分かります。
そうしてその浸水エリアを結ぶように用水路が青色の線で示されています。

そのエリアの航空写真はこうなります。

国道292号線と堤防道路、それからJR飯山線が確認できます。
それからもう一つのランドマークである「JA虹のホール みゆき」の場所も確認できます。

さてそれで順番に近づいていきますと、

航空写真2 

航空写真3 

航空写真4 

航空写真4で今回の氾濫のメイン舞台の全景となります。

皿川とその左岸道路、高水福祉会と書かれた建物、その建物の左側の道路を上に行ったところにあるのが飯山市の「公共下水道有尾中継ポンプ場」の建物、その建物に通じる道と左岸道路が交わる辺りが皿川から左側に越水した場所になります。

そうであれば越水した水はそのあたりを水浸しにしながらポンプ場にも押し寄せたのでした。

その時刻が13日の2時15分、しかしちょうどそのころにそのポンプ場の裏側(北側)を流れる、通常はそこから千曲川に余剰になった雨水を排水する排水路から千曲川の水が逆流し氾濫し始めていました。

この千曲川の水は排水路を右に見ていくと堤防にぶつかるのですが、堤防を越えてさらに右側をみるとそこに今回主役の「有尾樋管」があるのが分かりますが、そこのゲートが閉められておらずあけっぱなしだったので千曲川の水が樋管を通じて内側に流れ込んだというものです。

そうであれば2時15分から皿川右岸堤防が決壊したとされる4時15分までの2時間のあいだは皿川からの越水と千曲川からの逆流水がポンプ場周辺に氾濫し浸水被害を与えていた、という事になります。

しかし4時15分に右岸堤防が決壊すると皿川ダム湖の水位がさがり、左岸への越水はそこでなくなりました。

そうではありますが千曲川からの逆流はますますひどくなり、有尾樋管が閉められた時刻、それは13日の10時ですから、4時15分から10時まで、5時間45分間に渡って千曲川の泥水が樋管を通じて内側に流れ込んできていた、という事になります。

そうしてこの事が有尾地区であれほどの広い範囲にわたって、浸水被害を出した事の原因となりました。

3.ポンプ場まわりの水路について

さて、皿川左岸越水場所からポンプ場をみるとこんな感じです。 

写真中央に見える、門の奥の建物がポンプ場でそこまでの道は皿川左岸道路から下り坂になっています。そうしてその道の左側に側溝がありそれはこの写真で言うと「左側が山手になる」のですが、通常はそちらの方からの雨水をポンプ場横と裏を通して有尾樋管から千曲川に排出する、そういう構造になっています。

側溝1

側溝2 

側溝1は皿川左岸道路の上流側を見た時の写真で道の右側に側溝がみえます。

側溝2はその位置で後ろを見た時にみえる景色であって、中央電柱奥にポンプ場の屋根が一部確認できます。そしてこの側溝はそのポンプ場まで続いています。

この排水路を有尾樋管を起点に見るとこうなります。

飯山市「公共下水道有尾中継ポンプ場」浸水高は~浸水レベル▽GL+86cm~台風19号災害 

最初の写真( https://archive.fo/ZTRSG )は千曲川側から有尾樋管を見たものです。

2枚目( https://archive.fo/ZJCBX )は樋管ゲートを降ろす為に渡る橋の上部の写真です。そして有尾樋管が堤外地にある田んぼに水を供給する為の樋管である事が分かります。

3枚目( https://archive.fo/SztkJ )はその場所から後ろを見た時の絵でJAの建物とその駐車場が見えます。

4枚目( https://archive.fo/KmE2O )は樋管の側面からの写真。

5枚目( https://archive.fo/nwtAe )は堤防を渡ってJAの駐車場を見渡すもの。このときには樋管に続く排水路が駐車場の左を走っているのが確認できます。

6枚目( https://archive.fo/EWZHF )は排水路の写真、下水道中継ポンプ場の屋根が一部確認できます。

7枚目( https://archive.fo/cLmVQ )はポンプ場の裏を走っている排水路を、用水路との分岐点から堤防の方を見た時の絵です。右のフェンスと建物はポンプ場、左はJAの駐車場です。そうして一番奥に堤防が写っています。

8枚目( https://archive.fo/h69MW )は山から下ってきた水を右側の排水路ー>有尾樋管に流すものと、そのまま直進させて農業用水としてつかうものに分ける分岐点の写真で、堰を上下させるハンドルが写っています。

