水に浮かび物思う

カリフォルニアの海でカヤックに出会う。キャンプやハイキングの話も。

蝶ヶ岳から北アルプスを望む その2

2008年09月25日 | キャンプ

夜中に凄まじい風が吹き荒れた。ソロテントの中で寝ていたのだが、なにか足が痛いと思って目が覚めたら、なんとそれは強風でたわんだテントポールがぼくの足をぎゅぅと押し付けていたのだった。一気に目が覚めた。ヤバイ、これではポールが折れてしまう。補強しなければ、と思った。補強しなければと思ったのだけれど、やがてそれも無駄だと悟った。自分がテントの外に出たら、軽くなったテントはそのまま風で安曇野まで飛ばされてしまうに違いない。

馬鹿なぼくは以前強風波浪注意報が出ているさなか、海岸近くでキャンプしたことがあるのだけれど、そのときの風なんてそよ風みたいなものだと思えるほどに、今回の風は強かった。あーあ、きっとこの風でポールが折れるんだろうなあ、ポールの修理してもらえるかなあ(ぼくのテントはREI)、カタログ落ちしてるしなあ、などと妙に現実的なことを考えた。

長い夜もいつしか明け、朝がやってきた。風も落ち着いた。とにかく朝だ。あまり寝てないよーな気もするのだけれど、山の朝というのは素晴らしいものだ。テントのジッパーを空けると澄んだ空気が自然と体の中に入ってきた。ただそれだけでぼくは幸せになる。





テントの人も山小屋の泊り客も、みんな外へ出てきて朝日を浴びた。光を得た雲海が幻想的である。南の方角には富士山も見えた。後ろを振り向けば、北アルプスの高峰が日の光に赤く染まっていた。残雪や山のひだまではっきりと見える。ぼくはこの造形の美しさに見入った。するとその景色に向かってKさんが教えてくれた。槍ヶ岳から南の稜線を行くと南岳にでる。そこからナイフエッジのような鋭い大キレットがあり、そこは歩くだけで一日を要する。そして北穂高岳、槍ヶ岳よりも10m高い奥穂高岳、その手前の大きく削られた涸沢カール、前穂高岳と続く。3000m級のそれらの山は、将棋の王金銀飛角を横一列に並べたような存在感があり、圧巻であった。



インスタントラーメンとコーヒーを飲んで、ぼくたちは下山を開始した。帰りは長塀尾根を通る。行きよりはいくぶん距離がありなだらかなのだけれど、やっぱり傾斜の高い下りはキツイ。みんなで励ましあって降りて、梓川に出た時には嬉しかった。ぼくたちはそのままてくてくと歩き、明神池のあたりにあるお店に入った。ひゃー疲れた!





ここはいけすにイワナが放ってあり、新鮮なイワナを調理してくれるのだ。ぼくらは塩焼き、燻製、骨酒をオーダーし、少し早い昼食とした。骨酒が疲れた体に沁みる。どれも東京では味わえない絶品だった。下山後のビールもまた格別である。





こうして上高地まで戻ってきて、今回の山登りは無事終了したのであった。帰りには乗鞍のほうまで少し足を伸ばして硫黄の効いた温泉に浸かり、松本でおいしいおそばを食べた。いやあ、本当に楽しかった。五感をフルに使ったこういう遊びがいいのだ。登山はいい!日本の山は素晴らしい!次は八ヶ岳あたりにでも行きたいな!




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