シリウス日記

そうだ、本当のことを言おう。

その32-2・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-08-06 20:00:00 | 日記

4、浸水被害の広がりについて

さて、ポンプ場よこのテープがGL+86センチ、GLが316.1mとすると水位は316.96≒317mとなります。

それで、ここであふれだした水はJAの駐車場に流れ出す。 奥にあるのがポンプ場、でこの駐車場の標高が316.1m。だからここでの水位は90センチ。次に水はJAの建物に続く道を横切って右側に流れ出した。

その先にあるのがこのグラウンド。このグラウンドの標高は314.2m。だからここでの水位は2.8m。このグラウンドの奥は農地になっている。その境目からJA側を見るとこうなる。 そうしてそこで後ろを見るとこうなる。

右側に見えるのが堤防道路、正面のみちは国道292号線。左側がトンネルになっていてそこから下り坂で堤防道路に接続する。その道の下にアンダーパスが2つ開いている。左側に見えるパスはJA飯山線用のもの。正面のパスは農道だ。

そうして水はこのパスを通って292号線を越えて向う側に流れ出したのである。そうそう、この農道の右側に用水路がある。もちろん水はここも満たしていた。そうしてアンダーパス直前の標高は313.9m。したがってここでの水位は3.1m。

さてこのパスを越えよう。パスを越えてパス側を振り返るとこうなる。 そうして前を見るとこうだ。 道の右には用水路、左側の小高い所をJR飯山線が走っている。そうして奥の方に見えているのがJAの葬儀場「JA虹のホール みゆき」である。これを拡大するとこうなる。

さてそれで、この位置での標高だが、314.0m。そうするとここでの水位は3mという事になる。ちなみに用水路の右側にあるたてものは飯山スバルである。浸水はここを越えてさらにはJAの葬儀場を越えて、用水路の伸びている道沿いに広がった、と言うのが河川事務所の報告書にかかれている内容である。そしてJAの葬儀場での標高は312.8m。そうすると水位は計算上は4.2mにもなる!しかし実際はそんなにはいかず1m未満だったと思われる。

そういう訳で水位であるが、水が流れ出した方向は標高が低くなる方向で、千曲川で言えば下流側である。そうして用水路の水もこの方向にながれている。そうであれば下流側に向かって水は「自由端」になっている為に、実際の水位はここで計算した値にはならず、これよりも低い値、おおよそ二分の一~三分の一というのはいい推定値であろうと思われる。

さてそれで、始めに戻って河川事務所の報告にある様に相当に広い範囲が千曲川からの泥水で浸水の被害を受けたのである。

5、氾濫シミュレーションによる検証

使うのは「地点別浸水シミュレーション検索システム」であり、「地点別浸水シミュレーション検索システムを見る」をクリックすると、日本地図が現れる。拡大移動して飯山の有尾あたりまでもっていく。

つかうパラメータは
河川選択
地域 北陸地方整備局
事務所 千曲川河川事務所
河川名 千曲川【計画規模】
である。

ただし河川名の選択のまえにあらかじめ
規模指定 で
計画規模 にチェックを入れておくことが必要である。

それが済んだら「データ表示」をクリック。
そうすると「堤防のどこを破堤点にしますか?」と聞いてくる。
それで「有尾樋管に近い場所」として「グラウンドの横にある点」をクリックする。(破堤点番号 BP713 になるはず。)

破堤点番号の表示は邪魔だから消して、「アニメーション経過時間」というプレーヤーボックスの操作記号をクリックすると動き出す。
経過時間は画面左上に表示される。
以上が基本だ。あとはいろいろと好きにやってみてくれ。

破堤点がそこだと10分でそのあたり一面が水浸しになって水はポンプ場をこえて皿川の中にまで入り込んでしまう。
10分で止めておいて、浸水した場所をクリックしてみると赤いビンが表示され、そこでの水深がわかる。