9枚目( https://archive.fo/JYh1j )はポンプ場横を走る山からの水をそこまで導いてくる側溝の写真。右側の建物はポンプ場です。

10枚目( https://archive.fo/WF6Y0 )はポンプ場の正面、道の左側に山手に通じる側溝が写っています。

ちなみに11枚目( https://archive.fo/jkAaM )がこのポンプ場の側面のかべに貼られた浸水深さのピークを示す表示。GL(グランドレベル)から860mmまで水が上がった事を示しています。そうしてこのテープがどこに貼られていたか、といいますと、それは9枚目の写真で確認できます。

そうして、有尾樋管のゲートの様子や、その閉・開日時、そうしてその位置についての航空写真は以下の記事で確認できます。

台風19号による千曲川増水時~飯山市街地北に位置する有尾樋管が開いたままで~千曲川が逆流してた~ 

注1:この用水路は有尾地区皿川付近を起点とし、終点はおだての排水機場となります。つまりはおだての川そのものの事になりますね。そうであれば、有尾地区に氾濫した水でこの用水路に流れ込んだ水はおだてのポンプ場から千曲川に戻された、という事になります。

飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討・一覧 

 


その29-2・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-08-06 18:44:38 | 日記

1、「地点別浸水シミュレーション検索システム」について

さて国交省が以下の様なシステムを公開しています。
「地点別浸水シミュレーション検索システム」
http://suiboumap.gsi.go.jp/

千曲川の堤防の破堤場所を指定して、あとは標高で浸水の進展具合を計算してくれる「すぐれもの」の様であります。

動かし方は・・・

『「地点別浸水シミュレーション検索システム」を見る』をクリックします。
いつもの電子地図のページに行きますので、飯山まで移動、拡大。

左にある「河川選択」をクリック
地域 は 北陸地方整備局 を選択
事務所 は 千曲川河川事務所 を選択
河川名 の選択の前にその下の 規模指定 で計画規模 も選択しておく
それから河川名の選択ーー>千曲川「計画規模」を選択

「データ表示」と言うボタンが現れるので それをクリック

堤防が壊れる点を指定しろ、の表示とともに地図上に選択可能点が現れる

皿川のすぐ上の北の点をクリック(BP713 千曲川 32.50k左岸破堤)

「アニメーション経過時間」というポップアップが開く
その時点て地図上には最終(42時間後)の浸水状況がカラーパターンで表示されている。
そしてそのカラーパターンはハザードマップの色分けと、たぶん同じはずです。

あとはポップアップの中のスタートボタンをおすと、浸水がはじまる。
経過時間は画面左上に表示される。

浸水の計算は地図のもっている標高によるものと思われるが、計算単位は一辺が10m程度の正方形のようである。
したがって、標高の値はその正方形の各点の平均値を使っているものと思われる。

当然地表に現れているでこぼこしか計算には反映されず、「雨水下水路」などの影響は考慮されない。
そして皿川も浸水対象だが、浸水はJR鉄橋までしか計算してくれない模様。

一回アニメーションを動かしていると「新水深の見たい位置を指定してください」という催促がでる。
それで市役所辺りをクリックする。
赤いマークが付く。

それで、42時間まで計算させて、そこで一時停止させる。

次に左側に「浸水域シミュレーショングラフ表示」というのが現れているので、それをクリックする。
「地点を選択してください」というのが現れるので「NTTあたり」を指定する

地図上に黒の×マークがつくのと同時に「Loading」の表示になる

しばらく待つと別ウインドウがひらいて「浸水深グラフ」が表示される。

ちなみに「想定最大規模」というのは最悪条件が重なった時であり、「計画規模」というのは「国がこうありたい」としている希望のようです。

規模指定の右側に「?」マークがありますので、それで詳細はご確認を。
計画規模は破堤した後の水の流れ出る量を制限している模様です。

あまり「ユーザーフレンドリー」ではなく扱いにくいのですが、まあそれでも「有用か」と思われます。

2、動かしてみると、、、

皿川のすぐ上の破堤点を選んだ場合、10分~20分後にはほとんど皿川右岸堤防からの皿川越水による浸水パターンと同様になる、と見る事ができそうです。

それでこのシステムによれば、皿川右岸越水から1時間程でその水はポンプ場まで到達しています。
つまり皿川越水が午前2時にはじまったとすると、午前3時には皿川の越水はポンプ場まで来ていた事になります。

ちなみにシステムの計算結果では80分で到達ですが、千曲川堤防の破堤点から皿川まで水が来るのに10~20分は必要ですので、その分の時間がマイナスとなります。
そうして、以下のケースにおいてもその分の時間は常にシステム計算結果からの時間からマイナスして考える必要があります。

