origenesの日記

読書感想文を淡々と書いていきます。

松平アナ

2008-04-26 13:49:53 | Weblog
「その時歴史が動いた」で『古事記』の話が放送されていた。最後の方だけ見たのでメモ。
『古事記』とは稗田阿礼が暗誦していた物語を太安万侶が書き言葉に移すことによって生じたものである。暗誦していた稗田ばかりに目がいきがちだが、漢文を和語の順番に置き換えてわかりやすく書き下した太安万侶も重要な存在である。『古事記』は長らく歴史から忘れ去られていたが、江戸時代に再評価され、明治時代には国民への教育において欠くことのできないものとなっていったという。最後に神社に行く日本人の姿が映し出されて、『古事記』は今でも日本人の心性と結びついている、といって番組が終わっていく。
何だかNHKにしては(公共放送だからこそ?)、ちょっとナショナリスティックな感じがしたのだが、まあ勉強になった。
『古事記』は8世紀に元明天皇の命によって編まれた書であり、天皇を中心とした国をつくっていこうという意志が物語には込められていた。この点で政府に属さない詩人がつくった『イリアス』や『オデュッセイア』とは性質を異にする。一方でウェルギリウスの『アエネイス』はオクタヴィアヌスの政治と結びついており、『古事記』と同程度にナショナリストに利用されやすい文学であると考えることはできる。最もローマ帝国は、早くに滅んでしまったが。