しかしこの計算は計算メッシュサイズが大きいのであまり精度はよくない。
まあしかし、おおまかな目安はわかる。それから浸水範囲もめどがつく。

ただしこの計算はアンダーパスの存在は無視しているので、見て分かる様に国道292号線をこえて北側に水は流れ込めない。
これがまあ現状のこのシステムの限界である。

5-2:皿川氾濫のシミュレーションについて

さてそれで、実はこの計算、北の方を見ると確かに「有尾地区の浸水の模様」が分かる。
しかし水は南側にも流れて、しかもそこから市内に流れ出す元は皿川橋から上流あたりになっている。

そうするとこの計算で皿川が決壊した今回の状況がそれなりに分かってしまう事になる。
但し、皿川まで水が届き、そこからあふれ出すのに20分はかかっているので、画面左上に表示される時間からは常に20分引いて考える事が必要である。

浸水深さについては、今回の実際の浸水深さよりも1.3~1.5倍ほど多いものに計算されるが、それは「千曲川堤防決壊」という状況が「皿川堤防決壊」という実際に起きた事より氾濫水量が大きいからである。(注1)
まあそれでも自分が暮らしている場所の付近がどのように浸水してきたのか、大体の事は分かるので、是非ともこれで確かめておかれる事をお勧めする。

但し、上記でも説明しているが、市内各所にあるアンダーパスの事は計算には反映されていない。
それはつまり「実際にはアンダーパスを通ってより速く水は浸水していった」という事である。
そうしてまた「雨水排水路を伝って逆流してそこから噴き出していた水の事」も計算には入っていない事には注意が必要である。

6、有尾樋管はいつ閉めなくてはならなかったのか?市側の答弁は事実なのか?

さて有尾樋管は13日の10時まで開きっぱなしで閉じられてはいなかった。
それで6月の市議会ではその事が問題となった。

市議問う:閉めるべき樋管が開いていたことになる。事情は何か

市役所答え:有尾樋管の管理を消防団に委託しているが市街地各所に出水があり、消防団へ他からの出動要請があったためと聞いている

これからも「市内各所に出水があると、有尾樋管は開けっ放しとなりあの辺り一面、グラウンドあたりからJAの葬儀場あたりまで千曲川の泥水で沈めたる」。
そう市役所は回答しているのでありました。
まことに残念な水防体制でありますなあ、飯山市さん!!

さらに大家さんのブログ記事によれば

飯山市「公共下水道有尾中継ポンプ場」浸水高は~浸水レベル▽GL+86cm~台風19号災害(2020-07-12)
を参照すればJA駐車場の標高は有尾樋管水位標で2.0mである事がわかる。(現場確認済)

そうして
③樋管直近堤内地河川の左岸JAながの駐車場の標高は316.2m<--ブログ記事より

そうなるとこの樋管の底の部分の標高は314.2mである事が分かる。
つまり「千曲川水位が314.2mに達したらこの樋管は閉めなくてはならない」のだ。

さて千曲川水位が314.2mになった時の飯山観測所での水位と言えば7.1mだ。
ふむ、水位が7.1mは12日の夜中24時ごろだな。

この時刻には市内のどこにも水はあふれてはいないよ、市役所さん。
あなた方は「消防団のいい加減な言い訳にだまされている」という事になる。
あるいは消防団と市役所が話を合わせて市議会で答弁したのか?

いずれにせよこの「市街地各所に出水があり、消防団へ他からの出動要請があったため」という答弁内容は間違いである。(注2)

ちなみに申し添えるならば、台風19号の2年前の台風でも千曲川の水は増水した。
その時のピーク水位は8mであった。

さてその時のこの樋管が開いていたとしたらどうなったか?
8m-7.1m=0.9m

0.9mの水位まで千曲川の泥水は逆流したが、排水路から水があふれる事はなかった。
なぜなら、排水路の高さは2.0mだったからである。
ねっ、簡単でしょ。

こうして実は3年前の台風の時もこの樋管は開きっぱなし、それはつまり「この樋管はここ10年間、閉じられたことがなかった」という事でもある。
これが実は台風19号でこの樋管が閉じられなかった「真の理由」である。