さて市役所にその水が到達するのは越水2時間後、その時刻には仲町通りの栄川の橋でも越水が確認されそうです。

しかしその場合は「4時に栄川の越水を確認」ということになり、事実よりは1時間遅い事になります。
3時にその場所で栄川の越水が確認されるためには、3時時点でポンプ場の3台のポンプの排水能力をそこに集まってくる雨水の量がすでに超えていた、という事を示している様です。
つまり「雨水だけで本当に栄川は越水、氾濫していた」という事です。

あるいは「少なくとも皿川からの水はポンプ場のポンプよって千曲川に排水される事はなかった」という事、つまり、皿川からの越水の水がプラスされた事で栄川の氾濫が起きた、とも考えられます。

それから上町の堤防沿いで4時に30センチの浸水、という報告に対して、このシステムでは4時半に30センチの浸水という結果になっていそうです。
しかし、このシステムは、たとえば中央橋から飯山側に降りる道の下にあるアンダーパス、同様に25メートル道路下のアンダーパスの存在を考慮していないようです。
したがって、このシステムの計算よりも早い時間に実際の水がそこに到達していた、という事は十分にありうる事になります。

「計画規模」の選択での千曲川からの流出量の設定は、今回台風19号で実際に起きた流出量よりは30%程度多い様ですが、それでも良い近似にはなっている様で、当時、何が起こっていたのかを振り返る事はこのシステムを使う事で十分に可能であると思われます。

 

飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討・一覧


その31-2・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-08-05 16:33:01 | 日記

避難勧告を出すべき水位に到達したのに避難勧告を出さない、出せない自治体と言うのはそれなりの数が日本の中に存在している様です。
そうしてまた飯山市もそうした自治体の一つであります。

さてそこで暮らす住民にしてみれば、「避難勧告の空振り」は望ましくはありませんが、「千曲川の水位を理解していない為に空振りすらできない」というのはもっと望ましくないのです。
「避難勧告を出すべき時に出せない」というのは「無用のリスクに住民をさらす事」になるからです。

そうであれば、当方のスタンスと言うものは「空振りを恐れずに危険を知らせる」と言うものになります。

1、立ヶ花水位から飯山水位観測所及び柏尾橋水位観測所での水位を予測する事について

立ヶ花水位観測所の水位の観測値を用いて上記2つの水位観測所の水位を予測する事は技術的には可能な事であり、そうしてまたそれなりの精度で実現できるのである。
そのやり方のポイントは、といえば「時系列に並べた2つの水位グラフを比較する事」にある。

そうする事によって「予測したい地点の水位を立ヶ花の水位から事前に予測する事が出来る」のである。
もっともこの事を実現するに当たっては一時間に一回の測定データからは不可能であって、10分に一回の測定データを使う必要がある。

2、今回氾濫を確認できた場所については予測水位による予報を行う事

(1)静間バイパス沿い、無堤防エリアについて
飯山観測所の予測水位値から千曲川河床勾配による補正により大久保区周辺およびケーヨーD2あたりの危険を予測する。(注1)

(2)関沢区の無堤防エリアについても同上とする。(注2)

(3)戸狩区、大深区、今井区川面(無堤防エリア)、桑名川区については柏尾橋観測所の予測水位値から危険を予測する。(注3)

3、予測水位を使わない場合の対応について

(1)秋津地区
「古牧排水樋管」および「千曲川左岸38.5K」の水位計を使う。
特に「千曲川左岸38.5K」の水位計が「危険水位」に到達した場合は速やかに避難準備に取り掛かり避難するのが良い。

(2)伍位野地区
この場所も無堤防部である為「千曲川左岸38.5K」および「千曲川右岸36.0K」の水位計の数値を標高値に換算し、各自が暮らしている場所の標高と比較し必要な行動をとる事。

(3)飯山市街地および木島地区
「千曲川右岸36.0K」の水位計の値を確認し「危険水位」に到達した場合は速やかに避難準備に取り掛かり避難するのが良い。
但しその場合に飯山水位観測所でのピーク値の予想値があるならば、判断の参考にする事も可能である。

(4)常盤地区
「大関橋左岸」の水位計を中心に「飯山観測所」および「広井川樋門」の水位計を補助的につかう。
「大関橋左岸」の水位計を確認し「危険水位」に到達した場合は速やかに避難準備に取り掛かり避難するのが良い。
但しその場合に飯山水位観測所および柏尾橋観測所でのピーク値の予想値があるならば、判断の参考にする事も可能である。

