One Little Museum

日々の制作や思いついたことなど…

Humours

2008年09月15日 | Museum
この絵は苦労しました。
4~5日前から描き始め、ようやく完成が見えました。

もともとプレゼント用に頼まれて描いたもので公開しないつもりだったのですが、あんまり苦労したので、あえて載せます。

モチーフにしたのはご存じの方もいるかもしれませんが、フリートウッド・マックの「噂」というアルバムのジャケットです。その一部を変えて描いてくれという依頼で、いわばパロディ作品です。

薄い黄色のバックにポーズをとる男女の白黒写真という構成だったので、水彩用紙に鉛筆画でかなり描き込んだ下描きをした上にアクリルで色をつけるという計画で描き始めました。

まあ途中まではだいたい思い通りにいき、完成も間近と思ったのですが、ひとつ気になることがありました。

背景にちょっとだけ黒い絵の具が飛んだ跡があったのです。
気にならないといえば気にならない程度のものだったのですが、頼まれ物の絵でもあり、修正しようと思いましたが、それが迷走の始まり。

だいたい一度塗った上に、似たような色の絵の具を塗って汚れを隠そうとしても、ムラになることはわかっていたのですが、紙の端で試し塗りをくり返し「これで大丈夫」と思うまで追い込んでやれば何とかなるだろうと思い実行しました。
これが大失敗。

ほんのかすかな絵の具の飛びを隠すために明らかなムラが出来てしまいました。
目の前真っ暗です。

自分が好きで描く絵であれば、気にせずムラを活かす背景に仕上げるところですが、これは参照作品があるパロディ作品であり、勝手に変更はできません。
描き直すかそれとも全体を塗り直すか、しばし悩んだ末、マスキングシートでマスクして背景だけを塗り直すことにしました。

苦労して全体にマスキングシートを張り、人物の部分だけ丁寧に切り抜いてマスクした後、背景をあらためて塗り直しました。
何とかムラは目立たない程度に無くなりました。

ホッとして「後は微調整のみ」と思いマスキングシートをはがそうとした時、第二の悲劇が起きました。

アクリル絵具は糊としても使えるほどの接着力があるのですが、それがマスキングシートの端から染みこんで、マスキングシートと紙を強力にくっつけてしまっていました。
とにかく慎重にはがそうとしましたが、なんと紙の表面までビリビリとはがれてきます。全部マスキングシートをはがした後には、人物の縁には転々と白いまだら模様が出来上がっていました。
ひどいところは紙がめくれ上がってしまいました。

今度こそ、描き直さなければどうにもならないのか…。
どん底です。

ここまでが昨夜のこと。
さすがに気力が萎えて、寝ました。

朝起きて気を取り直し、悪夢を引き起こしたアクリル絵具の接着力を逆に利用して補修することにしました。

不幸中の幸いは、破れた部分はほとんどがランプブラック一色の黒ベタで、これは上から重ね塗りをしてもムラにはなりません。
破れたところは絵の具を糊代わりに塗りつけて貼っていきました。

その他の部分は新たに描き起こしたり、少し描き方を変えながら仕上げていきました。

1995年のベネチア・ビエンナーレで、展示館工事のアクシデントにより修復不可能なほど作品が傷つけられながら、不眠不休の努力で開幕までに奇跡的に修復し、結果的に東洋人として初めて絵画部門で優秀賞を獲得した千住博さんのエピソードを思い、「自暴自棄にならなければ、何とかなる」と自分に言い聞かせながら作業しました。

結果、表面が破れたところは光沢が違うので角度によってはムラにも見えますが、これはこの後、マットな仕上げ用のメディウムを塗ったら何とかなるのではないかと思います。
額に入れればアクリル板を通して見るため、さらに均一な表面に見えるでしょうしね。

ということで、ここまで来ました。
最初はそれほど色数もなく、下絵さえしっかり描けば難しくはないと思った絵でしたが、苦労しつつ、いろいろ学びました。

まあ、あきらめなければ何とかなりますね。

(マーメイド水彩紙/F6)

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