夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

明末(清朝初期)呉須赤絵 花鳥紋菓子鉢 その4

2019-01-11 00:01:00 | 陶磁器
郷里では秋田犬の散歩に出会うことがままあります。本日は駅前で「タロウ君」に出会いました。まるで熊のような大きさですが、秋田犬の毛の長いタイプの種類だとか・・・。



さて本日の作品は、茶人が好んで用いた明末呉須赤絵の作品ですが、「呉須赤絵」と称される作品は時代による差、そして日本や安南などで倣作された作品群などを区別してきちんと分類しなくてはいけないように思います。

*日本で作られた作品は雑味が少なく、きれいなものが多いという特徴があり、また安南の作品は貫入の多い釉薬に特徴などで一見してわかるものが多いようです。

*明末の作品は虫喰が多く雑味に溢れていますが、清朝に入ると虫喰が少なく綺麗な作品が多く雑味が少なくなります。きれいなほうが却って評価が下がるものと当方では判断しています。

明末(清朝初期)呉須赤絵 花鳥紋菓子鉢 その4
窯傷補修跡 合箱
口径238*高台径86*高さ92



呉須赤絵の作品の代表格は大盤。要は大きな皿ですね。次が香合などの小物、続いて本日紹介する鉢類ですが、意外に少ないのが碗類のようです。

*輸入された「呉須赤絵」の作品は日本からの注文品が主流ですので、明末赤絵は茶碗などには向いていないと判断されたか、煎茶が主流だったためかと当方では推察しています。



呉須赤絵の約束事は虫喰に砂高台ですが、前述のように明末を過ぎてからの清朝初期の作品には虫喰がなかったり、砂高台は鉢類などには盤ほどたくさん砂が付かない作品も見受けられます。



日本で作られた呉須赤絵の作品はその点を忠実に写している作品は意外に少なく、綺麗な作品が多いようです。この理由は大量生産のよる雑さより徐々に綺麗さの評価が高くなったのかもしれません。奥田潁川などはその点、明末の作品の基本的なところを忠実に再現しています。土なども中国から輸入したものを使用していたそうです。



当方では本作品は清朝初期の作品と判断しています。



根拠は明末ほど雑味の魅力はないという点です。ただ絵付けは洒脱な点です。この作品の見どころは絵付け、これは鳩・・・・???



明末呉須赤絵の鉢類は明時代では大きさは高さが10センチを超えますが、この作品は高さが10センチを超えません。碗類が出回る清朝初期の頃の作品ではないかと推測しています。

日本の永楽のような京焼、犬山焼の優れた模倣作品でもここまで洒脱ではありません。



轆轤の跡が残っているのも清朝初期の特徴か? 日本で作られた赤絵の作品も轆轤の跡があるものが多いので、本作品は日本の作かとも思ましたが、中国で作られたものに相違ないようです。



釉薬の剥がれが出そうで出ない、高台廻りがきれいになっている点からも明末ではないと判断されます。なお呉須赤絵は時代が下がるほど評価が下がります。



箱にはこの点の判断をすべて避けて「呉須赤絵鉢」とあります。ただ「唐物」と表記していますが、当方の推察と同等の判断をしたのでしょう。



呉須赤絵の作品は見込みも赤絵の作品が多いですが、稀に青釉で描かれた絵付けの作品もあります。この作品のような青絵の作品のほうが少なく、この点がこの作品を入手した大きな理由です。



繰り返しのなりますが、鉢や碗類に限らず呉須赤絵の魅力は絵付けです。



時代云々を優先して記事にしましたが、時代もさることながら絵付けに魅力があるかないかが呉須赤絵の最大の評価のポイントだと思います。



今まで本ブログに投稿された鉢、碗類の絵付けを幾つか掲載してみました。



当時の粋人は時代時代でいろんなものに美を見出して、日本のものとしている点は感心します。



なお前述のように呉須赤絵の作品はすべて日本からの注文品であり、現在の中国には呉須赤絵の作品は存在していません。

*高台内の文字は日本からの注文先なのでしょう。雑味を珍重したことから多少の窯割れのある作品も出荷しています。



菓子鉢から始まり、香合、碗、そして水指・・。



茶人はその時代時代で美とは何ぞやを追求した粋な人々のことであり、決して茶事そのものに優れた人のことではありません。



呉須赤絵の作品は赤絵の出来の面白いもの、虫喰いや砂付き高台のあるものがが一番評価が高く、時代の下がったきれいなものや青色の作品は後塵を拝しているようです。



青色の絵付けの面白い羅漢などを描いた作品も好きですが、器の出来がやはり評価に影響しているのかもしれません。

*一言で明末呉須赤絵といってもかなりの種類があり、今少し当方も学習しないいと明確な判断基準が当方の知識ではまとまっていません。



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