おはなし屋パモンの日記

おはなしを書くのが大好きなパモンの日記です。

「庭物語」1

2016年02月13日 | 小説

こんにちは。

パモンです。

 

私が先週から無料メルマガで始めた小説「庭物語」を

順次更新していきたいと思います。

 

興味がありましたら、

無料メルマガの方もぜひご登録ください。

 

最新版をお届けいたしますよ~。

 

http://www.mag2.com/m/0001648036.html

 

 

 

☆それでは今日もよい1日を。

 

 

(^O^)/

 

 

 

 

■『庭物語』1

 


                       BY パモン

遠くで雷が鳴っていた。


寝ているベッドから手を伸ばし、
窓を開けると、
とたんに真昼の熱風が部屋へ入りこんできた。


暑い!


蝉の声も大音量で聞こえてきて、
普段は冷房で閉め切っているこの部屋も、
こうして外の空気を入れると、
今が初夏だったことを思い出す。

私はもう何日も部屋へ籠り切りで、
日がな一日ベッドの上でゴロゴロしていたので、
そんなふうに季節が変わっていることさえ気がつかなかった。

けれど、それを咎める者は誰もいない。

自由と言えばそうだが、結局は私のことなど、
誰も気に掛けはしないのだ。


そう私はまるで無人島のように、この1Kのアパートで、
ひとりでひっそりと生きている。


世界が明日核戦争で無くなろうが、
おそらく私だけは変わらないだろう。

誰も私の事など心配しない。

そもそも、私がここに存在していることすら、
誰も知らないだろう。


それが全てで、答えなのだった。

 


そもそも、なぜこうなってしまったのかは、はっきりしなかった。

けれど、あれは仕事場だったのか……?

最後の場面は私の職場が見えるのだった。

 

私はデザイン学校を卒業すると、
都内のアパレル会社で働き始めていた。

仕事は先輩デザイナーたちの補助だったが、
次第に自分でもデザインを任されるようになった。

ところが突然の出向命令。

出向先は、系列のブランドショップで販売員だった。


朝早くから店へ立ち、夜遅くまで働く。

店長という立場上、バイトの管理や在庫のチェック、
客への対応……。仕事は山積みだった。

慣れない仕事で、次第に私はへとへとになっていった。


ご飯が食べられなくなり、夜は眠れない。

それでも顔色の悪さを化粧で隠し、店へ立つ。

笑顔でお客様へ対応する。

食事もとっていないのに、
下痢が毎日のように続いていた。

「店長、痩せましたね」なんて、
店の女の子にも心配されるようになっていった。


本当は、あの頃の私は、誰かに助けを求めていたのかもしれない。

今になってみると、笑っている私の顔の下には、涙でぐしゃぐしゃになった
幼い子どもの姿が見えるのだった。

 

つづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする