おはなし屋パモンの日記

おはなしを書くのが大好きなパモンの日記です。

「庭物語」4

2016年03月07日 | 小説

パモンの小説「庭物語」4です。

最新版はこちらの無料メルマガから

読むことができますよ~。

 

どうぞお楽しみください。

http://www.mag2.com/m/0001648036.html

 

☆それでは今日もよい1日を。

 

 

 

 

 

 

■『庭物語』4

 


                       BY パモン


私がそうやって、ひとりベッドの上で、
子ども時代に戻ったように遊んでいると、

突然、


ピンポーン!


と玄関の呼び鈴が鳴った。


私はぎくり! とした。

 

まさか、下の階の住人がうるさいと
怒鳴り込みにきたのではなかろうか……?


普段はおとなしく暮らしている私が、
今日に限ってベッドの上で飛び跳ねているのだもの。

そりゃあ迷惑だったのかも……。


私は怯えて、枕に顔をうずめたまま、
外に居る何者かが立ち去るまで
このままじっとしていようと思った。

 

けれど、


ピンポーン!


と再びベルの音が鳴る。

 


それは有無を言わさぬ大きな音で、
私はあんたが隠れている事をちゃあんと知っているのよ、

と言われたようなか気がした。

 

「……」

 

私は仕方なくしぶしぶベッドから降りると、玄関に向かった。


途中で全身が映る姿見が立てかけてあり、
自分の姿をちらと見ると、髪はぼさぼさ、
何日も着ている部屋着はだらんと垂れ下がっている。

 

本当なら、こんな姿を誰にも見せたくはないのだが……。

私がまだ迷っていると、まるでそんな気持ちを察したかのように、
三度目のベルが鳴った。


「……」

 

もう、逃げられなかった。


私は覚悟を決めて、玄関のドアを開けた。


「はあい」


すると、そこに立っていたのは、赤いお地蔵様で……!?

私は思わず目を見開いた。

 

けれど、よくよく見て見ると、お地蔵様と見えた物は、
このアパートの大家さんだった。


大家のおばさんは六十過ぎで、小柄な小太り。


それが大雨のせいで赤い合羽を被り、
頭に同じく赤いビニールの帽子を被って現れたので、

私には一瞬、それが田舎の畔道に置かれている、
赤いよだれ掛けを着けたお地蔵様に見えたのだった。

 


濡れた傘を持ち、所在なさそうに立っているおばさんは、
私の顔を見ると、ほっとしたように言った。


「あら、お留守だと思ったけれど、いらっしゃったのね」


それは柔和な、鈴を鳴らしたような優しい声で、
思わず引き込まれた私は、


「あ、どうも」


と頭を下げるのだった。

 

ふと見あげると、大家さんの後ろに見える外の景色は、

すでに嵐になっていた。

 

つづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする