産経新聞 6月5日(火)7時55分配信
法相の指揮権は司法への政治的介入につながるため「伝家の宝刀」とも呼ばれ、過去の発動例は58年前の1件のみだ。歴代法相が慎重な姿勢を示してきた中での「発動」への言及に反発の声も上がっている。
指揮権は検察庁法14条に規定されている権限で、法相は検事総長に対し、個別捜査や起訴、不起訴の判断について具体的な指示を出すことができる。
ただ、実際に発動されたのは昭和29年4月、船主・造船業界が贈賄工作を繰り広げた造船疑獄のみ。
検察が自由党の佐藤栄作幹事長(当時)の逮捕を求めたのに対し、犬養健法相(同)は「逮捕請求を延期せよ」と指示。捜査は中止となったが、世論の反発を招いて法相も辞任した。「個別事件への発動は抑制的であるべきだというのが共通認識となってきた」(法務省幹部)わけだ。
だが、民主党側は折に触れ指揮権をちらつかせている。西松建設の違法献金事件を受けて、民主党の第三者委員会が平成21年6月にまとめた報告書は「指揮権を発動する選択肢もあり得た」と指摘。千葉景子元法相も「指揮権という権限があるから、(発動も)あり得る」と発言していた。
田代政弘検事と当時の特捜部幹部について、法務・検察当局は刑事処分と行政処分を5月中に行うことで調整を進めてきたが、処分人数や上司の関与の認定に手間取っていることなどから、予定がずれ込んでいる。法務省幹部は「捜査は現在進行中なだけに政治的圧力との批判も仕方ないだろう」と話している。