10年間、台風の時に一度も閉じていなければ、そりゃ皿川樋門同様に
「あの樋管は開けといても大丈夫だ」とおもうよねえ、市役所さんと消防団さん。

しかし台風19号ではその有尾樋管から千曲川の水が逆流している事に気が付いた。
そうして10時に樋管を閉めた。

その時の千曲川の水位は10.4m、そうであれば有尾樋管排水路での水位は3.3mで排水路から1.2m分はJAの駐車場に水があふれ出していた、という事になる。

有尾樋管の状況はそのようであったが、かたや皿川樋門のゲートは最後まで開けっ放しで閉じられる事はなかった。
この事は本当に河川事務所のオペレーションミス、あってはならない操作ミスである。

それに加えて恥ずかしい事には河川事務所も飯山市も皿川樋門のゲートが開きっぱなしであったことを、樋門操作員の報告書を作文することで隠している。
このような「事実を隠すやり方」と言うものはとうてい見逃すことは出来ないものである。  

追伸:さて今年以降「真面目に有尾樋管を閉める」というのであれば、そこには宮沢川同様に「排水ポンプを用意しておく事」が必要ですよ、足立市長さん。

追伸の追伸(2021/8/16):実は有尾樋管から千曲川に排水する事は「マスト」ではなく、いつ有尾樋管を閉めてもいい。但しその場合は上流からの水を有尾樋管に通じる排水路には流さず、全て下流の農業用水に水を流すようにしなくてはいけないが、、、。その様にできる設計になっているのだよ、あそこの樋管は。

注1今回の皿川堤防決壊による浸水状況が千曲川本堤防の決壊の浸水状況の7割程度にも達する、と言う事は「驚くべきこと」である。

単なる千曲川の一支流に過ぎない皿川からどうやったらそれほどの水量が市内に流れ出すことができたのか、大きな疑問が残ります。

注2「その34-2」で確認した所によれば、静間樋管においても有尾樋管と同様に千曲川からの逆流が確認されている。しかも飯山市の報告によれば「静間樋管は12日の23時に消防団・第一分団の分団長の手によって閉められた」と報告されている。

閉められたはずの静間樋管から何故千曲川の泥水が逆流できたのか?

それからもし本当に静間樋管を12日の23時に分団長が閉めたのなら、何故その足で有尾樋管に移動してゲートを降ろさなかったのか、大きな疑問がそこには残されている。

飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討・一覧 

 

 

 


その32-1・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-08-06 19:47:34 | 日記

1、有尾地区の浸水について

この地区の浸水被害については飯山市報(pdf)にも記載があります。

このpdfの2ページ目に今回の浸水被害があった場所が地図上に示されています。
拡大して確認してください。
そこに「有尾区 内水の氾濫よる浸水」と示された場所があります。

グーグルマップでは「JA虹のホール みゆき」と書かれたあたりでしょうか。
さて、「そんなところに川があったのか?」と言うのが最初の疑問でした。

そうして「国土地理院の地図」にも「グーグルマップ」にも対応する川などそこには無いのです。
実際はそこにあるのは「農業用の用水路」でした。(注1)

さてではこの用水路が氾濫した?
いやいや、この用水路の起点はそんなに大したところには無く、そのあたりに降った雨を集めて農業用にしている、と言うしろものでした。

それではなぜこの用水路に沿った場所が氾濫したのか?
この用水路に多量の水が流れ込んだからであります。

その流れ込んだ水の出所は、といえば「皿川の左岸越水」と「有尾樋管あけっぱなしによる千曲川からの逆流水」でした。
そうしてこの場所に氾濫の被害を与えた主原因は「皿川の左岸越水」ではなく「有尾樋管あけっぱなしによる千曲川からの逆流水」でした。

このことについては詳細は後述致しますが、従ってこの場所の氾濫は「内水の氾濫による浸水」ではなく「外水の氾濫による浸水」と記録されるのが正確であります。

さて、それではなぜ飯山市は「内水による氾濫」と公表してきたのでしょうか?
それは「有尾樋管が開きっぱなしだったという事を知られたくなかったからである」と推察いたします。

しかしながら、後日、情報公開請求によって「有尾樋管が開きっぱなしであった事」が公開されてしましました。
最初に報告をした頃は飯山市は「こんな事にはならない」「有尾樋管が開きっぱなしだった事は隠しておける」と思ったのでしょうね。

しかし、残念な事には、そのような飯山市の予想は裏切られ、情報は公開されてしまったのでした。

2、有尾地区氾濫の舞台となった場所の説明

飯山市の報告のpdfではピンポイントで場所が示されているだけでした。
しかしならが、実際は相当に広い範囲が浸水の被害を受けていました。
その正確な範囲については下記の河川事務所の報告が良いでしょう。

  令和元年10月台風第19号による千曲川・犀川出水状況

その26ページに飯山で浸水被害に遭った場所が地図上に赤色で示されています。
拡大して確認をお願いします。

その地図の左側から堤防道路に直角にぶつかっている線は国道292号線です。
その国道を挟んで上下に赤色で示された部分が「有尾地区で浸水被害を受けた場所」になります。

地図で相当する場所を示すとこうなります。 

地図では「有尾」とかかれた文字が皿川左岸部分に確認できます。

それから292号線とJR飯山線が確認でき、浸水被害は中央から下では飯山線の右側に上部では飯山線をまたいで左側にひろがっていたのが河川事務所の報告から分かります。
そうしてその浸水エリアを結ぶように用水路が青色の線で示されています。

そのエリアの航空写真はこうなります。

国道292号線と堤防道路、それからJR飯山線が確認できます。
それからもう一つのランドマークである「JA虹のホール みゆき」の場所も確認できます。

さてそれで順番に近づいていきますと、

航空写真2 

航空写真3 

航空写真4 

航空写真4で今回の氾濫のメイン舞台の全景となります。

皿川とその左岸道路、高水福祉会と書かれた建物、その建物の左側の道路を上に行ったところにあるのが飯山市の「公共下水道有尾中継ポンプ場」の建物、その建物に通じる道と左岸道路が交わる辺りが皿川から左側に越水した場所になります。

そうであれば越水した水はそのあたりを水浸しにしながらポンプ場にも押し寄せたのでした。

その時刻が13日の2時15分、しかしちょうどそのころにそのポンプ場の裏側(北側)を流れる、通常はそこから千曲川に余剰になった雨水を排水する排水路から千曲川の水が逆流し氾濫し始めていました。

この千曲川の水は排水路を右に見ていくと堤防にぶつかるのですが、堤防を越えてさらに右側をみるとそこに今回主役の「有尾樋管」があるのが分かりますが、そこのゲートが閉められておらずあけっぱなしだったので千曲川の水が樋管を通じて内側に流れ込んだというものです。

そうであれば2時15分から皿川右岸堤防が決壊したとされる4時15分までの2時間のあいだは皿川からの越水と千曲川からの逆流水がポンプ場周辺に氾濫し浸水被害を与えていた、という事になります。

しかし4時15分に右岸堤防が決壊すると皿川ダム湖の水位がさがり、左岸への越水はそこでなくなりました。

そうではありますが千曲川からの逆流はますますひどくなり、有尾樋管が閉められた時刻、それは13日の10時ですから、4時15分から10時まで、5時間45分間に渡って千曲川の泥水が樋管を通じて内側に流れ込んできていた、という事になります。

そうしてこの事が有尾地区であれほどの広い範囲にわたって、浸水被害を出した事の原因となりました。

3.ポンプ場まわりの水路について

さて、皿川左岸越水場所からポンプ場をみるとこんな感じです。 

写真中央に見える、門の奥の建物がポンプ場でそこまでの道は皿川左岸道路から下り坂になっています。そうしてその道の左側に側溝がありそれはこの写真で言うと「左側が山手になる」のですが、通常はそちらの方からの雨水をポンプ場横と裏を通して有尾樋管から千曲川に排出する、そういう構造になっています。

側溝1

側溝2 

側溝1は皿川左岸道路の上流側を見た時の写真で道の右側に側溝がみえます。

側溝2はその位置で後ろを見た時にみえる景色であって、中央電柱奥にポンプ場の屋根が一部確認できます。そしてこの側溝はそのポンプ場まで続いています。

この排水路を有尾樋管を起点に見るとこうなります。

飯山市「公共下水道有尾中継ポンプ場」浸水高は~浸水レベル▽GL+86cm~台風19号災害 

最初の写真( https://archive.fo/ZTRSG )は千曲川側から有尾樋管を見たものです。

2枚目( https://archive.fo/ZJCBX )は樋管ゲートを降ろす為に渡る橋の上部の写真です。そして有尾樋管が堤外地にある田んぼに水を供給する為の樋管である事が分かります。

3枚目( https://archive.fo/SztkJ )はその場所から後ろを見た時の絵でJAの建物とその駐車場が見えます。

4枚目( https://archive.fo/KmE2O )は樋管の側面からの写真。

5枚目( https://archive.fo/nwtAe )は堤防を渡ってJAの駐車場を見渡すもの。このときには樋管に続く排水路が駐車場の左を走っているのが確認できます。

6枚目( https://archive.fo/EWZHF )は排水路の写真、下水道中継ポンプ場の屋根が一部確認できます。

7枚目( https://archive.fo/cLmVQ )はポンプ場の裏を走っている排水路を、用水路との分岐点から堤防の方を見た時の絵です。右のフェンスと建物はポンプ場、左はJAの駐車場です。そうして一番奥に堤防が写っています。

8枚目( https://archive.fo/h69MW )は山から下ってきた水を右側の排水路ー>有尾樋管に流すものと、そのまま直進させて農業用水としてつかうものに分ける分岐点の写真で、堰を上下させるハンドルが写っています。

9枚目( https://archive.fo/JYh1j )はポンプ場横を走る山からの水をそこまで導いてくる側溝の写真。右側の建物はポンプ場です。

10枚目( https://archive.fo/WF6Y0 )はポンプ場の正面、道の左側に山手に通じる側溝が写っています。

ちなみに11枚目( https://archive.fo/jkAaM )がこのポンプ場の側面のかべに貼られた浸水深さのピークを示す表示。GL(グランドレベル)から860mmまで水が上がった事を示しています。そうしてこのテープがどこに貼られていたか、といいますと、それは9枚目の写真で確認できます。

そうして、有尾樋管のゲートの様子や、その閉・開日時、そうしてその位置についての航空写真は以下の記事で確認できます。

台風19号による千曲川増水時~飯山市街地北に位置する有尾樋管が開いたままで~千曲川が逆流してた~ 

注1:この用水路は有尾地区皿川付近を起点とし、終点はおだての排水機場となります。つまりはおだての川そのものの事になりますね。そうであれば、有尾地区に氾濫した水でこの用水路に流れ込んだ水はおだてのポンプ場から千曲川に戻された、という事になります。

飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討・一覧 

 


その29-2・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-08-06 18:44:38 | 日記

1、「地点別浸水シミュレーション検索システム」について

さて国交省が以下の様なシステムを公開しています。
「地点別浸水シミュレーション検索システム」
http://suiboumap.gsi.go.jp/

千曲川の堤防の破堤場所を指定して、あとは標高で浸水の進展具合を計算してくれる「すぐれもの」の様であります。

動かし方は・・・

『「地点別浸水シミュレーション検索システム」を見る』をクリックします。
いつもの電子地図のページに行きますので、飯山まで移動、拡大。

左にある「河川選択」をクリック
地域 は 北陸地方整備局 を選択
事務所 は 千曲川河川事務所 を選択
河川名 の選択の前にその下の 規模指定 で計画規模 も選択しておく
それから河川名の選択ーー>千曲川「計画規模」を選択

「データ表示」と言うボタンが現れるので それをクリック

堤防が壊れる点を指定しろ、の表示とともに地図上に選択可能点が現れる

皿川のすぐ上の北の点をクリック(BP713 千曲川 32.50k左岸破堤)

