遺体屋の仕事

日常生活では見ることも聞くこともない「遺体屋の仕事」とは・・・

女らしい話

2007-12-15 08:17:53 | Weblog
「女性が強くなった」と言われてもう長い年月がたちます。
もはや強い人だらけの世の中。
だから今の日本があるのでしょう。
そんな私もおそらく“強い女”の一人で
ストレスをため、腰痛を抱えつつも社会人としてはびこって
タタミ一畳ほどある湯灌の浴槽も150cm少々の背丈でも一人で担ぐ事が出来ます。

そんな毎日の中で出会うご葬家を見て、己を振り返り反省する事があります。

ご葬家でのメイク納棺
外観も室内もきちんお手入れが出来ていてとても居心地の良い整然とした雰囲気。
お出迎え下さったのは息子さんお二人で少し几帳面で堅そうなイメージ
「喪主様はいらっしゃいますか?」
現れたのは息子さんたちとはイメージの真逆なかわいらしいおばあちゃん。
「今日はよろしくおねがいいたします」と頭をタタミに突きそうなくらいお辞儀されてしまい
『そんなに下げないで下さい~』と思いながらこちらもタタミすれすれにご挨拶。
末期のお水に故人様の好きだったお飲み物でとお話しすると
「じゃあ お酒!」とパッと表情が明るくなる喪主様
今日の故人様の納棺式の為に来た私たちを信頼しきっている様子の喪主様
反対に大変冷静にこちらの話を見据えるように対応してくれる息子さんたち
実にバランスの取れた家族関係です。

故人様は突然の病か?病み疲れの様子のない綺麗なおじいちゃんです。
ご処置とお着せ替えをし、ご葬家に集まっていただくようお声賭けをします。
でも何か大切なお話をしているようで「少し待って下さいとのこと」
「では、恐縮ですがお手洗いを…」とお借りしました。
こんなところで人柄を語るのは何ですが
とっても可愛らしいお手洗い、もちろん清潔
壁紙の花柄とトイレ内にあるタオルが似たような花柄でそろえてあって
「とってもきちんとしてて、女性らしい方(喪主様)なんだなぁ」と感じ入りました。

少ししてご葬家がお揃いになり納棺式スタート
喪主様はお着せ替えの整った故人様を見て「ああ、よかった」とホッとされてから
とても悲しいご表情をされていました。
そしてまだ幼さの残る中学生くらいの孫娘さんが一人いました。
今にも泣き出しそうに真っ赤な顔をして、深くショックを受けているのがよくわかるご様子でした。
「○○ちゃん、つらかったらあっちの部屋にいってていいよ」
孫娘さんに喪主様は言ったのですが、声を出さずにただ首を振って「行かない」と言います。
いよいよ納棺になった時、喪主様が「お父さん・・・」と言って悲しみでヒザから崩れてしまいました。
「母さんあっちに行ってていいよ」とそれからはもう喪主様は出てこないまま
息子さんたちのみお立会いで納棺式は終了してしまいました。

私は「女らしいというのは今日の喪主様みたいな人のことをいうのかもしれない」と思いました。
家庭内をきちんと整えるのは普通なのかもしれませんが
ご主人である故人様を見て、ヨヨと身を持ち崩してしまうような儚げで
最後まで愛情や信頼・献身を捧げられるような女性は公私共お会いする事がありません。
強さはないけど、強い女性が持つ事のない守ってあげたくなるような天然の魅力。
そのような女性にはバランスよく強い男性とめぐり合うのかもしれないですね。
強い女が逆立ちしても敵わないのは、こんな事なのかもしれません。
そればかりがいい世の中ではないのでしょうが、こんな人が少ない世の中だけに憧れます。

帰り道に同僚と「孫娘の子もずっと泣いてたね」という話になりました。
どちらかというと地味でいまどきの子の要素はない孫娘さんでしたが
本当に故人様の死を悼んでいる様子で「おじいちゃんの事大好きだったんだね」と話しながら帰りました。
私は『あの子は喪主様みたいな女性らしい人に成長するのかもなぁ・・・』と漠然と考えながら
くわえタバコでハイエースを転がしながら次の仕事に走っていきました。







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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2007-12-15 10:20:37
昔の人には、昔の人なりのバランスのよさってあったのかもしれないですね。
いまの男女関係は、数十年後にみるとどうみえるんでしょうかしら。やっぱりまだまだ女性は弱かった?それとも「あの頃の女は妙に無理してたのね~」ってなるんでしょうか。
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