4、飯山市の避難勧告との関係
飯山市が発令する避難勧告が上記の水位計のアラームよりも早い場合は、飯山市の判断を優先するのが良い。
但し、飯山市の避難勧告が水位計のアラームよりも遅い場合は、水位計の指示に従うべきである。

「飯山市の避難勧告が出ていないから」といって避難をためらう意味はどこにもない。
現状と言うものは誰もが経験したことがない降水量、千曲川の増水が起こりうる温暖化時代である、という事を忘れてはいけない。(2020/8/17 記)

注1:大久保区の静間バイパスの道路標高は319.4mを代表値とする。
それを超えた場合は「道路を水が渡る」という事になる。河床勾配分は飯山観測所に対して+3.4m。

同様にケーヨーD2あたりの標高は318.8mを代表値とする。
その値を超えると、その場所に浸水が始まる。河床勾配分は飯山観測所に対して+2.8m。

ちなみに飯山観測所あたりの堤防の標高は公称319.1mである。

注2:関沢区の無堤防エリアの標高は313.0mを代表値とする。河床勾配分は飯山観測所に対してー4.8m。

注3:今井区川面(無堤防エリア)の標高は311.5mを代表値とする。河床勾配分は柏尾橋観測所に対してー1.0m。

追記(8/31): 河川事務所の水位ピーク予測力の件

立ヶ花でのピークはほぼ1時間前に誤差+45センチ程度で予測できている模様。

【警戒レベル5相当情報[洪水]】千曲川では、氾濫が発生(令和元年 10 月 13 日 02 時 58 分  

【警戒レベル5相当情報[洪水]】千曲川では、氾濫が発生(令和元年 10 月 13 日 03 時 25 分)

但し予測するのは立ヶ花までであって、柏尾橋を予測する事はない。そうしてこれは飯山にとっては致命的な事である。

飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討・一覧


その31-1・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-08-05 12:58:53 | 日記

1、飯山水位観測所の事

飯山水位観測所、なまえは立派ですが単に2本の水位標が河川敷に立っている、と言うだけのものです。(注1)

今までの飯山市のやり方はこの水位標を一時間に一回、目視で読み取るというものでした。
ちなみに手前の背の高い水位標は7m~12mまで、奥の背の低い水位標は3.5mから8mまでの水位を読み取るためのものです。
そうして、その様にして読み取られた水位はたとえば台風19号の場合ではこのように市役所のHPで公開されていました(注2)

その様なやり方ですから、決められた水位水準で、そのタイミングで避難勧告を出す、などという事は到底できません。

それはまた「実際にマニュアルで決めた水位で避難勧告を出す」という事を真面目に考えてはいなかった、という事も表しています。

2、7月7~8日にかけての千曲川増水の時の千曲川水位情報の公表はやり方を変えた

この時は市役所はこのような水位情報をHPで公開しました

しかし、公開された水位情報は従来の飯山水位観測所での目視確認水位ではなく、皿川樋門の千曲川への出口側に設置されている「外水位計」の測定値を飯山水位観測所での値に換算したものでした。

そのやり方の利点は「ネット上で10分間隔で水位情報が確認できる」という所にあります。
そのようにできますからこれから市役所は「避難勧告水位に達したら速やかに勧告を発令できる」という事になります。(注3)

3、皿川の外水位計の限界
それは水位の測定範囲の上限が5mである事です。

つまり飯山観測所数値に換算すると7.12mまでしか自動測定は出来ない、という事になります。

それではそれを千曲川の水位が超えた時にはどうするのか?
現状では皿川樋門にある水位標を使っての目視観測、という事になります。

皿川樋門に取り付けられている水位標は10.7mまで目盛りが切ってありますから飯山観測所の数値に直しますと12.8mまでの水位が観測できる事になります。
ちなみに飯山観測所では水位標は12mまでであり、公称の堤防高さまで水位標の目盛りは切ってある事になりますので、千曲川の水位を基準にして考えますと、皿川の位置の堤防高さは飯山観測所の堤防高さよりも0.8m高い、という事になります。(注5)


それで、もう一つのやり方、というのはは千曲川右岸にある「上新田揚水機場樋管」に設置された「危機管理型水位計を使う」という方法になります。(注4)
ここの水位計は堤防天端の標高を319.5mである、として水位をその高さから何メートル低いかで示します。
ただし天端まで残り3m付近の高さまで水位が上昇しないと測定開始となりません。

それで表示されている数値を堤防の標高から引いてやると水面高さの標高が出ます。
その水面標高値から飯山観測所までの河床勾配による水面標高の低下分として0.91mを引いてやると飯山観測所の水面の標高となります。

その水面をゼロ点標高が307.14mの水位標で計るのですから、307.14mを引いてやれば飯山観測所で測定したらこうなるであろう、という水位値になります。
ただし堤防高さより3m程低い所まで水位が上昇、という事が条件ですから、飯山観測所で考えますと水位が9mあたりから「上新田揚水機場樋管」の水位計の値を使える、という事になります。

こうして7mまでは皿川樋管の外水位計の値を使い、9m以上は「上新田揚水機場樋管」の水位計の値をつかえばよいという事が分かるのです。
しかしその間の7mから9mは「目視観測」という方法を取る事になりますが、これは現状では仕方が無い事でしょう。

さて、そういう訳で飯山市役所には今後とも水位観測については今までの様な「人の目に頼る目視観測」ではなく「水位計による自動測定方法」を最大限、活用していただきたいと考えております。

追記
委託樋門操作員に飯山の水位観測所での水位測定をやらせていたであろう、という事は「・その28」で述べた通りであり、これは契約上の問題を指摘されても仕方がない状況でした。

しかし、樋門操作員が樋門の水位を測定する事には何の問題もありませんから、皿川樋門で水位を測定し、それを飯山観測所での値に換算する、と言う方法は、上記の様な矛盾点を解消する、と言う点においても妥当な方法であるといえます。

注1飯山観測所を示す看板河川敷に立てられた2本の水位標

注2最終的な水位情報はこうなりました。

注3:皿川の外水位計データを飯山水位観測所での測定値相当に換算する方法

観測所水位標の基準点標高が307.1mであり
皿川水位計・基準点標高が309.1mですから
あとは河床勾配の補正を加えて、2.17mという補正数値を市役所は採用した様です。(飯山盆地での千曲川河床勾配は1/1000である、という飯山市の主張でもあります。)

後は、皿川の外水位計のデータに2.17mを足しこむと飯山観測所での水位値になると飯山市は主張しています。

そして、皿川の外水位計の数値を見る為のリンクはここです。

そのページの左側の上から6番目に皿川がありますので、外水位をクリックしてください。ページにデータが表示されます。

注4「上新田揚水機場樋管」に設置された「危機管理型水位計」

水位計のマークをクリックすると別ウインドウで水位計のデータが表示されます。
左上の3つのセレクトボタンの河川横断図をクリックするとその時の水位の標高値が右端にて直接、確認できます。
右端に行くにはウインドウ下部にあるスライダーを動かす事になります。

ちなみに 「・その19・飯山市は自分で決めたルールさえ守る事が出来ない組織である
いくらハザードマップがあっても決められた水位で避難勧告が出せなくては何の意味もない。」によれば現状は「飯山観測所で水位が9.4mに達した時に避難勧告発令」となっている事が分かる。

飯山観測所での水位9.4mは標高で316.54m、河床勾配分の0.91mを加えると「上新田揚水機場樋管」では317.45mとなり、これをここに設置された水位計は「堤防天端まで2.05m」と表示します。そうして「ここの水位計の危険水位は1.76m」と設定されているのですから、「30センチほど飯山市設定の避難勧告水位よりは甘い」という事ではありますが、「2つの水準はほぼ同一水準に設定されている」と言うように見る事も可能です。

ちなみに綱切り橋の南に設置された「千曲川右岸36.0K」という水位計の危険水位は「天端までの余裕が2.12m」であり、この数値は「上新田揚水機場樋管」での数値1.76mよりも36センチ、厳しいものになっている。これは、この位置での堤防の計画高水位の値を反映している為(つまり、この位置の堤防の強さは上新田と比較すると弱い為)であると思われる。

注5:この奇妙な結論、千曲川の水面を基準に考えると皿川位置での堤防高さが飯山観測所位置での堤防高さより0.8mも高い、と言う話はなかなか納得ができるものではありません。

それでこのような「おかしな話」が出てくるのは飯山水位観測所の水位標のゼロ点の標高値が実は307.14mではなく、別の数字である事が原因ではないのか、と言うものが当方の疑問であります。

もしそうである、とすると飯山観測所で測定してきた水位では堤防の計画高水位に対して決められた避難勧告を出す基準の値を使って正しいタイミングで避難勧告の発令をすることが出来てはいなかったという事になります。

追記:危機管理型水位計を有効に使えるもう一つの事例は・その後の状況報告・2に報告されている、「大きな被害が出た静間バイパス付近で水防の自衛活動に有効に使える水位計について」という記事になります。

それから、飯山観測所に関連した「横丁大家さんの記事」があります。こちらもご参考までに。

飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討・一覧