「アニメーション経過時間」というポップアップが開く
その時点て地図上には最終(42時間後)の浸水状況がカラーパターンで表示されている。
そしてそのカラーパターンはハザードマップの色分けと、たぶん同じはずです。

あとはポップアップの中のスタートボタンをおすと、浸水がはじまる。
経過時間は画面左上に表示される。

浸水の計算は地図のもっている標高によるものと思われるが、計算単位は一辺が10m程度の正方形のようである。
したがって、標高の値はその正方形の各点の平均値を使っているものと思われる。

当然地表に現れているでこぼこしか計算には反映されず、「雨水下水路」などの影響は考慮されない。
そして皿川も浸水対象だが、浸水はJR鉄橋までしか計算してくれない模様。

一回アニメーションを動かしていると「新水深の見たい位置を指定してください」という催促がでる。
それで市役所辺りをクリックする。
赤いマークが付く。

それで、42時間まで計算させて、そこで一時停止させる。

次に左側に「浸水域シミュレーショングラフ表示」というのが現れているので、それをクリックする。
「地点を選択してください」というのが現れるので「NTTあたり」を指定する

地図上に黒の×マークがつくのと同時に「Loading」の表示になる

しばらく待つと別ウインドウがひらいて「浸水深グラフ」が表示される。

ちなみに「想定最大規模」というのは最悪条件が重なった時であり、「計画規模」というのは「国がこうありたい」としている希望のようです。

規模指定の右側に「?」マークがありますので、それで詳細はご確認を。
計画規模は破堤した後の水の流れ出る量を制限している模様です。

あまり「ユーザーフレンドリー」ではなく扱いにくいのですが、まあそれでも「有用か」と思われます。

2、動かしてみると、、、

皿川のすぐ上の破堤点を選んだ場合、10分~20分後にはほとんど皿川右岸堤防からの皿川越水による浸水パターンと同様になる、と見る事ができそうです。

それでこのシステムによれば、皿川右岸越水から1時間程でその水はポンプ場まで到達しています。
つまり皿川越水が午前2時にはじまったとすると、午前3時には皿川の越水はポンプ場まで来ていた事になります。

ちなみにシステムの計算結果では80分で到達ですが、千曲川堤防の破堤点から皿川まで水が来るのに10~20分は必要ですので、その分の時間がマイナスとなります。
そうして、以下のケースにおいてもその分の時間は常にシステム計算結果からの時間からマイナスして考える必要があります。

さて市役所にその水が到達するのは越水2時間後、その時刻には仲町通りの栄川の橋でも越水が確認されそうです。

しかしその場合は「4時に栄川の越水を確認」ということになり、事実よりは1時間遅い事になります。
3時にその場所で栄川の越水が確認されるためには、3時時点でポンプ場の3台のポンプの排水能力をそこに集まってくる雨水の量がすでに超えていた、という事を示している様です。
つまり「雨水だけで本当に栄川は越水、氾濫していた」という事です。

あるいは「少なくとも皿川からの水はポンプ場のポンプよって千曲川に排水される事はなかった」という事、つまり、皿川からの越水の水がプラスされた事で栄川の氾濫が起きた、とも考えられます。

それから上町の堤防沿いで4時に30センチの浸水、という報告に対して、このシステムでは4時半に30センチの浸水という結果になっていそうです。
しかし、このシステムは、たとえば中央橋から飯山側に降りる道の下にあるアンダーパス、同様に25メートル道路下のアンダーパスの存在を考慮していないようです。
したがって、このシステムの計算よりも早い時間に実際の水がそこに到達していた、という事は十分にありうる事になります。

「計画規模」の選択での千曲川からの流出量の設定は、今回台風19号で実際に起きた流出量よりは30%程度多い様ですが、それでも良い近似にはなっている様で、当時、何が起こっていたのかを振り返る事はこのシステムを使う事で十分に可能であると思われます。

 

飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討・一覧