4、浸水被害の広がりについて
さて、ポンプ場よこのテープがGL+86センチ、GLが316.1mとすると水位は316.96≒317mとなります。
それで、ここであふれだした水はJAの駐車場に流れ出す。 奥にあるのがポンプ場、でこの駐車場の標高が316.1m。だからここでの水位は90センチ。次に水はJAの建物に続く道を横切って右側に流れ出した。
その先にあるのがこのグラウンド。このグラウンドの標高は314.2m。だからここでの水位は2.8m。このグラウンドの奥は農地になっている。その境目からJA側を見るとこうなる。 そうしてそこで後ろを見るとこうなる。
右側に見えるのが堤防道路、正面のみちは国道292号線。左側がトンネルになっていてそこから下り坂で堤防道路に接続する。その道の下にアンダーパスが2つ開いている。左側に見えるパスはJA飯山線用のもの。正面のパスは農道だ。
そうして水はこのパスを通って292号線を越えて向う側に流れ出したのである。そうそう、この農道の右側に用水路がある。もちろん水はここも満たしていた。そうしてアンダーパス直前の標高は313.9m。したがってここでの水位は3.1m。
さてこのパスを越えよう。パスを越えてパス側を振り返るとこうなる。 そうして前を見るとこうだ。 道の右には用水路、左側の小高い所をJR飯山線が走っている。そうして奥の方に見えているのがJAの葬儀場「JA虹のホール みゆき」である。これを拡大するとこうなる。
さてそれで、この位置での標高だが、314.0m。そうするとここでの水位は3mという事になる。ちなみに用水路の右側にあるたてものは飯山スバルである。浸水はここを越えてさらにはJAの葬儀場を越えて、用水路の伸びている道沿いに広がった、と言うのが河川事務所の報告書にかかれている内容である。そしてJAの葬儀場での標高は312.8m。そうすると水位は計算上は4.2mにもなる!しかし実際はそんなにはいかず1m未満だったと思われる。
そういう訳で水位であるが、水が流れ出した方向は標高が低くなる方向で、千曲川で言えば下流側である。そうして用水路の水もこの方向にながれている。そうであれば下流側に向かって水は「自由端」になっている為に、実際の水位はここで計算した値にはならず、これよりも低い値、おおよそ二分の一~三分の一というのはいい推定値であろうと思われる。
さてそれで、始めに戻って河川事務所の報告にある様に相当に広い範囲が千曲川からの泥水で浸水の被害を受けたのである。
5、氾濫シミュレーションによる検証
使うのは「地点別浸水シミュレーション検索システム」であり、「地点別浸水シミュレーション検索システムを見る」をクリックすると、日本地図が現れる。拡大移動して飯山の有尾あたりまでもっていく。
つかうパラメータは
河川選択
地域 北陸地方整備局
事務所 千曲川河川事務所
河川名 千曲川【計画規模】
である。
ただし河川名の選択のまえにあらかじめ
規模指定 で
計画規模 にチェックを入れておくことが必要である。
それが済んだら「データ表示」をクリック。
そうすると「堤防のどこを破堤点にしますか?」と聞いてくる。
それで「有尾樋管に近い場所」として「グラウンドの横にある点」をクリックする。(破堤点番号 BP713 になるはず。)
破堤点番号の表示は邪魔だから消して、「アニメーション経過時間」というプレーヤーボックスの操作記号をクリックすると動き出す。
経過時間は画面左上に表示される。
以上が基本だ。あとはいろいろと好きにやってみてくれ。
破堤点がそこだと10分でそのあたり一面が水浸しになって水はポンプ場をこえて皿川の中にまで入り込んでしまう。
10分で止めておいて、浸水した場所をクリックしてみると赤いビンが表示され、そこでの水深がわかる。
しかしこの計算は計算メッシュサイズが大きいのであまり精度はよくない。
まあしかし、おおまかな目安はわかる。それから浸水範囲もめどがつく。
ただしこの計算はアンダーパスの存在は無視しているので、見て分かる様に国道292号線をこえて北側に水は流れ込めない。
これがまあ現状のこのシステムの限界である。
5-2:皿川氾濫のシミュレーションについて
さてそれで、実はこの計算、北の方を見ると確かに「有尾地区の浸水の模様」が分かる。
しかし水は南側にも流れて、しかもそこから市内に流れ出す元は皿川橋から上流あたりになっている。
そうするとこの計算で皿川が決壊した今回の状況がそれなりに分かってしまう事になる。
但し、皿川まで水が届き、そこからあふれ出すのに20分はかかっているので、画面左上に表示される時間からは常に20分引いて考える事が必要である。
浸水深さについては、今回の実際の浸水深さよりも1.3~1.5倍ほど多いものに計算されるが、それは「千曲川堤防決壊」という状況が「皿川堤防決壊」という実際に起きた事より氾濫水量が大きいからである。(注1)
まあそれでも自分が暮らしている場所の付近がどのように浸水してきたのか、大体の事は分かるので、是非ともこれで確かめておかれる事をお勧めする。
但し、上記でも説明しているが、市内各所にあるアンダーパスの事は計算には反映されていない。
それはつまり「実際にはアンダーパスを通ってより速く水は浸水していった」という事である。
そうしてまた「雨水排水路を伝って逆流してそこから噴き出していた水の事」も計算には入っていない事には注意が必要である。
6、有尾樋管はいつ閉めなくてはならなかったのか?市側の答弁は事実なのか?
さて有尾樋管は13日の10時まで開きっぱなしで閉じられてはいなかった。
それで6月の市議会ではその事が問題となった。
市議問う:閉めるべき樋管が開いていたことになる。事情は何か、
市役所答え:有尾樋管の管理を消防団に委託しているが市街地各所に出水があり、消防団へ他からの出動要請があったためと聞いている。
↑
これからも「市内各所に出水があると、有尾樋管は開けっ放しとなりあの辺り一面、グラウンドあたりからJAの葬儀場あたりまで千曲川の泥水で沈めたる」。
そう市役所は回答しているのでありました。
まことに残念な水防体制でありますなあ、飯山市さん!!
さらに大家さんのブログ記事によれば
↓
飯山市「公共下水道有尾中継ポンプ場」浸水高は~浸水レベル▽GL+86cm~台風19号災害(2020-07-12)
を参照すればJA駐車場の標高は有尾樋管水位標で2.0mである事がわかる。(現場確認済)
そうして
③樋管直近堤内地河川の左岸JAながの駐車場の標高は316.2m<--ブログ記事より
そうなるとこの樋管の底の部分の標高は314.2mである事が分かる。
つまり「千曲川水位が314.2mに達したらこの樋管は閉めなくてはならない」のだ。
さて千曲川水位が314.2mになった時の飯山観測所での水位と言えば7.1mだ。
ふむ、水位が7.1mは12日の夜中24時ごろだな。
この時刻には市内のどこにも水はあふれてはいないよ、市役所さん。
あなた方は「消防団のいい加減な言い訳にだまされている」という事になる。
あるいは消防団と市役所が話を合わせて市議会で答弁したのか?
いずれにせよこの「市街地各所に出水があり、消防団へ他からの出動要請があったため」という答弁内容は間違いである。(注2)
ちなみに申し添えるならば、台風19号の2年前の台風でも千曲川の水は増水した。
その時のピーク水位は8mであった。
さてその時のこの樋管が開いていたとしたらどうなったか?
8m-7.1m=0.9m
0.9mの水位まで千曲川の泥水は逆流したが、排水路から水があふれる事はなかった。
なぜなら、排水路の高さは2.0mだったからである。
ねっ、簡単でしょ。
こうして実は3年前の台風の時もこの樋管は開きっぱなし、それはつまり「この樋管はここ10年間、閉じられたことがなかった」という事でもある。
これが実は台風19号でこの樋管が閉じられなかった「真の理由」である。
10年間、台風の時に一度も閉じていなければ、そりゃ皿川樋門同様に
「あの樋管は開けといても大丈夫だ」とおもうよねえ、市役所さんと消防団さん。
しかし台風19号ではその有尾樋管から千曲川の水が逆流している事に気が付いた。
そうして10時に樋管を閉めた。
その時の千曲川の水位は10.4m、そうであれば有尾樋管排水路での水位は3.3mで排水路から1.2m分はJAの駐車場に水があふれ出していた、という事になる。
有尾樋管の状況はそのようであったが、かたや皿川樋門のゲートは最後まで開けっ放しで閉じられる事はなかった。
この事は本当に河川事務所のオペレーションミス、あってはならない操作ミスである。
それに加えて恥ずかしい事には河川事務所も飯山市も皿川樋門のゲートが開きっぱなしであったことを、樋門操作員の報告書を作文することで隠している。
このような「事実を隠すやり方」と言うものはとうてい見逃すことは出来ないものである。
追伸:さて今年以降「真面目に有尾樋管を閉める」というのであれば、そこには宮沢川同様に「排水ポンプを用意しておく事」が必要ですよ、足立市長さん。
追伸の追伸(2021/8/16):実は有尾樋管から千曲川に排水する事は「マスト」ではなく、いつ有尾樋管を閉めてもいい。但しその場合は上流からの水を有尾樋管に通じる排水路には流さず、全て下流の農業用水に水を流すようにしなくてはいけないが、、、。その様にできる設計になっているのだよ、あそこの樋管は。
注1:今回の皿川堤防決壊による浸水状況が千曲川本堤防の決壊の浸水状況の7割程度にも達する、と言う事は「驚くべきこと」である。
単なる千曲川の一支流に過ぎない皿川からどうやったらそれほどの水量が市内に流れ出すことができたのか、大きな疑問が残ります。
注2:「その34-2」で確認した所によれば、静間樋管においても有尾樋管と同様に千曲川からの逆流が確認されている。しかも飯山市の報告によれば「静間樋管は12日の23時に消防団・第一分団の分団長の手によって閉められた」と報告されている。
閉められたはずの静間樋管から何故千曲川の泥水が逆流できたのか?
それからもし本当に静間樋管を12日の23時に分団長が閉めたのなら、何故その足で有尾樋管に移動してゲートを降ろさなかったのか、大きな疑問がそこには残されている。