沈黙の春

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[生活保護と扶養]厳格化では解決しない

2012-05-31 20:59:15 | 政治、法律など
 
2012年5月28日 09時18分
 

 人気お笑いタレントの母親が、最近まで生活保護を受けていたことが分かり、騒動になっている。

 タレントの話を要約するとこうだ。

 病気で働けなくなったことをきっかけに、母親は15年ほど前から今年4月まで生活保護を受けていた。当時は芸人になって間もないころで、年収も100万円に満たず扶養できなかった。その後、テレビに出るようになって、5、6年前に福祉事務所から援助を求められ、仕送りを始めた。しかし受給が不要になるほどではなく、仕送り分を差し引いた額が母親に支給されていた。

 批判にさらされているのは、高額な収入を得て扶養できる状態になったにもかかわらず、受給が続いたことだ。本人は「いつ仕事がなくなってもおかしくないという不安を抱えていた」と弁明するも、「5、6年前からの分は返還したい」と謝罪した。認識の甘さは否めない。

 生活保護法には、行政が手を差し伸べる前に、まず家族間で助け合いなさいと、扶養義務者の扶養が優先するという規定がある。

 自治体は生活保護が申請されると、扶養義務のある親族の年収や扶養できるかどうかを調査する。ただし回答は自己申告で、うそがあっても見破るのは難しい。

 安易な受給を防ぐためにも、扶養義務者が責任を果たすことは重要だ。困難な場合はその理由を詳細に示す資料を提出するなど制度の穴を埋める必要がある。

 資産があっても年老いた親を援助しない人は、確実に増えているという。この問題は、家族の機能が弱まり、扶養をめぐる意識が変化していることを浮き彫りにする。

 100歳を超える高齢者の所在不明が次々と報告された問題と重なる。衝撃的だったのは、年老いた親がどこで何をしているのか分からない、積極的に探そうとしない、子の姿だった。

 常に肉親を気遣ってきた日本人の暮らしに何かが起きている。

 内閣府が5年に1度、高齢者を対象に実施する意識調査によると、老後の生活費に関する問いで、「家族が面倒をみるべき」と答えたのは、2010年度は7・2%にとどまった。その数値は1980年度の18・8%から減り続けている。逆に増加しているのが「社会保障などでまかなわれるべき」という考え方だ。

 北九州市で生活保護の申請を拒まれた男性が孤独死し、問題になった時、「家族の扶養義務を重視しすぎた」ことが指摘された。男性は妻と離婚しており、子どもとの関係も複雑だったという。

 社会保障制度を補完する機能を担ってきた家族の変化を考えると、厳格化だけでは解決しない問題が見えてくる。

 不正受給といった「濫給」に目を奪われるあまり、受けるべき人が受けられない「漏給」が見落とされてはいないか。家族によるセーフティーネットが働かなくても、本当に困っている人たちに保護が行き渡るよう、制度を再検証すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-05-28_34296/



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