沈黙の春

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正直者のエコノミスト

2012-05-20 23:36:11 | 政治、法律など

二十年ほど前に、著名なエコノミストから聞いたジョークがある。

 「景気の先行きをどう見るか」と新聞記者にコメントを求められたエコノミストは、恭しく答えた。

 「ご希望通り、いかようにもお答えしますよ。良くなる方がいいですか、それとも悪化にします?」-。

 経済は生き物なので予想がはずれることは多い。どちらに転んでも理由をつければ取り繕える…。ある意味“いいかげんな商売だ”というオチである。

 昔のことを思い出したのは、中谷巌氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長)の近著『資本主義以後の世界』を読んだためだ。中谷氏といえば、小渕内閣で経済戦略会議の議長代理を務め、米国流の弱肉強食型経済政策を進言した人だ。しかし、リーマン・ショック後になって「あの政策は誤りだった」と懺悔(ざんげ)した正直な方である。

 経済記者になりたてのころ、先輩の勧めで若き日の中谷氏が記した『入門マクロ経済学』も読んだ。本人に懺悔の真意について取材したこともあり、何かと“縁”があった。

 そこで今回の近著である。いわく資本主義は行き詰まり、いずれ「文明の転換」が必要なことは間違いないと説く。問題は“いつなのか”だが「それは誰にもわからない」。これまた正直な結論であった。それでも、ちまたで横行する無責任な公約撤回よりはよほど見識がある。(久原 穏)

 

 



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