かずにぃは私の肩を掴むと、
「あの時の・・・・・・か?」
と詰め寄った。
私が目を逸らすと両手で頬を包み、
「そうなのか?」と
私の目を追った。
私は両腕を顔の前に交差すると、無言でかずにぃの質問を交わした。
「病院には行ったのか?」
「検査は?」
「ハルナ!」
かずにぃはどんどん私を逃げ場のない袋小路へと追い込んでいく。
涙が頬の輪郭をなぞりながらはらはらと流れ落ちた。
「検・・・査、してない。怖い・・・し・・・。もしそうだったらって・・・・・・」
暫くかずにぃは黙って私を抱きしめた。
私が泣き止んだ頃、彼はその重い口を開いた。
「明日さ、一緒に病院に行こう」
「い、嫌!」
「ハルナ・・・・・・。じゃ、せめて検査薬で調べよう」
私はかずにぃの腕の中できゅっと彼の手を握り締めた。
「さっき、このホテルの向かい側のビルに薬局が入ってたから、そこで買ってくるよ」
「嫌!」
私はそう叫ぶと再び吐き気を催して、トイレに駆け込んだ。
かずにぃは、いつの間にか背後にいて、私の背中を擦りながら訴えた。
「やっぱ、調べよう。もう、吐く物が残っていない位、吐いてるじゃないか。
もし、妊娠じゃなかったとしたら、そっちの方がよっぽど深刻な問題だろ?!」
私は口を拭いながら壁に寄り掛かるとそのままうな垂れた。
もう独りで抱えるには限界だった。
私の心は不安な日々の中、たった1人の人を求めて叫び続けて来た・・・・・・。
助けてって、怖いって。
だけど、その人は遠く、アメリカにいる。
トオル君さえいてくれれば・・・・・・
トオル君の側にさえいれば・・・・・・
トオル君の腕の中にさえいれば・・・・・・
全てが悪夢だったって、そう思えるのに。
夢に出てくる彼はただ優しく微笑んで、
「ヤツのとこに行けよ」と私の背後に立っているかずにぃを指差しながら去っていく。
意識が闇の中で彷徨し、交錯する。
真っ暗な沼の中に私の手も足も溶け込んで、呑み込まれそうになった頃、誰かが扉を叩く音がした。
「検査薬、買ってきた。大丈夫か?」
私はこくんと頷き部屋を出ると、独りトイレの中で僅かな希望にしがみついていた。
そして長い時間を祈るような気持ちで目を瞑っていた。
扉を荒々しく何度も叩く音と私の名前を叫ぶ声がする。
あれは、誰が叩いているの?
お腹の中にいる赤ちゃんが私を責めて叩いているの?
ほんの少し前のかずにぃとのたった一夜の出来事。
だけど、あれが夢ではなかったことを、手元から滑り落ちた検査の結果が告げていた。
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「あの時の・・・・・・か?」
と詰め寄った。
私が目を逸らすと両手で頬を包み、
「そうなのか?」と
私の目を追った。
私は両腕を顔の前に交差すると、無言でかずにぃの質問を交わした。
「病院には行ったのか?」
「検査は?」
「ハルナ!」
かずにぃはどんどん私を逃げ場のない袋小路へと追い込んでいく。
涙が頬の輪郭をなぞりながらはらはらと流れ落ちた。
「検・・・査、してない。怖い・・・し・・・。もしそうだったらって・・・・・・」
暫くかずにぃは黙って私を抱きしめた。
私が泣き止んだ頃、彼はその重い口を開いた。
「明日さ、一緒に病院に行こう」
「い、嫌!」
「ハルナ・・・・・・。じゃ、せめて検査薬で調べよう」
私はかずにぃの腕の中できゅっと彼の手を握り締めた。
「さっき、このホテルの向かい側のビルに薬局が入ってたから、そこで買ってくるよ」
「嫌!」
私はそう叫ぶと再び吐き気を催して、トイレに駆け込んだ。
かずにぃは、いつの間にか背後にいて、私の背中を擦りながら訴えた。
「やっぱ、調べよう。もう、吐く物が残っていない位、吐いてるじゃないか。
もし、妊娠じゃなかったとしたら、そっちの方がよっぽど深刻な問題だろ?!」
私は口を拭いながら壁に寄り掛かるとそのままうな垂れた。
もう独りで抱えるには限界だった。
私の心は不安な日々の中、たった1人の人を求めて叫び続けて来た・・・・・・。
助けてって、怖いって。
だけど、その人は遠く、アメリカにいる。
トオル君さえいてくれれば・・・・・・
トオル君の側にさえいれば・・・・・・
トオル君の腕の中にさえいれば・・・・・・
全てが悪夢だったって、そう思えるのに。
夢に出てくる彼はただ優しく微笑んで、
「ヤツのとこに行けよ」と私の背後に立っているかずにぃを指差しながら去っていく。
意識が闇の中で彷徨し、交錯する。
真っ暗な沼の中に私の手も足も溶け込んで、呑み込まれそうになった頃、誰かが扉を叩く音がした。
「検査薬、買ってきた。大丈夫か?」
私はこくんと頷き部屋を出ると、独りトイレの中で僅かな希望にしがみついていた。
そして長い時間を祈るような気持ちで目を瞑っていた。
扉を荒々しく何度も叩く音と私の名前を叫ぶ声がする。
あれは、誰が叩いているの?
お腹の中にいる赤ちゃんが私を責めて叩いているの?
ほんの少し前のかずにぃとのたった一夜の出来事。
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